③布団ってゴキホイ並みの心地よさ
二度寝したせいで人生の中の貴重な一日を無駄にした俺たちは、次の日すぐさま出発した。
今日の朝、昨日一日中寝たはずなのになぜか寝坊し、
「ファストのせいだぞー!」
「お前と布団のせいだよ!」
などと罪の
「なあ、ファスト。じつは僕は胸を大きくする当てが一つ、あるんだが。」
突然、アルがカミングアウトした。
アルの胸を大きくするのがこの旅の目的ということになっている。
が、胸を大きくする方法なんてわからないので結果として適トゥーに歩いているのだが、
「まじか!なんだ?教えろ!」
当てがあるなら早く言えよ!ここまで歩いたのが無駄になるかもしれないじゃねえか!と内心半ギレな俺を前に、アルは一つ
「風のうわさで、『黒山羊さん』っていう
「全く」
ないです。てか一緒に
「そう。で、その『黒山羊さん』っていうのは、すっごい魔術師で、旅人の望みをほとんど何でもかなえてくれるんだって。」
「ギャラは?」
「いらないんだってさ。」
「100パー
これは確実に詐欺でしょう。キャッチセールスなんかでよくあるやつだな。「ただで○○差し上げます!」っていう広告みたいな感じだ。
「詐欺じゃなくて、本当にかなえてくれるらしいよ?なんか『ファシール』っていう強い悪魔の召喚に成功して、ものすごい力を得たとかなんとか。」
…並べ替えて、ルシファーか。こっちの悪魔も向こうと同じ名前なんだな。いや、きっちり同じじゃないけど。
そうかー、ルシファーかー。
・・・え?ルシファー?
もしかして、
強くね?
なんで召喚できてんの?
そして何で召喚されてんの?人間ごときに?それは支配者として大丈夫なの?
もし本当だったらすごいな。少なくとも行ってみる価値はあるか。
詐欺だったら詐欺だったでまあ、(アルが)吹き飛ばせばいいか。
「まってくれ、
「オ…オッケー。じゃあまず情報収集だ!」
突然俺が主張を変えたことに戸惑いながらもうなずくアル。
「とりあえず近くの町にいこうじゃないか。」
「俺は町に入れないんだが。」
「あ…。」
焼き印を隠して入ったとして、もし見つかればそのまま死刑だ。
「…ねーファスト、思ったんだけど、その焼き印って、僕でも消せないの?」
「うーん、なんか魔法の焼きごて的なもので入れられたらしくて、ナイフでそこだけ削いだんだけど、しばらくするとまた…。」
「削いだの!?うわ、想像するだけで痛いよ…。でも、それって呪い系の魔法だよね?そういうのだったらいけるかも。ちょっと待ってね…。」
そういって、アルは呪文の詠唱を始める。
「かんじーざいぼーさーつーぎょーじんはんにゃーはーらみーたーじしょうけんごーおんかいくーどーいっさいくーやくしゃーりーしー」
…
ものすごくミスマッチだな!?
そう心の中でツッコミを入れる間にも、詠唱は進んでゆく。
「―――ぜーだいじんしゅーぜーだいみょーしゅーぜーむーどーしゅーぜーむどどーしゅーのーじょーいっさいくーしんじつふーこーこーせつはんにゃーはらーみたーしゅーそつぜしゅーわーぎゃーてーぎゃてーはーらぎゃてー、はらそーぎゃーてーぼーじーそわかーはんにゃーしんぎょー…」
ようやく詠唱が終わった。あとは対象に集中して「解」を唱えれば魔法が発動する。
「――――――
アルが「解」を唱えると同時に、俺の首筋の焼き印の色が褪せていく。
「おおおおおお!?」
「ふうー、おわったよ。」
「お前マジですげえな!」
何回ナイフではがしても取れなかった焼き印を取っちまいやがった。
「えへへー。」
ほめられてうれしそうに頭をかくアル。
ん?でも呪いって、どういう仕組みで消すんだ?
気になった俺はアルに聞いてみることにする。
「なあアル、今、どうやって消したんだ?そう簡単には解けないだろ?」
「うーんとね、確か、その呪いをかけた悪魔より高位の悪魔に言って、その魔法、つまり呪いだね、の効力を消させるんだよ。」
「じゃあ最高位の悪魔を召喚すれば、魔法同士の戦いでは無敵なのか。」
「理論上はね。」
なるほどな。そして、能力値が高いほど呼び出せる悪魔も高位ってわけか。
「焼き印も消えたし、そろそろ行こう?」
「わかった、ちょっとまってろ。」
そう言いつつ俺はかけてあったカバンと引き出しの2重底の下の金をとる。
この世界の金は、金貨、銀貨、銅貨の3種類。
金貨=銀貨×100=銅貨×10000だ。学校(金持ちオンリー)の先生の給料が銅貨2000枚だから、銅貨1枚は大体200円くらいか。
あくまで月給40万、としてだけど。
ちなみに俺の全財産は金持ちの家からかっぱらってきた、銅貨113枚と銀貨2枚だ。
金額にすると大体6万円くらい。結構少ないので大事に使わなくては。
俺は全財産の内、銅貨のみを愛用の財布に入れ、銀貨はカバンの2重底に入れる。
外に出ると、アルはニコニコしながら待っていた。
「さて、行くか。」
「~♪」
アルとともに山道を歩きだす。
焼き印が消えた首は、何となく回しやすくなったような気がした。
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