31話 姫様を救えじゃんね 4

「おら、出てこいよ」


トイレを取り囲んでいる一人の男が井田に言う。


「……(なんでこんな面倒臭ぇことに巻き込まれてんだよ。結局自慰も出来なかったしふざけんじゃねぇっ!……はぁ……どうやって逃げっかな…)」


「出てこいって言ってんだてめぇっ!それともドアぶちやぶってやろうかコラァッ!」


井田が黙って考えているともう一人の男がしびれを切らし怒鳴る。


「わかった今出る。しかしここから出たいのは山々なんだがこちら側のドアノブが壊れてしまっていてさっきから出れないんだ。すまないがそちらから引っ張ってくれないだろうか」


「……あぁ、いいぜ。ウヘヘヘ」


井田はそう言って、男がドアに近付いたタイミングでトイレのドアを思いきり開き男にぶつけた。


「ンゴッ!」


しかし怯んだ男の横を通りすぎようとしたところでもう一人に前方の道を塞がれてしまう。


「おっと逃げようたってそうはいかねぇ。あんたずいぶんとなめたマネしてくれんじゃねぇか」


ドアをぶつけた男も井田の後ろに立ち、井田は囲まれてしまった。


「クソッ!だいたいドアが外開きなら押せば開くじゃねぇか!適当なこと言いやがって、てめぇぶっ殺してやるっ!」


そしていきなり激昂した男が殴りかかるが拳が井田に当たることはない、むしろ自動発動する反射魔法により殴った男のほうにダメージがいってしまった。


「あいたっ!な、なんだコイツ!?お、おいコイツどうなってんだ!?」


殴った男が慌ててもう一人に言うが、もう一人の男も驚いたようだ。


「まさかあんた魔法使えんのか!?冗談じゃねぇ!おいベン逃げるぞっ!」


男達は井田の謎の力にすっかり戦意を喪失してトイレから逃げ出していった。


(一昨日来やがれカスどもっ!)


井田はそれを見送った後、後ろを振り向く。

トイレの床には未だ服がはだけたままの少女が座ってこちらを見ていた。


「……えっと、じゃあ俺はこれで(お取り込み中邪魔しちゃってごめんね!でもどうせだったらおかずになってくれればよかったのにね)」


そんなクズなことを思いながら井田はトイレを後にしようとするが。


「……待ちなさいよ」


案の定少女に止められてしまった。


「悪いが急いでいるんだ」


「……お願い一人にしないで……」


少女はそう言って泣きはじめてしまう。

それを見て井田は頭をポリポリ掻きながらこれからどうしようかと考えるのだった。

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