幕間 休憩時間に
「ええーーーっ!?僕たちが大きな町でなんやかんやあって黒山羊さんの居場所の手がかりがグリシスの町の教会にあるっていう情報を聞いて、いざ来てみたらまさか黒山羊さんがファストをこの世界に呼んだ張本人だったなんて、びっくりーーーー!!
………ふう、こんなもんかな?」
アルのセリフが終わり、
「はーいカット!オッケーでーす!最後のほうは編集で何とかしまーす!」
「はーつかれた~。」
オッケーだという作者の声が聞こえて、ずっと立ちっぱなしだった俺は、思わず教会のテーブルに腰かけた。暑い。マジでこの暑さは
「溶けるっ………!鉄板っ……!石焼っ……!ブリュレっ……!のようにっ……!」
「なんすかそのカイジみたいな語尾w。そしてキレの悪いネタw。いや~、それにしてもマジで暑いっすね、今日。一応設定としては今は春なんすけどね~w。空調の故障らしいですよwww」
女神の石造の台座に腰かけた黒山羊さんが俺に話しかけてくる。お前、マジで罰あたるぞ?
と、作者に指導を受けたアルがこっちに来た。
「どうだった?僕のしゃべり方。」
「「いやしゃべり方も何も、ものっそ棒読みでしたやん。」」
黒山羊さんと俺のツッコミが重なった。
「か、かぶっちゃい…ましたね///]
「なんで照れてんだてめえは。」
がりがりに痩せた男の照れた顔とかマジでキモいからやめてほしい。(偏見)
「あ、さっきのファストのギャグについてだけどさあ、ここは室内なんだから、鉄板じゃないほうがいいんじゃん?蒸し焼きにされる的なイメージが入ってた方がいいと思うんだよねえ。『マジでっ………!俺たちっ……!小籠包っ……!』みたいな?」
「お前は日常会話に何を求めてるんだ?」
「吉本レベルの面白さ。」
「お前吉本なめんなよ!?」
「だいじょーぶだって。要するに、流行語大賞にノミネートされるレベルではやる言葉を考えればいいんだよ。」
「一般人にそれができたら吉本つぶれるわ!」
あの人たちは、一般人が思いつかないようなことを考えて笑いを取ってるんだぞ?
「マジっすか…!俺も何か考えれば…!吉本に……!」
「お前も何喰いついてんの!?」
お前一応ボスキャラだろ!?
設定が根本から覆るようなことするんじゃない!
「そうだよ!僕なんか早速思いついちゃったもんね。」
薄い胸を張るアル。悲しいくらいに服が盛り上がらないんだが…。
神よ!どうかこの貧相なボデイの哀れな子羊に成長期を与えたまえ!
「ファ・ス・ト・君?何考えてるか言ってみてくれるかい………?」
「いやマジでごめんなさい。……って、えっ!?なんで謝ったのにこっちに来るの?なんで俺の頭を持つの?なんで片手で持てるの?たしか設定的には、アルって全体的にこぶりなはz……痛い痛い痛い!!!やめてやめて!!!俺の頭は握力計じゃないぼぼぼ!!」
俺がアルにリンゴのように握りつぶされているとき、
「マジっすか!?アルの姐御が吉本行ったら、俺らもテレビに出れるかもしれないっすよねえ!?俺は芸能人の兄弟、ファスト先輩は芸能人の恋人、みたいな感じで!」
隣では馬鹿が夢を見ていた。別名、捕らぬ狸のなんとやらとも言う。
「姐御!どんなネタなんですか!?先輩にかまってないで教えてくださいよ!」
「いいよー。……えいっ!」
「うぐぼぎゃ!」
アルは、俺をサッカーボールのように地面に転がすと、
「サッカーで僕に勝てたら、だけどね。」
おいちょっと待て!この状況だと、俺ってもしかして
「ボール…だけど?」
なんなんだその反応は!そんなどうでもいいこと聞かれた時みたいな感じで言うのはやめてくれ!『目玉焼きになにかける?』『ソース…だけど?』じゃないんだぞ!?俺の命がかかってんだ……
「わかったっす……!でしたら、PK対決と行きましょうや、姐御。」
……おめえも無視すんなああああ!!!!
「いいよ。受けて立とうじゃないか。外に移動しようか。」
すたすたと外に歩いていくアル。
頭を掴まれ、引きずられていく俺。
若干遅れてついていく黒山羊さん。
「ゴールは……『
なんで遊びに9ページ目の魔法使ってんだよ!最強レベルの魔法を、サッカーゴール作るのに使うんじゃない!
「僕は…そうだなあ、先攻にしとくよ。」
お前も何かツッコめ!目の前で最上級魔法使ってるんだぞ!?なんで突っ込まない!
ストップ!魔法の無駄遣い!
「ABBA法にします?ABAB法にします?」
「そうだなあ………。ABABかなあ。」
何高度な会話しちゃってんの!?アルってサッカー詳しかったっけ?てかABBAとかABABとかって何!?
「えっと、ABBAっていうのは、2017年からFIFAが取り入れ始めたPKの方式のことっすね。AチームとBチームがあった時、ABABはABABABAB・・・って交互に蹴っていくんすが、ABBAはABBAABBA・・・って感じで二回ずつ蹴っていくんす。」
なるほど。全然わからん。
そもそもなんでそうする必要があるんだ?ややこしくない?めんどくさくない?
「ABABだと後攻のチームにプレッシャーがかかりやすい、ってことらしいっす。だから、二回づつ蹴って先攻後攻をなくすんっす。」
へー。そうかー。
たしかにABABだと、Bチームにとっては、Aチームの人が
決める→決めなきゃいけない。外したら不利になる。
外す →外してはいけない。振出しに戻ってしまう。
って感じだもんな。
Aの人は、もし外してもまだBが外す可能性がある、って考えるので緊張しにくい。
でもBの人は、Aの結果が出てるから、Aが決めてたら決めなくちゃいけないし、もしAが外してたとしても、「突き放せるチャンスなのに外したらどうしよう」と考えてしまうだろう。「外しても振出しに戻るだけだ」なんて考えられる人はそうそういない。よって、どっちにしても緊張しやすい。
なるほど。よく考えられてるな、ABBA法。
「早くやろー!ファストがボールね!」
おい待て、何気に今、死刑宣告をされたんだが。
おい待てやめろ俺の首から下を埋めるんじゃない。
蹴られたら、首がすっ飛んで行ってしまうじゃないか
「じゃ、やりますかー」
「一本目、行くよー」
ははは、冗談だよな。だからマジで助走つけるのやめててか助走の距離長くない?
「いっきまーす!」
ピ―――――っ!と笛が吹かれ、アルが走り出す。
うわあまってまってまって
「待たん」
アルの足が眼前を覆い、俺は意識を失った。
*
「あ、やった、生き返った!」
「ごほっ!俺は…どうなってたんだ?」
「………。」
「おいっ!なぜ目をそらす!」
「知らないほうが………いいと思うっすよ……?」
「俺、死んでる間にどうなってたんだーーーーーーーっ!?」
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