第2話 何の為に
僕は、とりあえず女性が残してくれたものを確認していた。荷物はいっぱいあり、用途がわからないものもあったけど、分類ごとに区分けしていった。武具は、長い剣が一つ、短い剣が一つ、小さな投げナイフのような武器が12本装備されたウェストポーチ、鎧のような防具に、手に装備できるような小さな盾、虹色の羽のが付いたブーツに、皮のような素材でできている手袋、以上7点。
食料は、皮の素材でできた水筒に水が二袋分、干し肉が一塊、チーズが一塊、袋に入った豆のような穀物が二袋分、パンが三本、3種類の調味料みたいな粉が小袋に一つずつ。量的に一週間くらいは食べていける量だろうか・・・
それ以外には、小さなテント、毛布、ランプ、鍋や器など・・キャンプ用品みたいなのがいくつかあった。
そういえばあの女性が黒い本を見ろとか言ってたな・・・
その本はカバンの奥に入っていた。でも・・これって何語で書かれてるんだろう・・日本語じゃないと読めないんだけど・・試しに本を開いて読んでみた。すると不思議なことに、何語かもわからない文字なのに、そこに書かれていることが理解できるのである。
『最初に』という項目に書かれている内容を読んでみる。そこにはこう書かれていた。勇者様が今、いる場所は、ロルバン地方のルイーデ遺跡と呼ばれる場所になります。この辺りはまだ聖なる力が多く残っている為、比較的安全に過ごすことができるでしょう。しかし、そこにいるだけでは魔王討伐など夢のまた夢。勇者様は魔物を退治しながら成長をしなければいけません。まずはその辺りに生息するグローパーと呼ばれる魔物を退治してレベルアップしてください。グローパーは緑で下記のような姿をしています。そこに書かれているのはイソギンチャクのような見た目のウニョウニョした生物だった。この魔物を倒してしばらくはレベルを上げるようだけど、今日はもう遅い、いきなりこんな状況になって疲れていることもあり、休むことにした。
ここは比較的安全という言葉を信じて、この遺跡付近を拠点にすることにした。テントを設置して、キャンプの準備をする。そしてその辺で木や枝を集めて火を起こす。火は道具の中にあった火打ち石みたいな道具を使えば簡単につけることができた。
鍋のような鉄の用具を火の上にかけて、そこに水とナイフで切り取った干し肉、豆のような穀物、そして調味料のような粉を適当に入れた。しばらくすると食欲をそそるようないい香りがしてくる。
「もういいかな・・」
鍋から器によそって、切ったパンと一緒に食べて見る。お腹が空いているのもあると思うけど、信じられないくらいおいしかった。一気にたいらげて落ち着くと、急にすごい不安感が襲ってくる。今、この状況と、先ほどの綺麗な女性の死を思い出す。ファンタジーゲームなどをやり込んでいる自分にとって、意外にもこの異世界展開は受けいれることができていた。しかし、気になるのは・・虚無の魔王に皆殺しにされている世界・・あの女性は確かにそう言った。そうすると人間はこの僕だけなんだろうか・・さすがにそれは寂しすぎる。
誰もいない世界で勇者をやるって、果たして意味があるんだろうか・・そしてあの女性・・どうして死んじゃったんだろう・・そんなことを考えていると自然と目から涙が溢れていた。
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