10話 初めてのソープじゃんね 2

「7番の札でお待ちの方ー」


とうとう自分の持っている札の番号が呼ばれる。

井田は今とてつもない緊張状態におちいっていた。


(ソープってこんなに緊張するもんだったのかよ…)


なぜならば井田はこれが人生で初のソープであった。


(やべぇ…やべぇよ…緊張で脇汗がとまんねぇよ…)


歯はカチカチと鳴り、顔からは冷や汗を流し、体は引き付けを起こしたが如く小刻みに揺れている。

もう誰がどう見ても危険な男である。


「7番のお客様ー?」


再度店員が番号を呼ぶ。


「あ、はい(何ビビッてんだ俺っ!ソープなんて体を洗ってもらうだけじゃんよ!)」


井田は返事をして立ち上がる。

そして店のロビーから奥の部屋へと通された井田は部屋で女が来るのを待った。


「失礼致します」


そう扉の向こうから声がして、部屋の扉が開く。


「……(こ…これはっ!!)」


扉が開き現れたのは、キュッと引き締まったボディにむっちりとした太もも、そして何よりも目を引くのは…。


「おっぱい…」


そう、巨大なおっぱいであった。

スイカが二つ胸についているのではないかというほど巨大なおっぱいを持つ女は井田の前までやってくると地面に三つ指をつき頭を下げる。


「本日はよろしくお願いいたします。私の名前は

キリハと申します」


「よ、よろしく(うおおおぉっ!おっぱいがっ!おっぱいがすぐそこにっ!俺の手が届くところにあんなに巨大なおっぱいがっ!見えるっ!見えるぞっ!谷間が見える!お辞儀した隙間から谷間がああああっ!そんなので洗われたら…!ら、らめぇええっそこは弱いのぉおっ!)」


井田の頭はフルスロットルであった。


「…少し緊張されているようですね。まだお時間もありますし肩でもお揉みいたしましょうか」


井田の様子を見たキリハが井田に提案する。


「…そ、そうだな(少し落ち着くか…)」


そうしてキリハは井田の背後にまわりこみ肩を揉む。


「くっ…(うああああああっ!らめぇえええっ!肩を揉まれただけなのにぃいいっ!そしておっぱいがぁああっ!おっぱいが背中に当たるぅううっ!)」


「ふふ…お客様だいぶ凝ってますね…」


キリハは井田の肩を揉みながら井田の耳元で色っぽくささやいた。

背筋にゾクゾクという快感が走る井田。


「ふあぁ…(ダメだっ!もう耐えられないっ!気持ちよすぎて気絶しそうだっ!だがせめてこの股間の凝りをほぐしてもらうまではっ!)」


だがキリハが、近づけていた唇で井田の耳たぶを甘噛みした瞬間


井田は果てた。


この異世界に来てから負けなしだった井田の初の敗北であった。




「ありがとーござっしたー」


井田は黙って店を出る。


(うああああああああっ!!俺のカバカバカバッ!!あまりの気持ちよさに肩揉みだけで気絶してしまうなんてぇえっ!結局目的果たせなかったじゃんよぉっ!!もう死んでやるっ!!)


井田が自分のあまりの不甲斐なさに自暴自棄になっていると見慣れた女の子が外に待っていた。


「…イダ」


外に待っていたのはロザリアであった。

だが少し様子がおかしい。


「…お前本はどうしたんだ。金を渡しただろう」


井田の言うとおりロザリアは何も持っていない。


「…一人で絵本を探そうと思ったけど、でもやっぱりロザリアはイダが選んでくれた絵本を読みたい…」


ロザリアはうつむきながら答えた。


そう、ロザリアは一人でここで井田が出て来るのをずっと待っていたのだ。


「…はぁ、いくぞ(ったく面倒臭ぇな…)」


井田は一言そう言って歩きだす。


うつむいていたロザリアもトコトコと井田についていく。


「…イダ。買った絵本を後でロザリアに読んで欲しい」


「…はぁ(クソガキがっ!なんで俺がそんな面倒臭ぇことしなくちゃいけねぇんだよっ!)」


少し空も夕焼けに近くなった道を、二人は本屋に向け歩いていったのだった。

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