#8 オールストン帝国、そして姉妹

「えー、嫌だー。僕、王宮に戻りたくないー」


先程、王宮に仕えている男の人が僕たちが止まっている宿を訪ねて来て、王宮に来てくださいと言われたのだ。


「そうは言っても、あなたはお父様やお母様の護衛に選ばれたのだから、仕方のない事なんです」


「何で、僕なんだよぉ」


「ほら、早く行きましょう、優夜」


「はいはい。行きますよ、【ゲート】。ほら、早くこのワープゲートを通って、王宮へ行こうぜ」


「優夜って、本当に便利だね」


「どーも。僕は便利だけが取り柄な道具ですよー、だ」


「そんな事言ってないで、早く行くよ」


そう言って、アリシアは僕が作ったワープゲートを潜り、王宮の前へと移動した。


僕もそのアリシアに続いて、行きたくない王宮へと移動した。


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「それで、クリストファーさん。僕に護衛を任せるなんて正気ですか?」


僕とアリシアは今、王宮の最も奥にある部屋、王室の中にいる。


王室には、毛の立っている赤い絨毯に、シャンデリア、王様と女王様が座るであろう玉座が二つ並んでいた。


「優夜君には、私たちと一緒に隣国であるオールストン帝国に行ってもらいたいのだ」


「何をしに行くんですか?」


「同盟を持ちかけに行く」


「同盟かぁ。……聞きたいんですけど、何で同盟なんて結ぶ必要があるんですか?」


「近頃、魔物の活動が活発になっており、魔人王が復活するかもしれないのだ」


確か魔人王は、50年くらい前に倒されたはずなのだが、復活する間隔が早いような気がする。


魔人王が復活する間隔は、平均150〜200年までの間だったはずだが。


何かが起こっているのかもしれないな。


気をつけておこう。


「それで魔人王が復活するかもだから、今の内に戦力を補強しておきたいという事か?」


「あぁ、そう言う事だな」


「……分かりました。なら、早速行きましょうか」


と言うわけで、僕は護衛を引き受け、オールストン帝国に行く事になった。


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肩身がせまい。


今、僕が乗っている竜車には王族がみんな乗っている。


そんな中、唯の一般人であるこの僕が混ざっているのだ。


だがしかし、今は集中しておかなければならない。


何故なら、今僕はアリシアの新しい武器を造っているのだから。


失敗してはダメなのだ!


《スキル》【集中】を常時使用し、全神経を集中してから、【錬成】で鉱石の形を変形させ、良い形になったらその形で【錬成】を解き、固定する。


そして、その固定した鉱石を更に【錬成】で、アリシアの手にピッタリ合うように柄を変形させたら、また【錬成】を解き、固定する。


次は、更に固定した鉱石を【錬成】し、次は刃の形を整えていく。


アリシアの腰から足までの長さや、腕の長さに合うように【錬成】したら、また解いて固定する。


それでそこから【刃研】で刃を研ぎ、刃の斬れ味、鋭さを最大限まで上げたら、引き上げ、武器の持ち手である柄の部分にグリップテープを巻く。


そこで終わりでもいいのだけど、僕はそこから更に鉱石を【融合】させる。


……よし、完成だ。


アリシアの武器である細剣の基礎に使った鉱石は、この世界で最も硬いと言われているグラム鉱石で、【融合】に使った鉱石は、絶対に壊れないと言われているニウル鉱石に、殺傷能力を上げると言われているブラッディ鉱石に、絶対に溶けないと言われているティウル鉱石の四つの鉱石を使って、造り上げた。


