21話 異世界にガラケーを持ち込んだけどパカパカしてうるさいじゃんね 4

井田は今、街の出店が多くある通りを歩いている。


「まぁ、イダよ。攻撃魔法を覚えられなかったことは残念だが、反射魔法も捨てたものではないぞ?敵の攻撃を受けなければならないという欠点はあるが、相手の攻撃をそのまま跳ね返せるのだからな」


シャニは前を歩く井田を励ますが井田からはなんの反応もない。


(なんでっ!なんでじゃんよっ!鏡魔法を手にいれて俺は異世界盗撮モノとして自慰ライフを満喫するつもりだったのに…!それなのにっ…!)


井田の目尻からは自然と白濁液がこぼれていた。


「…イダ、泣いてるの?」


ロザリアがそれを見て尋ねる。

それを聞いたシャニは驚き、そして余計な事を言ってしまったと後悔した。


「イダ…お前そこまでして強く…すまない、いらぬ励ましだったな…」


誤解である。

一同が重苦しい雰囲気になり歩いていると、一人の男と二人の少女が井田達の前に立ち塞がる。

それはもう一人の転生者、餅槻木政次であった。


「やれやれ、美しい女共を連れているじゃないか。お前みたいなゴミクズにはもったいないほどだ。やれやれ、仕方ないから2人とも俺が面倒をみてやろう。文句はないだろ? お前達もこんなゴミクズより俺のほうにこい。歓迎するぞ?俺は餅槻木政次だ」


政次は井田をいきなり罵倒したあと、猫撫で声でシャニ達に手を差し出した。

彼はこうやって異世界にきたあと、現実世界での屈辱を晴らすように異世界の女達を食い散らかしていたのである。

井田はそれを聞いて、「目の前でエッチを見せてくれるならどうぞ」と言おうとした。

クズである。

だが、それを言う前にまずロザリアが口を開いた。


「…興味ない」


「…なに?」


政次は何を言われたのかわからないという顔でロザリアを見つめる。


「イダ、もう行こう。私は気分が悪くなった。まさか自分がゴミなのも自覚していないゴミが話しかけてくるとはな、今日はおかしな日だ」


「っなんだと…!」


シャニの言葉に、政次は口を金魚のように動かし驚いた後、大声で怒鳴った。


「お、俺は最強なんだぞっ!そんな男など足元に及ばないほどになっ!」


政次は完全に取り乱しており自分が周囲に見られていることに気づいていないようだ。


「確かモチツキと言ったな。お前こんな人ごみの中でわめき散らして恥ずかしくないのか。少し落ち着いたらどうだ」


シャニは落ち着くよう言ったが彼は聞く耳を持たない。


「うるさい!俺に命令するなっ!俺は最強なんだっ!ガラケーだってこの世界に持ち込んだっ!そして現実世界と違いこの世界なら俺はチートで全を手にいれられる!だからお前達は俺の物にならなければいけないんだっ!」


彼は駄々をこねる子供のように怒鳴った。


「大体、先程から最強最強と言っているが、お前よりこの男のほうがよっぽど強い人間だ。確かにこの男は物事に対するやる気こそないが、もっと強くなりたいと思って悔し涙を流せる、そんな男なんだ。自分は強いと慢心してしまって今の状態に甘んじているお前なんかより、人間としての魅力も強さも断然上だ」


シャニは政次に井田がいかに素晴らしい人間なのかを伝えたが、その評価は間違いである。


「っ!俺よりその男のほうが強いだとっ!?ふざけるなっ!」


そう言ったかと思うと政次は手に魔方陣を発動した。


「くはははっ!もうここは現実世界じゃないっ!イジメられることはなく逆に俺が人々をチートで支配できる異世界なんだっ!お前ごときが俺の邪魔をするなっ!」


魔方陣はどんどん大きくなっていき、それは餅槻木の体を覆うほどだ。


「恐いかっ!?だが謝罪したところでもう遅いっ!さっき手にいれた俺の魔法は消滅魔法だ!どんなものだろうがこの世界から消しさることが出来る!最強は俺一人でいい!消えろゴミクズがああああああっ!!」


政次は井田に全力の消滅魔法をぶつけ









「なっ!?魔法が俺に跳ね返ってっ…!んぎいいいいいいあああっ!!!」


そして政次は消えた。

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