第三章 湖畔のコードネーム(13)

「ねぇ、遥。もう寝ちゃった?」

「んー? 何ー?」

 半分眠りかけたまま、美咲の声に遥は答えた。すでに灯りは消して、皆布団に入っている。二年組が寝ているロフトからは物音もしない。

「遥は、和田君のこと好きなんだよね?」

「うん、好き」

 紗那が皆に話さなかったおかげで、特別だと伝えあったのは誰にも言わずに済んでいる。いずれ話すだろうけれど、今はまだうまくまとまる気がしなかった。

「だよね……」

「突然どうしたの?」

 ふと遥は覚醒する。体を起こして隣の布団を見る。

「もしかして、美咲も史郎君のこと……?」

「まさか! ありえない! 全然違うし。なんでそうなるの?」

 そこで、逆隣の里絵奈から「美咲、うるさい」と注意が飛んだ。遥もそっと横たわる。

 美咲の顔を窺うと、いたずらな笑みを返された。

「おもしろかったから、キャンプの間にくっつけようってミッション立てたんだけど、そういえばちゃんと遥の口から聞いたことないなって思って」

「そうだっけ?」

「そうだよ」

 ごめんね、と遥は再び目を閉じる。

「で、そのミッションはもうやめてね」

「はいはい。大丈夫、見守りますよー」

「ありがとー」

 夢見心地の遥には、続く美咲の言葉は聞こえていなかった。

「あまりにもはっきりしないようなら、また別の作戦を考えるだけだしね」

 あまつさえ、遥の体越しに里絵奈と二人で目配せしあっていたなど、知る由もなかった。

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