そこでようやく僕は【集中】を解き、頭を上げるとみんなが僕を見ていた。


「えっ? 何? 僕、何かした?」


「何もしてませんよ。唯、優よろしくなが何をしているのかが気になったから、見ていただけです」


「それなら良かった。はい、これアリシアの為に造った武器だから受け取ってくれ」


「い、いいんですか?」


「うん、いいよ。それにこんな白い武器、僕には似合わないからね」


「あ、ありがとうございます!」


「もっと感謝してもいいぞ? この武器はこの世界にたった一つしかないし、アリシアにしか扱えない武器だからね」


「私にしか扱えない?」


「あぁ、アリシアにしか扱えない。アリシアの体を隅々まで調べ尽くし、腰から足までの長さとか腕の長さを考慮して造ったから、アリシアにしか上手く扱えない」


「私の体、隅々まで調べ尽くしたんですか?」


「うん、そう言っただろ」


「バ、バカ! お父様、お母様、もう私、お嫁に行けません!」


「え? 何で? その台詞って裸を見られた時に言う言葉だよね? 僕、アリシアの裸なんて見てないのに、何で?」


「え? だって隅々まで調べ尽くしたって」


「……ごめん、言い方が悪かった。僕が隅々まで調べ尽くしたのは、アリシアの《ステータス》と、さっきも言った腰から足までの長さと腕の長さだけだ」


「よ、良かったです。スリーサイズとか調べ尽くされていたら、もうお嫁に行けないところでした」


「お嫁に行けないなら、僕がもらうから安心して」


「……」


「あれ、どうしたんだ? 後、早く武器に名前を付けなきゃ」


「そ、そうですね! この武器の名前は、……ク、クラウ・ソラスにします」


「クラウ・ソラスか。いい名前だな!」


「着いたぞ。あれが、オールストン帝国の王宮だ」


オールストン帝国の王宮は、アルトリア王国の王宮と大きさはあまり変わりはないな。


外見もそこまで違ったところもない。


オールストン帝国の王宮に近づくほど、嫌な気がしてきた。


何か起こるんじゃないか?


帰りたいなぁ。


……はぁ。そんな事言っても、今更帰れるはずがないんだけどな。


それからしばらく走っていると、オールストン帝国の王宮の前に着き、竜車は動くのをやめた。


僕たちはクリストファーさんを先頭にし、王宮に入って行った。


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やっぱり、アルトリア王国の王宮と対して変わりはないな。


クリストファーさんと、オールストン帝国の皇帝が何やら話しているが、僕にはどうでもいい事だから聞かずに、周りをキョロキョロと見回した。


やっぱりここにもあるよ、シャンデリア。


眩しくて、目がチカチカするシャンデリア。


いい加減、LEDに変えてよ。


……前にも、こんな事言ったような気がするな。


玉座が二つあり、毛の立っている赤い絨毯。


何なんだろうな、この世界は。


オリジナリティが全くない。


……そんなもんなのかな。


そんな事を僕は跪きながら思った。


そして、「何で、優夜がここに居るんだよ!」そう聞こえた時には、僕の体は浮いていた。


蹴られて吹っ飛んでいるのだ。


そんな僕はすぐに玉座の奥にある壁へと衝突した。


僕は衝突して肺から空気が漏れ出しのたが、それを無視して、僕を蹴った人が誰なのかを確認する為、目を開けたのだが、視界の右側だけ黒色で塗りつぶされていた。


それもそうだろうと、僕はすぐに思った。


何故なら、僕の右目の眼球が潰れていたのだから。


だけど、左目だけで充分だった。


僕を蹴った人が誰なのかを確認するには、左目だけで充分だったのだ。


僕は眼球を失った右目を閉じ、左目だけでその人達を見て口を開く。


「どうしてお前達がここに居るんだ?」と。


「それは、こっちの台詞だ! せっかく、人殺しのお前と離れなれたと思ったのに、またお前は現れた」


「人殺しか。……違いないな。確かに僕があの時、あんな事をしなければ母さんは死なずに済んでいたのかもしれない」


でも、それをしなければお前達が死んでいた。


僕には選ぶ事しか出来なかった。


母さんの命か、妹と姉の命のどちらかを。


僕は選んだよ。


母さんとの最後の約束を守って、妹と姉の命を選んだよ。


「もう、死んでよ。お前なんかいらない」


そう言って姉と妹は、聖剣と魔剣を持って攻めて来た。


姉である優香ゆうかは聖剣を、妹である穂奈美ほなみは魔剣を持つ。


……僕は死んだ方がいいのだろうか?


ここで、避けなければ死ぬ。


どうすればいいんだろうか?


いくら謝っても、許してもらえるはずがない。


死んで、詫びる事ぐらいしか今の僕には出来ないんじゃないのか?


なら、死んでいいはずだ。


今の僕には死んでも悲しんでくれる人なんて……


「避けてーー!」


……いた。


まだ、僕には居るじゃないか!


僕を好きだと言ったアリシアが。


僕をこの世界に送り出してくれたディルナが。


「【瞬身】」


僕は聖剣と魔剣の攻撃を避け、「村正ムラマサ、出て来い!」そう言った瞬間、紫紺の刀剣、改め妖刀村正が人となり姿を現した。


「主人様よ、久しぶりじゃの」


「あぁ、久しぶりだな。でも、今は話す時間はない」


「そうじゃの、主人様よ」


「行くぞ! 村正!」


「了解じゃ」


僕は両手に【創造】で剣を創り出し、それを【強化】し、姉妹達に向けて走り出す。


村正は、妖刀村正を【複製】し、僕の後に続き、走り出す。


そして僕は走りながら【身体能力強化】、【鬼門法】、【激減】と唱える。


【鬼門法】 MPを使用し、全ステータスを5倍する。全身に痛みを伴う。


【鬼門法】により全身に生じるダメージは、【激減】によって75%減されているから、あまりダメージはない。


「ふっ!」


僕は姉である優香に斬りかかるが、聖剣で防がれ、受け流され、優香は詠唱を始める。


『悪を切り裂くのは/聖なる一閃/善を守るのは/聖なる火炎陣/【神聖火炎陣ホーリーネス・ブレイズ】』


こんな狭いところで、こんな魔法使うなよ!


「【九絵障壁ナインス・イーリアス】!」


僕はそう思い、MPが切れるほどの魔力障壁を展開し、【転移】と唱え、 僕は残り少ないMPで村正と穂奈美を僕の右側に移動させる。


MPを使い過ぎたせいか、僕の全身には今、青い魔力回路が浮かび上がっている。


僕が展開させた魔力障壁と優香が放った火と光の絶大範囲混合魔法が衝突する。


次々と魔力障壁が破られていき、最も魔力障壁を展開した数が少なかった僕のところは、最後の一枚となってしまうが、【MP《マジック・ポイント》回復】で回復していた少しのMPで僕は右手で【重力】を発動し空間を捻じ曲げ、魔法を反らし、そのおかげで僕の右側にいる村正と穂奈美には当たらなかったが、僕の左腕には魔法は当たってしまい、僕の左腕は無くなり、血液を噴き出している。


しばらくすると魔法は止まり、周りを見回すが、僕以外に被害者は居なかった。


「はぁ、はぁ。大丈夫か? 村正」


「儂は大丈夫じゃが、主人様が……」


「そう、だな」


「穂奈美! 今の内に優夜を殺せ!」


「……出来ません! 優夜は、お兄ちゃんはさっき、私を守りました! 私をここに移動させなければ、左腕は無くならずに済んだはずなのに!」


そう言って、穂奈美は僕に【癒光ルミエア・ヒール】をかける。


「いい、のか? 僕は、お前達の敵のはずなのに」


「それとこれとは関係ありません。今私が治癒魔法をかけているのは、さっき守ってくれたお礼です」


「そうか。ごめんな、僕がもう少し勇気があれば、母さんは死なずに済んだのに。母さんの約束なんか守らなければよかったのか、なーー」


僕はそう言って、意識を失った。




































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