④意味のないように見えるよね? …意味あるらしいぜ?

 おお。おおおおおお!

 町を普通に歩ける!

「こんにちは!」

「こ、こんにちは…。―――誰…?」

 おお!あいさつを返してくれた!!!!

「やべえなこれ。」

 普通の人ってこんな世界見てたのか。

「でしょでしょ~!僕のおかげなんだからね!」

「ああ、ありがとうよ、アル。」

「ありがとうって…。べ、別にファストのためじゃないよ!」

 …生ツンデレはいいものだね(キリッ)

 ちなみに俺、エヴァではアスカしです。いいよね、ツンデレ。

「ファストが死等ってばれるとこっちも危ないからなんだから、これは私の…ため…かな…?」

 なぜ疑問形なんだ!

 そこはふつう『私のためなんだから、感謝なんていらないよ!』だろう!?


「テイク2、カモンベイビー!」


 やり直させるべきだ!せっかく素材は(胸除いて)いいものそろってんだから、それを生かさないのはもったいなさすぎる。

「な、なんだいファスト?急に目つきが変わったんだけど!?」


「今の俺はロックンロール!今までの嫁観なんてなんてもう古いZE!ネクストで

ジェネレーションな嫁はTSU・N・DE・REだあ!!」


「TSU・N・DE・REって何!?あとロックンロールって何!?」


「So、今の価値観なんて古いぜオール、今までの嫁の胸ベリートール、butこれから

の時代はCHIPPAIがクル!でかいだけの能無しみなタチサル!ツンデレCHIPPAIが

国士無ソウル!俺たちはCHIPPAIを祭ル、祈ル、崇め称えル!」


「うえええーん、ファストが壊れたー!!!」


「俺はSYO☆U☆KIだぜベイベー!」


「これって絶対におかしい!妖怪の仕業に違いない!」


「IYAIYA、HUMANNをrapperにbecomeるYO・KAIなんてI have lookeⅾもhearⅾもnoting~。」


「いた!」

「うぃっすー!?」

「ねえファスパー、こいつはなんていう妖怪!?」


「えーとー、確か…ありました!こいつでやんす!名前がJIBAニャン、とりついた人をrapperにする困った妖怪でげす!旦那、やっちまって下せえ!」


「合点承知の助!」

「や、やめてくれNYA!ORECCHI、弱いNYA!」

「「そうか、それなら仕方ないよね!」」

「そうNYA!いっしょにおどらないかNYA?」

「「ナイスidea!レッツ目指すはブロードウェイ。」」

 三人はともに踊り始めた。激しく、情熱的に。

「「「あはははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」」」

 イッツアパラダイス。




―――読みづらくてすいませんでした。by作者











 朝起きると、やけに寒かった。

 …俺は、布団のなかで全裸でいた。

「!!!!????」

 状況把握じょうきょうはあくが全くできない俺に、アルが話しかけてくる。

「…おはよう、ファスト。・・・///ポッ」

 ………。待て、なんでアルが同じベッドで寝てるんだ。まさか、やっちまったか?いやまて、俺に限ってそれはない。俺はDTのまま三十歳まで生きて、魔法使いになるんだ!その俺が、まさかこんなところで、

「昨日のファスト、すごかった…///」

「やっちまったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 やってしまった。完全にアウトなヤツだこれは。向こうの童貞どもよ、俺異世界で卒業しちゃったよ!卒業式開かんと。

『やった、やったよーーー!、ラーラララ、はじめて~の、×××~、アルと×××~アルケージオ~マイラーブ~(マイラーブ)。』

 俺の頭の中でコロ助が歌い始める。

『なぜか~きのうの、きーおく~が、Ah~、消えてる、初めて~の、×××~、アルと×××~、ちっぱいイズ~マイラ~イク(マイラーイク)、すぐに~てれ~ちゃう、僕っ娘の~きーみーと~×××~。』

 歌い終わったコロ助が舞台から降りて観客にサインをし始めたところでアルが話しかけてきて、俺は現実に戻される。

「ねえ、ファスト、起きたばっかだけどさ、…もう一回、する…?」

 同時に上目づかいで見上げてくる。か、かわいい…。こいつ、普通にかわいいじゃないか。

 今までずっと気にしないようにしてきたが(気にしてしまった時もあったが)、こいつは女で18で、そしてとても、…俺のタイプだ。…胸含めて。直球ストレートって感じで。そんな奴に迫られて、

「ねえ、しようよ~!」

 …ん?迫られる…?

