第5話新しい世界

目が覚めた。


そうだ、俺の名前は岩倉朋也だ。思いだした!


何がなにやらと困惑していて、女の子をよく見れていなかったが、恐らく髪の色は赤だった。瞳の色は、薄い赤紫色で、肌は本当に透き通っているようだった。辺り一帯、全てが白に染まっていて、まるでほんのりと色混ざりするかのようなその少女を、ちゃんとみることも出来ずに、このよく分からないと言わざるを得ない場所で、思い出していた。


ただはっきりと分かったのは、少女には涙が見えた。はっきりとした、透明なのに、そ

れが涙だとわかるほどに、微笑みながらそれを流していた。

そしていつの間にかその少女のことを考えていると、胸の鼓動が高まっていた。


でも今こんな事を考えていても何も変わらない。とにかく状況を整理して、この世界をちゃんと理解する必要がある。


まず、俺の横たわっていた身体を起こして、辺りを見回すと、周りは完全に協会だった。しかも俺が覚めた時に座っていたのは棺桶だった為、あの有名なゲーム、「竜の旅」で死んだ時に蘇る場所と同じじゃないか。とか思いながら、さらに周りを見通して、少し歩こうと、この建物の中に人がいるか探したが、案の定何も聞こえなかったので、まぁ俺しかいないよな、と思いながら、慎重に、外に出ることにした。


3mはある出口の門を開いて、外に出てみると、

学校に来た時の、入口までの道と同じように、草原が広がっていて、雲ひとつない昼の空に、太陽の光が輝くように、草原を照らしていた。

目の前は少し登り坂となっており、上までいくと、何か見えた。

100mほど離れていたため、何かあるのだろう。と、見える所まで走っていった。

そしてそこへ着くと、何やら看板が見えた。


なんだこれ・・・?

7つある小さな看板と、目の前の大きな看板があって、大きな看板には説明が書いてあった。


どれどれ。


"ここは無の世界。何も感じることが出来ないし、何も出来ない。いや、出来るには出来るし、何か、例えば、この草原を感じるとか、風を感じる。なら出来る。だから明確には無と言えるわけではないが。

それ以外には何も無い。それ以上の"こと"が無い世界、それが無の世界。"


なるほど。分からん。

えっと、"無"なんだよな。まぁ完全に無ではないが。何も無いから何も無い。例えば、田舎だと、畑やらコンビニやらがあるだけで、他に目的が無ければ、何もすることが無い。

つまり、ここってほんと何も無いよな。と日常会話で出てくる感じの何も無い。そういうことなんだろう。


と、なんとなく考えていたら、人の影が見えた。

恐らく・・・女性だろうか。

なんだ、人はいるのか。

とりあえずその人がいる所まで近づいた。


「あのー。ちょっといいですか?」


「いいと言うか、あなたに会うためにここまで来たの。」


「そうなのか?あ、今は"夢"の中だし、俺のことはみんな知っているのか?」


「そんなことないわよ。まぁ私はその"夢"に関係しているから、いちいち説明するのはめんどくさいから省くけど、あなたのことは大体分かるわよ。岩倉朋也君」


いま会話しているこの女。背は少し低め、髪は青、瞳は茶色で、フリル状のスカートと、白い服にリボンが着いた、可愛らしい服装だった。

でもまじでここのことは何にも知らないし、この女のことも誰なのか分からないので、説明を省いて欲しくは無かった。


「じゃあ自己紹介をするわね。私の名前はセリア。もう看板は見てくれたと思うけど、ここは無の世界よ。何も無いし、何も出来ない。

そして、この世界から、あそこにある7つ小さな看板を読んで、1つ選択する。

小さな看板には、ここから別の世界に移動できるんだけど、それが7つあるの。

どれか選んだら、私がそこまで移動させるから、あなたはどれか1つ決めるだけよ。

私は基本ここにいるし、別の世界では、ある一定の条件を整えたら。ここに戻ってこれるから。それまで頑張ってね。分からないことがあったら聞いてね!」


割とざっくりした説明だったので、今までの説明を要約すると、

・この世界は無である。

・そしてこの世界の向こうにある小さな看板に書いてある、7つの別の世界から1つを選択して、選択した世界まで移動できる。

・そしてその世界で決められた条件をクリアすると、この世界に戻ることができる。


恐らくだが、この全ての世界をクリアすることで、現実へ戻ることができるのだろう。


聞きたいことと言えば・・・


「なぁ、セリアって、俺のことは分かってて、組織にも関係があるんだよな。まだ何も知らないんだ。出来ればその事について、詳しく教えて欲しい。」


「説明できないわ。今の所はね。ただ全てが終われば全てが分かるとだけ言っておくわ。」


なんということでしょう、物凄く大雑把である。


聞いても仕方なさそうなので聞かないでおこう。

今は聞きたいことがやまやまだが、情報が多くて整理できてない。

だから今はそれに従っておこう。


「そうか、また何かあったら聞くよ。とりあえずどこへ行くかきめるんだよな。」


どんな世界があるのかと、好奇心を抱きながら、見てみることにした。




見てみたが、なんだこれ。


書いてある内容を見て唖然とした。


"武力の世界"


"魔法の世界"


"完全なる無の世界"


"知恵の世界"


"迷宮の世界"


"終わりの世界"


これらの世界の文字の下に説明が少し書いてあった。


武力の世界では痛覚が発生する。又、ドーピングやポーション、道具を使い、常に戦闘を繰り広げ、最後まで勝ち抜くことで抜け出せる。死亡時はリセットされる。しかし特例もあるらしい。それが何かは分からない。


魔法の世界では、適正があり、属性があり、使える魔法の種類、範囲を自分で決められる。しかし、自分の決めた能力に応じ、その世界での敵の能力も上がる。効率よく倒せる敵の能力を把握する事が重要になってくる。その世界の"どこか"にいる黒幕を倒すことでクリアすることができる。死亡時、この世界に来た時と同じ場所に戻る。ただし、黒幕が変更される。そして自分の能力が少し上がる。


完全なる無の世界。何もできない。だか何もしないと始まらない。クリアはない。だがそれがクリアだと認められればクリアになる。


知恵の世界では知恵を使う。クリアの方法はランダムだ。1度間違えたらリセットされる。リセットされることに難易度は上がる。


迷宮の世界では、罠が仕掛けられていて、迷宮そのものを、ゴールすることでクリアできる。


終わりの世界。これらの6つの世界をクリアすることで行くことのできる世界。





恐らく終わりの世界は現実に帰ることができるのだろう。だから実質6つだな。しかし、少し苦労しそうだが...。やるしかない。未だ何も分からないこの場所と、現実の真相ってやつを探ってやろうじゃないか。なんかやばそうだからな。


「おい、どれでもいいんだよな?」


「えぇ、早くしなさいよ。こっちもやることあるんだし。気楽にやれば何とかなるでしょう?」


「まぁ、言いたいことは少しあるが早速選ぶか。うーん。これはとりあえず武力の世界で。」


「OK。始めるわよ。へのへのもへじぶにょにょへぐれぶふぉーーー!!!!!!」


明らかに今作ったレベルで糞みたいな語彙力で詠唱され、周りが光った。


「そんじゃね。聞きたいことがあれば目をつぶってあたしの名前を呼べば反応できるから。そん時に聞きたいことがあったら聞いてね。」


「ありがとう。あとさっきの詠唱はきついからましな詠唱になっていることを願ってる。行ってくるわ。」


そう言い残して、俺は"武力の世界"へ、足を踏み入れた。


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いつか全ての終わりなき いをろ @hirotomukai

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