#6 冒険者ギルド、そして決闘 ①

「へぇ。ここが冒険者ギルドかぁ」


僕は冒険者ギルドの建物の前に立ち、上を見上げたり、真正面を見つめながら言う。


「優夜。冒険者になるにはまず、職業を決めなければならないと思うのですが、どうしたらいいのでしょうか?」


アリシアめ、僕は冒険者ギルドの話をしてるのに、どうして職業の話をするのかな。


「……職業は何に就いてもいいと思うぞ。ディオスみたいになりたければ、【戦士】を優先的に育てたり、ルミアみたいになりたければ、【魔術士】を優先的に育てたらいいし、僕みたいになりたければ、全職を育てたらいいと思う」


「全職を育てるのって、相当な時間が必要ですよね」


「そりゃ、そうだろうな。僕は全職レベル最大にするまでに、二年かかったからな」


UWOの話だけどな。


でも、この世界の職業とUWOの職業には違いは全くなく、この世界の職業レベルの事を【知恵】で調べたのだが、UWOと全く同じシステムで出来ていた。


「うーん」


「悩んでるのか? 悩んでるなら、少しの間だけ最弱職の【冒険者】になってみたらどうだ?」


「どうして【冒険者】なんですか?」


「【冒険者】には、【冒険者】にしか習得出来ない《スキル》があってだな。その《スキル》の名前は【成長】と言って、その【成長】を習得するだけで、職業レベルが上がりやすくなるんだ」


「そうですか……。その【成長】って職業レベルがいくつの時に習得可能になるんでしょうか?」


「レベル10だよ。この世界の職業レベルは最大レベル100。だから、レベル10になるのは難しくはないと思うぞ」


「そうなんですか! じゃあ私、【冒険者】になります。そして、最終的には優夜と同じ戦闘スタイルでいこうと思います!」


「そうか。なら、冒険者ギルドに入るぞ」


「はい!」


そう言って、僕とアリシアは冒険者ギルドの中へと入って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


へぇ、こんな感じなのか。


……こんな感じなの?


明らかに女性の比率の方が高い気がするんですが?


男性が三割、女性が七割くらいでしょうか。


まぁ、それも当たり前か。


この街に入った時から既に気づいていたのだが、この世界の男性の比率の方が女性の比率より低いんだった。


少し悪い気はするのだが、【鑑定】で冒険者達のステータスを見てみよう。


……ふむふむ。


男性の方が、女性より《ステータス》が高いな。


これは、男性の冒険者一人に女性の冒険者が数人弟子入りしているって感じがするな。


取り敢えず、受付まで行こうか。


「アリシア、受付に行こう」


「はい!」


元気だなぁ、この子。


僕とアリシアは受付まで歩きながら、辺りを見回す。


そこで、ようやく気づいたのだが、この冒険者ギルドは酒場と併設していた。


だから、異様に人が多かったのかと一人で理解する。


「あの、冒険者登録してほしいんですが」と、受付の前に着いた僕は、受付員の綺麗な金髪ロングの女性に話しかけた。


「冒険者登録ですか? ではまず、名前を教えてください」


「僕は天野 優夜です。こっちの女性が……。おい、アリシア。フルネームで答えてもいいのか?」と、僕の名前を言い終えた後に、アリシアの名前を言おうと思ったのだが、アリシアは王族だから、名前は伏せておいた方がいいのかなと思い、アリシアに小声で聞いた。


