4話―4 技術を纏う者
天楼の魔界――
【勝利】のシンボルを持つその地はかつて、
【ネツァク】と呼ばれた大地が吸血鬼達の、決闘の舞台となる約束の日――その数日前に【マリクト】の魔王の元へ一人の男と、共に従う同行者らが訪れていた。
地球と魔界滅亡の危機を
太陽系全土に渡り、
「よう参られた!そなたがあの【
天下城キヨスの一郭――要人をもてなす客間へ、魔王謁見の許しを得た者らの代表者が座する。
多分に漏れぬ様相の和室――用立てられた座布団に
流石に
ただの和装ではなく、所々に派手過ぎぬ様
「はい、私が【
難しそうな顔ではあるが決して嫌味では無い、ツーブロックでサッパリとした茶髪。
まだやんちゃな風貌が抜けずとも、宇宙を股に掛ける超一級の企業を背負う稼ぎ頭――その青年が、成りは幼くとも強烈な威圧を放つ眼前の魔王へ
そのいささか行儀が良すぎる青年を、ジッと値踏みし言葉を
「お主……慣れぬ茶番は止せ。ワシが織田信長であると言う事を疑ってかかっておるのは察している。今日それについてはさておいてでも、持ち込んだ兵装の話が優先――お主の本性で当たってよいぞ?」
ピクリと眉を
なるほどと口端が少しばかり吊り上がるが、それでも魔王の御前ゆえ努めて冷静を演じる。
「――恐れ入ります。何ゆえこちらは、元々荒くれ者である者達をまとめる立場――常に相手の素を疑って掛からねば舐められます。この身に付いた性分が、公のお気に障った様であれば謝罪致しますので、それでご容赦願いたい。」
謝罪を言葉にしながらも眼光は緩まぬ青年に、魔王はかつて地球が日の本で天下を目指していた頃――海原で戦火を
おまけにこの青年――日の本海賊兵の中でも最強を誇りし、村上の血筋を継ぐ子孫。
すでに三神守護宗家より得ていた情報――その眼光に遠い昔の事にも関わらず、未だ衰えぬ村上水軍の
「ふむ、まあワシも主の様な者だと話甲斐がある。こちらもそちと同じ――魔界と言う場所も、疑って掛からぬと舐められる世界故にのう。」
思わぬ好敵手を相手取り、生き生きとする魔王。
戦国の世に帰ったかの様な口撃の応酬に、話が進まんと業を煮やした者――傍で成り行きを見ていた
「ええ~ゴホン!――殿、いささか悪ふざけが過ぎます。今はレゾン嬢が、これから歩む道――その手助けとなる力を早急に段取らねばならぬ時期。程々に願います……。」
いい所でと言う表情に舌打ち交じりで、魔王が眼光を逸らす。
子供の様に
この
目配せの先で村上の血を引く青年も、一先ず持ち込んだ兵装群の取引が優先は承知の上――企業マンとして魔王へ必要な
準備した携帯端末を起動――和室におおよそそぐわぬ立体モニターがいくつも浮遊し、それらを指し示しながら青年の口が淡々と言葉を刻み始める。
「それではこちらをご覧下さい。【マリクト】が現状必要としている諸々の兵装――そして、我等が技術の結晶。メガフロート
営業マン然とした青年が提示した、兵装群に含まれる巨大な戦艦――現在は魔界の花びらに位置する、国際宇宙港で受け入れを心待ちに停泊するその影。
それはあの地球と魔界滅亡の危機の際、王女テセラを支援するために三神守護宗家の指揮の元、地球の空を舞った魔導超戦艦【大和】に連なる船。
この魔王は、すでにその弐番艦の存在を宗家より知り得ており、あまつさえ自らの軍へ導入するための交渉を
地球側としても、魔界最高権力者【魔神帝ルシファー】を初めとした各魔王の力添えにより、両世界滅亡を回避出来た事には感謝の念に絶えない所。
多大なる感謝の意を現す御礼品――その一つにこの各兵装譲渡が含まれていた。
だが今回の地球側からの譲渡はこれだけに止まらなかった。
――それは、国の軍全体へ行き渡る兵装に
それも踏まえた彼――【
そして技術支援に含まれる件、吸血鬼レゾンが今手にしようとしている最強を越えた究極の力――その最終調整にも地球の技術者の協力を仰ぐ事となっている。
これはレゾンの使い魔ブラックファイアより、
「各兵装と【大和】型弐番艦【武蔵】、それらと吸血鬼レゾンの力の最終調整――そのために我ら【
地球より待ち望んだ品々――それらを【マリクト】が求めたのは、魔王ノブナガの
そこにチラつく言いようのない影の存在――レゾン襲撃を真祖の一人を
それが策であるならば、この先確実に策を必要とする程の狙いに向けて謎の影が動き出す。
魔王は良く似た行為を一時ではある――が、先の地球と魔界の滅亡の危機で目撃している。
これより何があろうとも一切の油断が許されない――今求める品々はそのための守りの要である。
「では
魔王の
「ふぅ……我々は古巣である黒い企業の様に、急ぐあまり重要な事を
事は数日後に控える【反論決闘】の行く末を――引いては吸血鬼の少女とそれを取り巻く少女達の命運すら左右する件。
かつて居た企業は自分達しか見えぬ、そのあまりの身勝手さで末端――最も重要な働き手達の尊厳を、長きに渡って
その家族経営の持つ闇に耐えられず、一族を担う身でありながらグループ本体と
その辿りついた先で、彼は真の職人集団の魂を見た。
磨かれた職人達が思いのままに職をこなす企業――それが三神守護宗家のお抱え技術者集団【
「
【反論決闘】において、赤き少女が心置きなく戦える様――そしてその後に訪れるであろう不穏の再来を
地球での戦いで三神守護宗家がそうであった様に、今この大地では【マリクト】が
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