第3話
進路見学。1度は皆さんも学校行事として、他の大学や専門学校を見学に行く、なんて体験をしたことがあるのではないかと思う。
先生から進路について聞かれてから3週間後。
私は同じ学年の皆と共に大学を見学することになった。
充実した設備、充実した図書館、楽しげで笑顔の絶えない学生達、明るく面白く学内を案内してくださる先生方。
結果として、進路見学はとてもとても楽しかった。こんな場所で学べたら、こんな先生から学べたら、きっと楽しいのだろうな、と思った。
ここで、学びたい。
ここでなら、私らしくいられる。
見つけた、私の夢。
やっと、したいことが見つかった。
…でも、でも。
家は裕福ではない。
大学の学費なんて到底払えない。
でも、それでも、あの場所で、学びたい。
やっと見つけた夢を、手放したくない。
私の家は4人家族で、両親と姉、そして私。
時間がバラバラな家族だけど、夕飯の時だけは、家族全員で揃うのが我が家のルール。
だから、その時、家族に思いを打ち明けた。
「私、この大学の見学行ってきたんだけど、すごく楽しそうで、施設も充実してて、…行ってみたいな、って思ってて」
かなり緊張したけど、言えた。
だけど、誰も本気にはしてくれなかった。
「ふーん、…それよりも、この短大、お母さんが付属高校に通ってたのよ−!ねえ、今どんな感じだった?」
「…建物が綺麗になってたよ」
ふーん、それよりも…って。
当たり障り無いように質問には答えるけど、それでも結構悲しかった。
私のことなんて、興味無いんだって言われたみたいで、苦しくて、その日の夜は涙が溢れて眠れなかった。
中学時代の事は、私の中で箱に仕舞われて、見えないように隠されている。
だけど、時々思い出したかのようにその箱を開いては、胸がぎゅうっと握られるように苦しい気持ちを思い出す。
あの時よりは、マシ。
大丈夫、大丈夫。
そんな風に、自己暗示をかける為に繰り返した。
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