13話 主人公ってこういうことじゃんね
リシオ・ルナ・ア・ツケブンデこと、リシオは冒険者である。
今日も早起きをし、しっかりと朝食を食べてから家を出る。
そして出る前に鏡で自分の身なりを整えるのも忘れない。
「よし!」
街はまだ人通りが少なく、早朝の空気が気持ちいい。
彼は10分程歩いてギルドに到着した。
「リシオおはよ!」
「リシオ様おはようですぅ~」
「リシオ殿おはようござりまする」
すると三人の少女がリシオのもとへやってくる。
「アンネ、マリー、スズ。三人ともおはよう」
彼女達はギルドの冒険者であり、またリシオと同じパーティーメンバーでもある。
【テトラテスタメント】
それがリシオ達のパーティー名である。
彼らはギルドの中でも新人であり、そして新人の中でも期待の星と言われていた。
「リシオ今日の依頼は何にする?」
赤髪の勝ち気そうな少女アンネが尋ねる。
「コボルト討伐なんてどうでしょ~」
紫の長い髪を伸ばしおっとりした話し方で提案するマリー。
「いや、ここはゴブリン討伐でござるよ」
最後に黒髪で忍者のような格好をして意見するのはスズだ。
「うーん、そうだなぁ」
リシオは顎に手をあて考える。
「僕達もだいぶ強くなってきたしワーウルフなんてどうだろう?」
「異議なし!」
「私もですぅ~」
「拙者もでござる」
そんな彼の意見に彼女達はすぐに同意する。リシオはすでにハーレムを築いているようだ。流石どこぞのクズとは大違いである。
そしてリシオが頷き依頼が書いてある張り紙を取ろうとすると誰かの手と重なってしまう。
「あっすいません」
リシオは手が重なった相手を見る。
「いや、こちらこそすまないな。急いでいたもので気付かなかった」
「っ!あなたは戦乙女のリーダーシャニさん!」
相手を見てリシオは驚く。
「ん?なんだ私を知っているのか?」
「知っているもなにも戦乙女はこのギルドで最強に近いと言われているパーティーじゃないですか!あなた達は僕達新人の憧れなんです!」
リシオはよほどシャニに会えたことが嬉しいのか興奮して語る。
「お、おう。そうなのか。私達が君達新人の目標になれているのならそれは嬉しい事だ」
(うわー!戦乙女の、しかもリーダーのシャニさんに会えるなんて!髪もブロンドで背も高いし、その…胸も大きくて近くで見るとやっぱり綺麗だなぁ)
リシオはシャニと会えて浮かれていた。
「しかし、この依頼はどうする?私としても出来ればこの依頼を受けたいのだが」
「シャニさんほどの冒険者がこんな低い依頼を受けるなんてどうかなされたんですか?」
リシオはつい疑問に思ったことを尋ねる。
「あぁ、それはだな…ん?おいっ!イダ!お前また遅刻をしおって!」
シャニはギルドの入り口に向け怒鳴り付ける。
(…イダ?)
リシオも同じく入り口を見るとそこには一人の男と小女が立っていた。
男の髪はボサボサで目は死んでおり、着ている見たことのない全体が黒くて白いラインが入った服はくたびれている。
後ろに立つ少女はそれとは対照的に全身が白いが、男と同じように死んだ赤い目をしていた。
(あの二人は…思い出した、最近ギルドに入ったっていう僕達と同じ新人の人達だ)
「あぁ、紹介するよ。やつの名前はイダ。そしてもう一人がロザリアだ。おいイダ!そっちに立ってないでこっちにこい!」
シャニに呼ばれてイダという男はゆっくりとこちらに歩いてくる。それも面倒臭そうにあくびをしながらだ。
(なんて失礼な人なんだ。シャニさんが直々に呼んでいるというのに)
「イダ。こちら新人の…すまない名前はなんだったかな?」
シャニが申し訳なさそうに尋ねる。
「あっ!リシオです!そして後ろの彼女達が左からアンネ、マリー、スズです」
「「「よろしくお願いします(です~)(でござる)」」」
「だそうだ。イダ、お前もあいさつをしろ。これは礼儀だぞ」
シャニが井田にあいさつするよう促す。
「…よろしく」
「あ、はい」
そしてリシオが井田の目を見た時、リシオは少し違和感を覚えた。
井田と呼ばれる男の目には自分のことなど映っていないような気がしたのだ。
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