―伝説の反論決闘―
8話―1 遺恨の残滓
四大真祖
それと時間を同じくして――【マリクト】の使者を言い渡された一人の忍が、
「まさかまた、あいつと語り合う日が来るとは……。レゾン嬢にはつくづく感謝だな。」
伝説の一角である魔王への使者として、この上なく適任である男――【マリクト】が
言わずと知れたこの
伝説の戦いから後――長きに渡って
それは魔界を背負う者としての誓いであった。
仲間であり――戦友であった魔王と交わした決意は、永劫の時間の中でそれきりとなっても不思議では無いものだった。
「
【ゲブラー】へ通じる魔界の回廊――その空に当たる層を、一見姿は見えぬが間違いなくそこを滑空する機影が、蜃気楼の様に魔界の大気を歪めていた。
亜音速程度ではあるが、その機影に
「何……いずれ話すだけの穏やかな日々も訪れよう。我らはそのための裏働きをこなさねばならんが……。お前達の活躍にも期待している、
見えざる機体に控えるは、かの
魔界において
そのダイロクテン魔王が信を置く
名が現す通りその体躯には、所々名に冠した色の装飾が配され――しかし、特殊工作と言う任に適応させた軽装プロテクターを
そして音も無く【ゲブラー】世界が入り口へ到達した
今回【ゲブラー】の魔王アーナダラスへの体面は使者である。
だが機体を秘させたのは、あの不審者がそれらに気付き――予定しないタイミングで行動を起こさぬための処置。
「これより先――アーナダラスが居る中央の巨塔までは、油断するなよ?」
この地に入国した時点で察する事だが、周囲の防備が異常に強固である。
【マリクト】勢からしてみれば【ゲブラー】の警備の堅さは事前に知りえた情報――しかし、情報を上回る数の【
もはやそれは、この国に存在する
それは即ち、起こりうるであろう事態への備え――
だが詳細に至っては未だ不透明のはず――そこへ使者と言う形で訪れ、今後の情報連携に努めるのが
「(やはり
「(あの
歩みを進めながら、
一見すれば確かに強固――しかしやはり魔族特有の、思い込みによる認識不足を感じていた。
それは地球と魔界へ破滅を導こうとしていた、あの造反した導師の付け入る隙でもあったと、主君より聞き及んでいる。
策士と言う存在は
それらを裏の裏――針の穴の様な
だがこの世界の魔王は〈軍勢〉と言う力に絶対の自信を持つ者である――それは旧知の友であるからこそ知りうる情報。
今はノブナガ勢としても、その不審なる者の正体は推測でしかない――が、そこは主君の下に控える
そのためには、この使者と言う任がその確実性の決め手となる。
同時に【ゲブラー】へ出向く事で、万一の際――
暫くの徒歩により、魔王の本殿である塔へと辿りつく。
この世界を支える支柱と、険しく
罪深き罪人を決して逃がさぬ様な、恐れがそこへ集約される様に。
その中央を、この世界の上部まで貫く一際高く
「お待ちしておりました。【マリクト】の使者である
塔の最下層――魔王への取次ぎのため、すでに報を受けた主が遣わせた配下の魔族。
使者である
事が急であると言うだけでなく――その迅速な対応にて、何かしらの行動に出るやも知れぬ不審なる者の策をけん制する狙い。
策とは緻密な情報の収集と、積み重ねが物を言う――時間を掛ければかけるほど、その精度は増していく。
それを穿つためには、それを上回る速度の情報伝達と即決即断――電光石火の行動で先を取る。
つまる所、文化が発展した世界における情報戦争そのものと言えよう。
その情報戦争における
そしてもはや、いつぶりか分からぬ程の時を越え――伝説となった旧知の友との再会を果たす事となる。
****
「せっかくの再会だと言うのに、ゆっくり話も出来んとはな……。」
魔王は塔の窓を眺めながらに嘆息した。
【
しかしそこは魔界の外世界――近代的な
「ああ、全くだ。だがそれも……あの希望を託された少女達が何とかしてくれる。」
「そもそもそれは、俺達が望んだ未来でもあるからな。」
魔界でも恐れられるこの法の頂点と、まさに親しい友人
しかし
「今は情報のやり取りのみを最優先とする――許せよ?まずは吸血鬼レゾンとヴァルナグス第三王女へ、度々の義も誇りもない横槍を入れた不審なる輩――」
「我が殿はすでに目星を付けている――が、後一押し……情報が必要と言う所だ。」
その横槍は、直接不審の輩本人が介入する様な
そこから導かれる最も真実に近い解――不審なる輩は策士である事。
「なるほど……噂通りの先見の明。まさにノブナガと言う男は、新世代の魔王を名乗るに相応しいと言う所か……。して――」
恐らく魔族と言う種族の特性上――かの伝説の戦いに置ける、知略の戦いに
その記憶の戦いを思い出したのだろう――魔王ノブナガが、いかに緻密かつ大胆な知略で事に望んでいるかを悟った故の賞賛であった。
賞賛の
「このオレは何をすればよいのだ?」
そう問うた魔王はかつての戦いに
そこへ
「何も?――アーナダラス、あんたは彼女の全力に答えてくれればいい。そこから先は新しき世代の役目だ。」
旧知の友が宣言した言葉――明確にはそれを言葉としてはいない。
だが――そこに内包された意味を悟った
その瞬間――この【
かつて伝説と言われた魔界の法の頂点が、武者震いに打ち震える。
つまりはそういう事だ。
「その一押しが今か――
全てが算段済み――新世代の魔王は、伝説の魔王が出る間もなく事を終息させる気である。
その算段には、さらに後進――新世代の少女達の力と可能性すらも
取るべき対応を告げられし法の頂点――もはや武者震いに見開く鋭き
「いいだろう……。ならばその魔王の手腕――とくと拝見させてもらおうか。」
魔界の法の頂点と、【マリクト】が
――そう、何事もなくである。
そしてその頃――第三王女が収監された牢獄設備より、面会を終えた四大真祖の
戦闘行為における策とは――何も必ず攻め入らなければならないと言う事は無い。
重要なのは、攻めてくるかも知れないと言う気を張らせる事。
そしてその疲弊した相手の虚を突く事。
攻める気がなくとも、相手は攻め入られる事を想定して行動を取る。
陽動は戦略の基本――しかし魔界においては直情的な行動が好まれるため、その様な策を
だが――魔界、【
その策士がこの魔界へ残す遺恨の
目標を――反論決闘に関わる者へと定めて――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます