#5 婚約、そして王族は皆強い?
今、僕たちは食事室にいる。
あの面倒だった勝負が終わった後、一緒に食事でもどうだと誘われたので、僕はその誘いに乗った。
食事室のテーブルはとても長く、その長いテーブルには、白いテーブルクロスがかかっている。
その長テーブルの上には、様々な料理が並んでいる。
流石、王族って感じの料理ばかりだ。
照明も勿論、シャンデリア。
いやぁ、慣れないね。
シャンデリアってね、光が強くて目が疲れるんだよ。
LEDに変えてくれよ。
頼むからさ。
……そんな事を考えても意味が全くないんだがな。
「優夜さん。食事は口に会いますか?」
「はい、美味しいです」
「そう言ってる割には、箸が進んでいませんけど」
箸が進むって可笑しいよね。
箸で食べてなくても、箸が進むとか、箸が進んでないとか言われるんだよ?
まぁ、どうでもいい事なんだけども。
「僕は一般市民なんで、こんなに豪華な料理って食べた事ないんですよ」
「そうなんですか?」
「はい。それに、僕は料理を作る側だったので、他人が作る料理を食べるという事に躊躇いを感じてるんです」
「男が料理を作るなんて変だ」
「ディオスは少し黙ってて」
いきなり会話に入ってくんなよ。
僕は一対一でしか会話が出来ないんだよ!
「優夜は料理人だったんですか?」
「そうだったらかっこいいんですけど、違うんですよね。僕は姉と妹にご飯を作ってた。それだけです」
「お姉さんと妹さんが居たんですか?」
「うん。まぁ、多分二度と会えないんだろうけどね」
「そうなんですか。……悲しいですか?」
「悲しくはないけど、いつでも会えてた人と会えなくなるのは、寂しいとは思うな」
ろくに会話なんてした事ないけどね。
僕はゲームをして、ご飯の時間になれば作って食べて、ゲームして、みんなが寝静まった頃にお風呂に入ってたから、全然会わなかったんだよね。
勿論、学校には行ってたよ。
学校はそこまで嫌いじゃなかったからね。
「そうですか。……でも、大丈夫です!」
「何が?」
「私がずっと側にいますから!」
「それはどういう意味?」
「言葉の通りです! 私は優夜にずっとついていきます!」
「ついてくるの?」
「はい! いいですよね? お父様! お母様!」
「いいんじゃないか? そろそろお前も結婚する相手を決めておかなければならないからな。優夜君なら、問題ない」
何が問題ないの?
「私もいいと思いますよ。優夜さんは、絶対にアリシアを幸せにしてくれると思います」
……これってさ。
僕の意思は尊重されないんですかね?
勝手にどんどん決められていくんだけど。
「優夜君。我が娘を頼むぞ」
「頼まれても困るんですが! 頼むってなんですか!」
「これからお願いしますね。
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ! まず聞きたいんですが、アリシアって何歳なんですか?」
「12歳です」
「ちなみにこの世界の女性が結婚出来るようになる年齢はいくつですか?」
「14歳です」
結婚出来るが年齢が14歳!
14歳っていうと、中学一、二年生だよね?
まだ、子供じゃん!
「お父様、お母様! アリシアと天野 優夜が結婚するなんて断固拒否します!」
「おぉ、もっと言ってくれ!」
「アリシアはまだ12歳です。でも、私は16歳です。順番的に私が天野 優夜と結婚するべきだと思います」
期待してたのと違った。
やっぱり僕が言うしかないんですね。
「勝手に話を進めないでください! まず結婚相手をそんなにぽんぽん決めていいんですか?」
「王族は異世界人と婚約し、結婚するのが当たり前なのだ」
「確かにそうかもしれませんが、結婚っていうのは、好きな人とするものです。好きでもない相手と結婚するというのは、ダメです。そうですよね? クリストファーさん! クリストファーさんは、好きでもないマリアさんと結婚したんですか? 違うですよね! 二人は愛し合っているはずです。それに、クリストファーさんもマリアさんも異世界人じゃないじゃん!」
「私は嫌いじゃないですよ?」
「嫌いじゃないと好きっていうのは、同じじゃないんですよ。例えばの話をしよう。もし僕が誰かに殺された場合、ルミアはどう思いますか?」
「別にどうも思いません」
「ぐっ。す、凄く悲しいですが、そうなんですよ! 女性が言う、嫌いじゃないというのは、どうでもいいっていうことと同じなんです。好きなら悲しむと思います。僕は好きでもない相手と結婚したいとは思いません!」
「そ、そうか。なら仕方ない」
「いえ、仕方なくないです! 私は
いい加減、諦めてよ。
「もういいよ。分かってるんだよ。僕が、異世界人だと分かった時から、あからさまに態度を変えてきて。何がしたいんだよ。言っちゃあ悪いが、僕は強くなんかないんだよ」
「優夜は強いじゃないですか!」
「そうじゃない。そうじゃないんだよ。異世界人ってさ、唯王族と結婚する為だけに召喚されたわけじゃないんだろ? 何か重要な役割があったんだろ? でも、僕は違うんだよ。何も役割なんて与えられていないんだよ。それがどういう意味か分かるか? 僕はいても、いなくてもどちらでもいいというわけなんだよ」
