28話 姫様を救えじゃんね 1

「…はぁ…はぁ…ここまでくれば大丈夫ね…」


さきほど井田の前を横切った少女は兵士達をまいたのを確認すると会場の物陰で息を整えた。


彼女の名はネム・ビクチー・ トスバ。


この国の王である第081代トスバ王の娘であり、正真正銘のお姫様である。


「せっかく外に出れたんだから自由に歩きまわるくらい良いじゃない、お父様ったら頭が固いんだから。…さて、兵士達もまいたことだしさっそく出店でも回ろうかしら」


このように彼女はかなりのお転婆娘であったため城の兵士達は振り回されてばかりいた。

そしてネムがそう言って物陰から出ようとしたとき誰かにぶつかる。

ぶつかったのは二人組の男達だった。


「おっと、あぶねぇじゃねぇか嬢ちゃん」


ぶつかった二人組の男のうちの一人が言ってくる。


「それはこっちのセリフよ、あなた達こそ気を付けなさい」


「なんだとっ!?」


それを聞いたもう一人の男が怒鳴るが、それをさっきの男が止めて優しい声でこう続けた。


「まぁまぁ…そうだ、お嬢ちゃん今一人?もし良かったら俺達と楽しいところへ行かないかい?」


「…なによ急に、馬鹿なの?…楽しいところ…そうね、ついていってあげてもいいわ。ただし全然楽しくなかったら承知しないわよ」


男達はそんなネムの言葉に笑顔になる。


「へへっ、きっと気に入るぜ(この生意気なクソガキを今から犯せるのかと思うと笑いが止まらねぇぜ!)」


ネムはお転婆娘でありかなりの世間知らずでもあった。

こうして彼女は気味の悪い笑みを浮かべる男達とともに会場内を歩いていったのであった。

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