第二章 二人で奏でる分散和音(8)

 手伝ってくれたお礼にと夏子は夕飯をおごってくれた。史郎は「撤収の手伝いしかしていないのに」と恐縮していたけれど、二人でよばれてしまった。

 その席で、遥が「戦利品」と言って、銀のアクセサリートレイを披露すると、史郎が声を上げた。

「え? これ、俺も見たけど、非売品じゃなかった?」

「うん。そう。でも、どうしても欲しいんですって言ったら売ってくれたんだー」

「俺が聞いたときは、もっと問答無用で非売品って言われた気がするんだけど」

 納得いかない様子の史郎に、夏子が「あはは」と明るい声で笑った。

「わかる! 遥ちゃんなら買えるわ」

 きょとんとする遥に、夏子は、

「すごい! かわいいかわいい! って言ったんでしょ?」

「はい! だって、とってもかわいいじゃないですか!」

「……ね?」

 遥が力説すると、夏子は肩をすくめて史郎に同意を求めた。

「ああ……はい。……わかりました」

 史郎はため息をつく。

「遥ちゃんなら買える」

「それ、私がずうずうしいってこと?」

 遥が口を尖らせると、史郎は口の端に笑みを乗せた。

「さあ?」


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