幕間 この小説は実際の人(ry

「う~ん、ない、なあ…。」

「ないね~。」

魚屋。

生魚が奇跡的に売ってることを願って町に来たものの、魚屋には生の魚の影すらなかった。

保存技術の発達していないこの世界では、生の魚はほとんど食べられていない。

…まあ、ファンタジー世界で冷蔵庫とかあったら怖いしね。

代わりに食べられているのが、魚を干し、保存のきくようにしたもの―――――いわゆる干物である。

現に今俺たちの居る魚屋にも、生魚は見当たらず、干したアジらしき物やカッチカチの石みたいなもの(多分鰹節的なやつだと思われる)が所狭しと並んでいる。

「仕方ない、港町まで行ってみるか。」

「うん!ちょっと待ってね。マ・ダガース…」

と、アルが呪文を唱え始める。

うん、マダガスカル、かな?

などと俺は「オドルノスキスキ」を思い浮かべた…と、大事なことに気づいた。


…ここ、人ごみの中じゃん。

「…ちょっと待て。」

「え?どうして?」

「『転送セント』は7ページ目で、高等魔法じゃねえか。こんな人ごみの中で使うんじゃねえ。――――――――――お前が王族だってばれるだろ。」




説明しよう。

今から666年前に書かれた、最初の魔法の書、「開始書ザファースト」は、たったの10ページで構成される。


…はい、ご想像の通りです。薄っぺらいです。薄い本レベルです。


とまあ、そんなことは置いといて。

この本によってこの世界には魔法が生まれた。そのため、この本に載っている魔法は「本作オリジナル」と呼ばれている。

技術の拡大はそれと同時に新たな技術の革新を産む。

それはこの世界でも同じらしく、魔法技術の拡大とともに、魔導士がこの本には載っていない、新たな魔法を開発した。アルの「バルス」などがその例である。

それらの新しい魔法は「本作」に対して「贋作オマージュ」と呼ばれている。


また、聖世界新字イナフで書かれたその本は、魔力を持つものにしか読むことはできない。…と言っても、この世界のほとんどの人間は魔力を持っているので、ある程度までは読めるのだが。

ちなみに、人によって読める部分は異なる。

後ろのページほど、より高度な魔法が書かれており、どこのページまで読めるかは才能によって決まるのだ。

教会の基準では、1~3ページが「初期魔法」、4~6ページが「普通魔法」、7~9ページが「高等魔法」とされる。

そして、10ページの魔法はいまだかつて誰も読めたものがない。何のために作られたのか、何をすることができるのか、すべてが不明。一つだけはっきりとわかることは、その魔法がとてつもなく高度だということ。

そんな意味を込めて、10ページ目の魔法には「文字羅列666」という名前が付けられた。

…ちなみに、「高等魔法」は貴族しか唱えられない。というか、「高等魔法」を唱えられるものが貴族とみなされる。

よって、こんな人ごみの中で7ページ目の魔法を唱えたら、確実に貴族だとばれる。

以上、Q.E.D!




「ああ、そうだったね。」

「そうだったね、じゃねえよ…。」

こういうところが抜けてるんだよなあ…。

「まあいいや、歩いていこう。歩いてこない、幸せは…っていうやつなのだよ、ファストくん。」

「ビミョーにジャス○ックに引っ掛かりそうなことを言うんじゃない。」

聞いてたらどうすんだよ。まあ、こんな異世界にいるわけが

「使用料金を速やかにお支払い願います。」

「いたーーーーーっ!?」

なんなのジャ○ラック!

神出鬼没の大泥棒かよ!

「失礼な。私は盗みなんかいたしません。」

「怖い!この人怖い!」

なんで俺の考えてることが分かるの!?

「まあ、そんなことはどうでもいいじゃありませんか。……さっさと使用料払え。」

「怖いよ!この人確実に俺の心読んでるよ!」

「いいから使用料払え。」

「はいわかりました。」

俺は泣く泣く財布を取り出した。

「ひゃっはああああ!金だ、金ええ!」

と、突然、ジャスラ○クの人が発狂した。

そして俺の手から全財産を奪い取ると(泣)、お前はジャマイカ代表の100m走選手か、ってくらいのスピードで走り去って、見る見るうちに見えなくなる。


「うわあ…。怖えなジャスラック○……。」

「ファスト、それだと隠れてない↑…。」

「そうだな、ミスっちまった!あはははは!」

「あははは!ファストったらドジなんだから~!」

「ははは!」

「ははは!」

「ははははははは!」

「あははははははははははははは」

俺たちは二人笑いあった。

そして、俺は、

















「全財産、盗まれたあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

一文無しに、なった。






















まだ続くんかい!と思ってるそこのあなた!

…そうです。まだ続くんです。

本編のほうとリンクしていかせるつもりではございます。

もう少々、お待ちを。

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