「しようったら~!」

 …これは、まさか―――

「…お前誰だ?」

 ―――暴走?じゃなくて。

「お前、アルじゃない…よな?」

「え…?ひどいよファスト、はアルだよ。」

「いや、アルじゃない。アルは俺の前では自分のことを『私』って言わない。」

 自分のことを『私』って言うのは苦手だ。敬語が苦手だ。アルはそういってたじゃないか。だから、余所行きの時は『私』って言って、本当に心を許した人―――俺のことだ―――といるときじゃないと、『僕』ってのは使わないんだと。

 そうだ。最初から違和感いわかんはあったんだ。『昨日のファスト、すごかった。』だあ?あのアルがそんなこと、恥ずかしがって言えるわけがない。くそ、なんで今まで気づかなかったんだ。

 俺はアルに似た誰かに問う。

「アルをどこにやった?返せ。」

「え~?逆だよ~?」

「逆?」

「アルだっけ、をどこかにやったわけじゃないよ。。」

 と言いつつ、偽アルは手の上に光球を出現させる。

「な…?」

「心配しなくていいよ~。君に危害を加えたら。」

「…楽しみってなんだ。」

「教えたら楽しくないでしょ~?アッと驚くサプライズさ~。それより、ほら、この球の中を見て~。」

 と、いつの間にか緑色に変化していた元光球を見せてくる。

 その中には、山の中と思われる景色と、

「…よかった。」

 一人で俺を探して歩いているアルの姿が映っていた。

 よかった、無事か。

「さて、じゃあ返してあげるよ。ただし記憶は消すけどね。」

「…お前は何者だ?」

「どうせ記憶消されるじゃん。君は頭が悪いのかい?」

「いつ飛ばされたんだ。」

 首筋に焼き印がないことを考えると、おそらく焼き印を消した後に飛ばされたと思うのだが。

「JIBAニャンは私とだけ言っておくよ。というか、どうせ記憶消すじゃん。」

「じゃあいい。さっさと飛ばしてくれ。で、もう俺の前に現れるな。」

「わかった。さっさと飛ばしはするよ。でも、」

「なんだ。」

「…すぐに君の前に現れると思うよ。」

「ま―――「――――転送センド――――」

 偽アルが「解」を唱えると同時、俺は黒い世界へ吸い込まれた――――。



















「―――み!起きろ!」

 アルの声で、俺は今まで寝ていたベットから身を起こす。

「おはよう、アル。」

「おはようじゃないっ!今は夜だ!そんなことよりも、昨日の夜からどこをほっつき歩いてた!」

「え…?」

「え…?じゃないっ!この馬鹿野郎ばかやろう!」

 ぽかぽかと俺の胸をたたいてくるアル。

 碇君といると、ぽかぽかする――じゃねえ!

 なんなんだ、どうしたんだ一体。てか王族のステータスでぽかぽかするのやめてもらってもいいですかね。これ、俺のステータスだと、

「地味に痛いからやめろ。」

「やだ!君がちゃんと帰らないのが悪い!夜中に『ちょっとトイレ行ってくる』って言って、ちょっとどころか次の日の夜まで帰ってこないし!」

「え…?」

 そんなことをした覚えはないんだが。

 だが、アルはそんなことお構いなしにぽかぽかし続ける

「え…?、じゃない!」

 真っ赤な目で俺を見上げてくるアル。

「――――どれだけ心配したと、思っているんだ。」

「…」

 アルの剣幕に、俺は何も言えなくなる。

「ずっと僕のそばにいてくれ!僕のそばから離れないでくれ!頼むから、君は、君だけは――――」

 もう完全に泣き崩れながら。




「――――僕を、裏切らないでくれ。」




 その言葉の裏に、どれだけの過去が隠れているか、俺には想像もつかない。どれだけの決別が関わっているか、わからない。

 俺は日本向こうでも普通の家に生まれたし、人生のほとんどを何不自由なく暮らしてきたから。腹違いなわけでも、別の国から来たわけでもなんでもなかったから。

 こっちに来た後も、元から一人だったから。

 こんな、生まれた時から虐げられてきた少女にかける言葉を、俺は知らない。最初から裏切られることを運命として生まれてきた少女にかける言葉も、知らない。

 だから、俺は、俺にできる唯一のことをする。

「っ!」

 俺の腕の中で、アルは一瞬驚いて跳ね上がり、そのあと顔を上げる。

 その目が、信じてもいい?と言っている。俺に問うている。

「ああ。俺はお前を絶対に裏切らない。」

 そう答え、腕にこめる力を強くする。

「本当に?絶対だからね?僕は結構わがままだし、家事出来ないし、不器用だけどそれでもいいの?」

 俺は答えの代わりに、アルをさらに強く抱きしめる。アルも俺の体に手を回し、抱きしめ返してくる。

「ファスト――――」

 腕の中でアルが言う。






「―――――好きだよ。」






「俺もだ。」

 即答する。

 アルは、一瞬驚いた顔をして、それからはにかむように笑った。やべえ、可愛い。

 俺がヘタレ系だったからいいものの、これは反則だぞ。ヘタレ系でなかったら、まじで理性が飛んでたと思うわ。そしてヘタレ系というものは、こういう時に最後まで発展させるすべをもたないものであって、絶対に最後まではたどり着けない。

「…。」

 …まさに今の俺がそうであった。

 どうすればいいんですかね、これ。告られてOKだして、普通だったらこのままさりげなくベッドに行って、あーん、とかやるとこなんだけど。

「…。」

 無理じゃね?俺DTだし。今まで女に告られたこと罰ゲーム以外でないし。

 というかそもそもどうやってさりげなくベッドに連れて行くんだ。

 等と思っていると、

「ファスト…。」

 しびれを切らしたらしいアルが俺をベッドに押し倒した。

 そうだった、ラノベにおいて積極的に迫ってくるのはヒロインのほうだ!