「いいですよ。お兄様もお姉様もフルネームで登録してましたから」


「そうか? えーと、こっちの女性がアリシア=ネオン=アルトリアです」


「アルトリアって、あのアルトリアですか?」


「はい。あの、アルトリアです」


「分かりました。では、このステータスカードに血を一滴垂らしてください」


そう言われ、渡された針で指を刺し、血をステータスカードに一滴垂らした。


そうすると、ステータスカードは淡く光り、僕の名前、《職業レベル》、《ステータス》、《スキル》が浮かび上がった。


「少しステータスカードを見せてもらってもいいですか?」


「いいですよ」


僕は受付員の女性にステータスカードを渡したら、その女性は叫び始めた。


「ちょっ、急にどうしたんですか!」


「どうしたもこうしたもありません! どうしたら、こんな事になるんですか!」


受付員の女性はそう言って、僕のステータスカードのある部分を指差して、また口を開いた。


「この《職業レベル》のところを見てください! 全職のレベルがMAXになってるんです! それに、《スキル》だって全部習得してます! あなたは一体何者なんですか!」


「教えてもいいけど、誰にも話しませんか?」


僕はそう受付員の女性に言うと、その女性はコクコクと首を縦に振った。


「僕は異世界人なんです」


「そうなんですか! それなら納得出来ますね! こほんっ。では、ステータスカードをお返ししますね」


「では、アリシアさんのステータスカードも見せてもらっても構いませんか?」と受付員の女性はアリシアに言ったのだが、アリシアの返答は、「嫌」だった。


「そうですか。……では、冒険者登録して来ますので、少々お待ちください」と、少し肩を落としながら、ある部屋へと入って行った。


「おい、アリシア。『嫌』はさすがに酷いよ」


「だって、見せたくなかったもん。優夜にしか私のステータスカードを見せたくない」


……よっぽど《ステータス》が低かったんだろうなぁと心の中で思いながら、アリシアの頭に手を置いて、撫でた。


「なんですか?」


「いや、いいところに頭があったから、撫でてみようかなと、思っただけだけど」


「そうですか?」


「うん」


「ユウヤさんは、アリシア様と仲良いんですね」


「いつから居たんだ?」


「ずっと居ました。ユウヤさんがアリシア様の頭を撫で始めた時には、もう居ました」


「そ、そうか」


凄まじいステルス性能だな。


「冒険者登録しましたので、これを渡しますね」


「ありがとうございます。えーと、今更なんですが、あなたの名前は何というんですか?」


「まだ教えてなかったですね。私はルナ=エルリオンと申します」


「ルナさんですか。覚えました。それで、このプレートみたいな物は何ですか?」


「これは、冒険者の階級を示すものです」


「そうなんですか。……最後に一番上の階級って何か教えてもらっていいですか?」


「一番上の階級は、S級ですね。プレートの質はミスリルになります」


「分かりました。ありがとうございます。では失礼します」


一礼して、冒険者ギルドから出ようとしたのだが、止められた。


「おい、そこの新米冒険者。俺と勝負しろ!」


またこのパターンかよ。


「どうして、勝負しなければならないんですか?」


「勝負するのは、風習なんだから仕方ないだろ?」


絶対嘘だろ。


ユリアがいたら一瞬でバレるぞ。


「本当なんですか? ルナさん」


「ほ、本当です」


ルナさんはプルプルと肩を震わせながら、そう答えた。


絶対に脅されてたな。


はぁ、仕方ないなぁ。


「分かりました、勝負しましょう」


「よっしゃ! おいリンナ!俺が勝つところちゃんと見とけよ!」


こうして、僕はまた勝負に巻き込まれ、冒険者ギルドの地下にある闘技場へと連れて行かれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あー、嫌だなぁ。どうして僕がこんな観客のいる闘技場で勝負しなきゃいけないんだよ」


「おい、新米冒険者! お前の名前を教えろ!」


「人の名前を聞く前に、自分の名前を言ってください!」


「そうか? すまないな。俺の名前は、ロウガだ」


「ロウガさんですか。僕は優夜です!」


「ユウヤだな。ユウヤ、勝っても負けても恨みっこなしだからな!」


「はい、分かりました!」


「では、両者とも準備はいいですね! ……勝負開始!」


そうルナさんが言った瞬間、ロウガさんは走ってきた。


……早く終わらせよ。


「【瞬身】!」


僕は【瞬身】でロウガさんとの距離を一瞬で詰め、蹴り飛ばす為に足を出したのだが、【鉄壁】をロウガさんが使ったことにより、逆に僕がダメージを負った。


【鉄壁】 自分の体を、鉄の壁のように硬くする。


「痛ってぇ!」


マジで鉄の壁を蹴ったみたいに、ジンジンする。


「【身体能力強化】!」


次はロウガさんが全ステータスを強化し、攻めてきた。


ロウガさんは片手に持ってる大剣を振るい攻撃してくるが、僕は【危機感知】で対処しながら反撃するが、またもや【鉄壁】で防がれてしまう。


硬いな。


……どうしようかな、取り敢えずこの《スキル》を発動しておこうか。


「【風刃付与エンチャント・フェングレン】!」


僕は紫根の刀剣に、風を纏わせて殺傷能力を上げる。


それから「【瞬身】!」と唱え、一瞬で間合いを詰め、右斜め斬りする。


また、ロウガさんは【鉄壁】を使ったが、風を纏った紫根の刀剣の攻撃は防げなかったのか、傷がついた。


だが、傷がついた程度で、そこまでのダメージは与えられなかった。


この時ぐらいから、ざわざわと観客がざわめき始めた。


僕は戦いながら、聞き耳を立て話を聞く。


「おい、あのユウヤって奴。近接戦闘には必須の【身体能力強化】を使用してないぞ」


「あぁ、知ってる。しかも、【身体能力強化】を使用しているロウガと張り合ってるぞ」


そんな感じの会話をしている事が分かった僕は、戦闘に集中する事にした。


それから【風刃付与エンチャント・フェングレン】で殺傷能力を上げても、ダメージが与えられないなら、どうしようかと僕はロウガさんと剣を交えながら考える。


……この作戦でいくか!


僕は思いついた作戦を実行する為、準備を始める。






















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