「その話のどこから、あなたは強くないと言い切れるんですか?」
「まだ、分からないのか? 僕は王族みたいにみんなをまとめれるような器じゃないし、すぐ嫌な事があったら、逃げる。僕は戦闘面では強いかもしれない。でも、精神面では弱いんだよ。そんな奴が、王族と一緒にいるどころか、結婚? アホか。僕は、お前たち王族と考え方が違う。最後にいい事を教えてやる。この世界に召喚されていた異世界人は皆、優秀な奴ばかりが召喚されていたんだ」
「何故、あなたにそんな事が分かるんですか?」
「《スキル》 【知恵】のお陰だ」
【知恵】 知識チートスキルである【叡智】の下位互換。この世界にある、書物ランクがB以下の物を閲覧可能。それ以上の書物ランクの物は閲覧不可。
「取り敢えず、もしこの国が大変になれば助けるけど、それ以外は一切関与しない。それでいいな?」
「あぁ。それで構わない」
「ありがとうございます。というわけでクリストファーさんのお許しを得たところで、言いたい事があります。僕、この国から出ますわ」
「この国から出て行ってしまうんですか?」
「出るよ。僕は別にこの国に思い入れなんてないからね」
「だったら私、ついていきます」
やっぱり、こうなるのか。
……もう諦めよう。
「せっかく、王族と関係を断とうと頑張って演技してたのに、これじゃあ無意味じゃん! ……クリストファーさん、マリアさん! これからもよろしくお願いします!」
「全部、演技だったんですか?」
「当たり前じゃん。僕はそもそも人との関係をあまり切るタイプの人間じゃないからね」
「良かったです。優夜が怒ってしまったのかと思って、少し怖かったです」
「だからと言って、僕は結婚するなんて言わないからね! 本当に結婚したいなら、僕を惚れさせてみろ!」
「はい、頑張ります!」
こうして、僕の演技は無駄に終わり、アリシア、そしてルミアの二人と婚約という形で終わりを迎えた。
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「本当にいいんですか? こんな大金貰っちゃっても。それに、アリシアを冒険者にするって本気ですか?」
僕がクリストファーさん達から貰ったお金は、聖金貨50枚だ。
この世界のお金を日本円に直すと、下から銅貨が一円、聖銅貨が十円、銀貨が百円、聖銀貨が千円、金貨が一万円、聖金貨が十万円となる。
つまり、僕はクリストファーさん達から五百万円貰った事になる。
「本気だ。もし、アリシアが危険なら優夜君が守ってくれ」
「分かりました。なら、行きますね」
「お父様、お母様、お姉様、お兄様、ユリア、行ってきます!」
そう言ったアリシアは一礼し、僕とアリシアはみんなに見送られながら、王宮の門の外へと出て行った。
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「あのさ、アリシア。今思ったんだけどさ、王族って、みんなディオスみたいに強いのか?」
僕はずっと思ってた疑問を口にした。
「そうですね。異世界人の血を色濃く受け継いでいる人は強いです」
「アリシアはどうなんだ?」
「私が受け継いでいる異世界人の血はとても薄いので、私は強くないです」
「へぇー。そんなもんなのか。ユリアは強くなりそうだよな」
「はい。私より強くなると思います」
「もし敵だったら、魔眼がとても厄介だよな」
「え? 優夜、ユリアの敵になるんですか?」
「違うよ。例えばの話だよ」
「そうですか、良かったです。もし、優夜がユリアの敵になってしまったら、私どちらの味方をしたらいいのか分かりませんでした」
「大袈裟だなぁ。そういう時は、どちらの味方にもならない。つまり中立の立場が一番いいんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。……あ、今の内に言っておくわ。僕、まだ本気出せないから、もしかしたら守りきれない可能性があるから、その時は自分で自分の身くらい守ってくれよ」
「お兄様と戦ってる時、本気じゃなかったんですか?」
「本気が出せなかったと言った方が正しい。それに、ディオスだって本気出してなかったし」
「まだ本気じゃなかったんですか! お兄様と優夜はどれだけ強いんですか!」
「まぁまぁ、落ち着け。興奮するな」
顔を真っ赤にして、目をキラキラさせてるアリシアを落ち着かせる。
「落ち着いたか?」
「はい、すみません」
「アリシアって結構可愛いよな」
ん? 僕、さっき言った事と言いたかった事が違った気がするんだけど。
「あわわわわ、か、可愛いだなんて、照れてしまいます」
やっぱり違う事言ってたわ。
僕、本当はバカだよなと言おうとしたんだけど、可愛いよなと言ってしまったようです。
まぁ、間違った事は言ってないんだけどさ。
取り敢えず顔を真っ赤にしているアリシアを落ち着かせる為に「アリシア、落ち着いて」と言って、落ち着かせようとしたのだが、「無理です。こっち見ないでください」と言われた。
そして、しばらくした後、始まりの街 ティフォンに着いた。
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