⑬仕切りなおして
「んで?」
一つあくびをしてから、俺はクレイさんに問いかける。無論、俺に聞きたいことに関しての話だ。
「…………こほん。では単刀直入に。あなたがその才能を隠す理由は何ですか?騎士団の話を聞いた限り、あなたはランパードと初めて会った際にもその力を使ってはいない。我が国の誇る精鋭騎士部隊を前にしても、です。何か目的があってのことだと思うんですが」
「あー……切り札ってのは最後まで取っておくための物ですから」
とても簡単であり、とても単純である。俺の
「…………なるほど。そういうことにしておきましょう」
にもかかわらず、クレイさんは大変疑っていらっしゃる目で俺を見ている。俺、そんなに信用無いですかね?
「アルセイフ様にカッコいい所を見せるタイミングを計っていたとかではなく?」
え?いやいやいや、べつにそんなワケじゃないですよ。俺はあくまでも作戦の一環としてですね。能力を隠すことによってですね、敵の油断を誘おうとする何とも頭脳的な戦い方をですね
「ほんとに?」
はい。俺が思うに、おそらくそんなことはないと思いますよ。多分。きっと。確率で言ったら仁十パーセントくらいの確率で。
「………………ほ、ん、と、に?」
クレイさんの視線がジト目になってくる。俺はそんな中会話の流れを一切乱さず流れるように土下座をすると、
「……っすいませんでしたぁっ!いいとこ見せたかったんですっ!」
「うわぁ……。思春期ですかあなたは」
「違いますぅ!十九ですぅ!」
「それは思春期ですね。かなり遅いですけど」
「だってアレじゃないですか!今まで落ちこぼれだと思っていた男の子が自分を守るために覚醒して超強くなるとか、女子からしたら絶対ヤバいじゃないですか!アルの中の俺の株がバブリーな感じになるじゃないですか!クレイさんだって同じようなシチュエーションになったらドキッとするでしょ!」
「かなり乙女趣味ですね。キモいです」
そう言ってクレイさんは肩をすくめ、首を横にふるしぐさをしてから、一度手を組んでからゆっくりとその手を頬に当て
「ですが……ほんの少しだけ、わからなくもありませんね………」
などと顔をほんのりと朱に染めながらのたまう。
なんでだろう。クレイさんが女の子っぽい。
「まあそんなことはどうでもいいんですっ!」
俺のにやにやとした目線に気づいたクレイさんが慌てて顔を戻しなら言った。
「そのことは置いておいてっ!……ファスト様に頼みがあるんです!」
なるほどね、どうやらこっちが本題かな。ほうほう、クレイさんからの頼み事か。頼み事。頼み事、ねえ………。ふーん。
………あれ?なんだろう嫌な予感がする。
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