あいさつ

 そういえば、「日本人だ」ということは伝えたが、名前を伝えていなかった。

さっき英語はなんとなく通じたようなので恐る恐る喋りかける。


「アイム、クワ、バ......ジン。」


日本人の名前は日本語母語話者でない人には解りにくい、と聞いたことがあったのでできるだけゆっくり喋った。


 するとまた相手は驚いたような顔をした。そして何かを早口で喋り始めた。通じてないことを察したのか、僕のしたように相手も自分の名前を伝えてきた。


どうやら「カトウセン」というらしい。そう言えば友達に「セン」ってやつがいたなあ……。日本人なのか!? 日本人なのか!? もしかしたらこの人、日系n世とかなのかもしれない......。

 だとすればここは、日系移民の多いハワイ、ブラジルなどなのかもしれない。でも、彼の使う言語は中国語のようだった。


じゃあ、ここって中国なのか? 


 そういえば、漢字とか東洋言語が好きな知り合いが「『中国語』と一口に言ってもたくさん方言があって、全然互いに分かり合えない。」とか「漢字には『異体字』といって普通の形とは違う字形がある。」って言ってたっけ。もしかしたらあの倉庫のような場所にあった箱の字は彼の言っていた「方言字」ていうやつなのかなあ。


そうだ、きっとそうに違いない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る