 やったぜ!

 よし、この状態からいい雰囲気に持ち込むんだ!

「なあアル、俺さ。」

「――――すぴー。」

 …寝てやがった。

 なんなんだこれは。さっきのは眠いから寝ようってことだったのかよ!?

 もうこれはおそい掛かっちゃっても合法だと思う。

 そうだ、これは合法、据え膳っ…!圧倒的据え膳っ…!

 逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだっ…!

 よし。覚悟が決まった。

「ファスト、いっきまーす!」

 俺は高らかに宣言すると、アルを抱きしめようと――――

「ちょ、ちょっと待って、心の準備が…。」

「起きてたんかい!」

 実は起きてたらしいアルがここでヘタレた。

 ええ~?ヒロインがヘタレるなんて見たことないんですが。

 と思う俺をしり目に、アルは深呼吸を3回ほどすると、

「…いいよ。」

 ファスト、いっきまーす。





























「…ねえファスト、君の名前って本名じゃないよね?」

 暗闇の中でアルが俺に聞く。

「…よく気付いたな。」

 俺はアルのほうに毛布をやりながら答える。

「だって君、名前をいうとき若干じゃっかんつっかえてたじゃん。」

「…俺の元いた国ではな、俺ははるあきって呼ばれてた。で、こっちに来た時に、はるあきって名前はこの世界ではあまりないんだなって気づいて、目立ちたくないから適当にファストってつけたんだ。ちなみにファーストっていうのが俺の国では『一番』っていう意味だ。それをもじってファストにした。」

「ふーん。」

「なんでそんなこと聞いたんだ?」

「何か話してないと恥ずかしくて死んじゃいそうなので。」

「…言うなよ。」

 なんだよもう急に恥ずかしくなってきたじゃないかよ。

「大丈夫さ、痛いのは最初だけだったし、あとは割とよかったよ。」

「やめろ!真顔で感想を言うな!」

 死にそうだ。どんな拷問だよ、女に昨夜の感想を真顔で言われるって。

 ああ、なんだかそんなこと考えてたら、慣れないからあんな失敗やこんな失敗をしちまったさっきの出来事が思い出されちまうじゃないかよ。…女って漫画みたいに、すぐに「あ~ん」って感じにはならないんですね。

 ああもう、顔が熱い。

 そんな俺の顔を見て、アルも恥ずかしくなったのか、

「…寝る。」

 といって、そっぽを向いてしまう。

「ああ、お休み。」

 俺もそっぽを向く。


 いくらかたったころ、アルがボソッとつぶやいた。

「ファスト、おきてる?」

 俺は、今起きたらそれこそ恥ずかしさで悶え死にしそうなので答えなかった。

「寝ちゃった、か。」

 どうやら寝たと思ってくれたようだ。

 よかったー。悶え死ななくて済んだ。

 と思った瞬間。


「やっぱ起きてるじゃないか。」


 至近距離めのまえにアルの顔が現れ、俺の顔を覗き込んだ。

「うおっ!?」

「むー。なんで起きてたのに返事をしなかったんだ!」

「起きたら恥ずかしさで悶え死ぬからだよ!」

 俺は半ばやけくそになって言った。

「そうか、ならいい!」

 元気よく言うアル。

「僕も今、死にそうなくらい恥ずかしいしな!」

「自分で言うなよ…。」

「君、恥ずかしいんだったら寝たふりをしてろ!すぐ終わらせてやるから!」

「ちょっと待て、何をする気だ!あとお前、それブーメランだぞ…?」

「あっはははは!そうだった!」

 こんな時でもアルはアホだった。

「ちょっと君の顔が見たくなってな。ただそれだけだ、安心しろ。(棒読み)」

「何する気だ!お前ほかに何する気だ!絶対『ただそれだけ』で終わらないことしようとしてたろ!」

「まあまあ、どうせ超えるもん超えちゃってるんだし、別に今更どうでもよくない?」

「…ま、まあな。で、何する気だったんだ?」

自主規制××××しとくよ。」

「お前は俺に何をするつもりだったんだああああああーーーーーーっ!!!!!」

 俺の魂の叫びが山に響き渡った。

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