第四章 アリアドネの暗号(18)
碓井奏真は構内を走り回った結果、紗那を見つけられず、都歩研の展示教室に戻って来ていた。
紗那のスマホに電話をかけても全くつながらない。無視されているならいいけれど――本当は良くないけれど――、紗那の身に何かあって電話に出られないのだとしたら? 何しろ、二股男と一緒にいるのだ。
都歩研のメンバーなら、紗那に連絡がつくかもしれないし、ダメなら隼人でもいい。そう思ったけれど、受付に一人だけの女子学生は、客対応で忙しそうだった。外国人の客に片言の英語でスタンプラリーの説明をしている。
イライラしながら待っていると、「すみませーん」と声を掛けられた。
「これ、牟礼って人に渡してくれて頼まれたんですけどー」
高校生だろうか、自分より年下に見える女子二人が、なぜか奏真に紙切れを差し出していた。
牟礼と聞いて、奏真はさっとひったくるようにして受け取った。伝言を持ってきた二人は奏真の勢いに驚き、「こわー」「何なの?」と言いながら去って行った。
手帳の切れ端のような、折りたたまれていた紙を開くと、中には一言。
『カフェ一号館で、お前の彼女とお茶してるから早く来い』
サインのような崩したアルファベットは『Ando』と読める。
二股らしいからこの『彼女』は紗那ではないかもしれない。でも、今日あの男と一緒にいたのは紗那だ。
――紗那が誘拐された!
奏真はパンフレットの地図で場所を確認すると、全速力でカフェ一号館に向かった。
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