⑦幼稚園児…。(^ω^)←トラウマな予感。

日曜日。

俺たちは、川に洗濯に来ていた。

「よいしょ、よっこいしょ、うにゅー。」

俺の隣では、アルが一心不乱に下着をこすっている。

……「うにゅー」って何の掛け声だ…?


この世界に洗濯機なんていう素晴らしいものはないので、当然のごとく洗濯板で手洗いである。

と、アルはおもむろにこっちを向くと、

「ファストのエッチ!」

知らんがな。

お前が俺の隣で洗うのが悪い。

仕方ない、離れたところで洗うか、と俺は腰を上げた。

アルから10メートルほど離れた岩陰に移動し、自分の洗濯物をこすり始める。

…手がいてえ。

もうかれこれ30分くらい洗い続けてんのに、洗濯物が全く減らない。

まあ、洗濯板だから仕方ないけど…。

ごしごし。

ごしごし。

ごしごし。

…なんだろう、なんだか卑猥な音に聞こえる。

いかんいかん、集中、集中…。

俺は、ごしごしと一心不乱にこすり続ける。

と、アルがこっちへ来て、俺を見上げて上目遣いで、

「ファストの隣でやってもいい…?」

…可愛いじゃねえかこの野郎。

「いいよ。」

「わーい!」

子ども(幼稚園児)のようにはしゃぎ、飛び跳ねるアル。

あいつ、何歳だったっけ…?

間違いなく精神年齢は3ちゃいなんだが…。

身長は13歳くらいだけど、胸囲だと幼稚園児と変わらないんだよなあ…。

この前も買い物に行ったときに、3歳くらいの女の子から「お姉ちゃんのおっぱい、わたしのとおなじくらーい!」と元気よく言われてたしな。

そうか!平均を取って、8歳か!

「おいファスト、君は今、何を考えてたのかね。」

「なんでわかるんだよ!?」

というか、おい鬼〇郎、みたいに呼ぶな!お前は水木しげる大先生を知らないはずだよな!?

「もう!ファストのエッチ!」

なるほど。俺は完全に理解した。

…「エッチ!」って言ってみたいだけだコイツ。

というわけで俺はガン無視を決行する。

「ねえ、ファスト…?」

「…。」

「ねえってば。」

「…。」

「ねえ…。」

「…。」

「ね…え…?」

「…。」

「…このロリコン。」

「おいちょっと待て。」

今聞き捨てならないことを言わなかったか!?

「俺はロリコンじゃないぞ!?」

「じゃあなんで僕のことが好きなのさ。」

「っ!そ、それは…。」

たしか、俺は前にこいつに対して『胸含めてお前のすべてが好き』的なことを言った。

それは確かに「ロリコン」と捉えられてもおかしくはない。

ん?待てよ。よく考えてみると、さっきのアルの発言って……。

「アル、お前それ自分にダメージいってないか……?」

「ギクッ!!!」

やっぱりか…。

いまだにアルのパイオツコンプレックスは解消されてないらしい。

「(´・ω・`)」

一瞬で落ち込むアル。

「だ、大丈夫か…?」

「お、おう。大丈夫さ…。きっとこれも前世の僕がいけないんだ……。………しねええええええええ前世の僕ううううう!!!!!!!!」

叫びつつカバンからサバト人形(?)的なものを取り出すアル。

そしてそのまま謎の儀式を始める。

「ズン・・・ズンズンズンドコきよs…」

「ちょ、ちょっとまて!」

「止めるな、ファスト!僕はこの聖なる秘術で世界中の巨乳をぶっ潰してやる!」

「聖なる秘術をそんなことに使うな!!!!あと、『聖なる』ってついてる割には人形が禍々し過ぎない!?」

あと呪文が!「き○しのズ○ドコ節」はマズイって!著作権とかいろいろと!

って、そんなことはどうでもいい。とりあえず落ち着かせないと…。

アルがその気になったら世界が滅ぶ(かもしれない)

「アル、落ち着いて話し合おう…。かつ丼食うか…?」

「立てこもってるのか取り調べ中なのかはっきりしてくれよ!」

「立てこもった建物で取り調べ中だ。」

「斬新!」

「正確に言うと、警察署を占拠して立てこもったんだ。」

「警察無能すぎない!?それに、なんで取り調べされてんのか意味が分からないよ!?」

「取り調べしてんのは犯人のほうだ。」

「逆!?」

「ちなみに犯人は銃を持った状態で(警察官を)取り調べしてる。『落ち着いて話し合おう』は警察官のセリフだ。」

「なるほど、だからか~。」

よし、なんとかなだめる(話題をそらす)のに成功。

「さて、アル、相談がある。」

「ダジャレ…?」

いや、確かにダジャレになってるけどさあ…。

俺の顔って、そんなに真剣さがないのだろうか。

「違う。真面目な話だ。…………黒山羊さんに会いに行くか…?」

アルが前に話していた『黒山羊さん』。

どんな望みでも無償でかなえてくれる。

正直、ここで暮らしていたいので、旅はしたくないが、



「アルのコンプレックスが治るってんだったら……俺はいってもいい。」

アルが幸せでいることが俺の一番の幸せだ。

だったら…旅も、悪くは、ない。

それに、も、残すは最終段階というとこまで来てるしな。

そんな俺の決断に、アルは、少し躊躇ちゅうちょした後、


「僕は…行きたい。」

「よしきた。」

そうと決まったら準備だ。

「よし!買い物行くぞ!」

「…うん!」

アルとともに街へと向かいながら、俺は旅に出る前のあの高揚感を味わっていた。

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