#3 昔はあった異世界召喚、そして王宮
「あの、こんな事してMP《マジック・ポイント》切れ起こさないんですか?」
いやぁ、まさか転移1日目で王女に会えるとは思わなかったなぁ。
「聞いてますか?」
しかも、王宮の中にまで入れるとは思わなかったなぁ。
「聞けよ」
「はい。(女は怖いね)」
「もう一回言いますよ。こんな事、いいえ、こんなに連続で魔力障壁を展開してMP切れ起こさないんですか?」
アリシアが言っている魔力障壁とは、《スキル》、【
【
「大丈夫だよ。僕はこの魔力障壁を展開しながら、【MP《マジック・ポイント》回復】でMPを補給しているからね」
【MP《マジック・ポイント》回復】 世界に溢れる程ある、自然エネルギーや霊的エネルギーを体に取り込み、MPに変換する。
「そうなんですね。やっぱり優夜は凄いです!」
「そうか? 僕より凄い人は沢山いるだろ?」
「確かに沢山いました」
「沢山いました? 何で過去形なんだ?」
「この世界には、昔はあったんです。異世界から人を呼び出すという儀式が。でも、その儀式は後世に語り継がれなくなり、徐々にその儀式が無くなっていったんです。今、その儀式がある国はほとんどないんです」
「どうして語り継がれなくなったんだ?」
「その異世界から来た人は、尋常ならざる力を持っていたんです。そしてその異世界から来た人、異世界人は国と国との戦に利用され、次々と国々が滅んでいったんです」
「それで、国々が滅んでいく中、異世界から人を呼び出す儀式を知る者達が死んでいったから、語り継がれなくなったという事か?」
「はい、そうです」
「でも、異世界から人を呼び出す儀式が少なくなった事により、国と国との戦が無くなったんじゃないか?」
「確かにそうなんですけど。異世界人が少なくなるとまた別の問題が発生するんです」
「どんな問題なんだ?」
「我々王族は、その異世界人と婚約し結婚するのが当たり前なんです!」
「それだけ?」
「それだけです」
「別に異世界人じゃなくてもいいんじゃないのか?」
「確かにそうなんですが、色々あるんですよ、王族にはね」
「へぇー。まぁ、この話はもうやめようか。もう、王宮に着きそうだ」
「もう着くのですか。早いですね」
「そんなもんじゃないのか?僕達、空を走ってるわけだし」
空を走ってるを正確に言うと、空中に展開した【
「よし、降りるぞ」
「はい。ってキャーーーーーーーーーー!」
僕は展開していた【
「アリシアうるさい」
「だって急に落ちるから! 怖かったんだもん」
「うん、知ってる」
だってアリシアは今、僕の服を力いっぱい握ってるし、目を瞑ってるから、見ただけで分かる。
そして地面に衝突する瞬間、「【
【
空を乱す程の突風で敵を吹き飛ばす。
「大丈夫か?」
僕はお姫様抱っこをしているアリシアに言う。
「大丈夫なわけないじゃない。死ぬかと思いました!」
「それは良かったです」
「何が良かったんですか! お父様に言って、死刑にしますよ!」
「ごめんなさい、調子に乗りました」
僕は土下座をして謝った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えーと、ここは?」
「お母様の寝室です」
「何でこんな所に?」
「お父様はこの部屋にいつもいるので」
「そうなの?」
そう言いつつ、僕は寝室を見渡す。
僕が思っていたのとは違って、この部屋は豪華ではないのだが、お金が沢山使われていて、気持ちが落ち着く部屋になってるなぁと思った。
三人ぐらいなら一緒に寝る事が出来る大きなベッドに、大きな机、タンスなどが沢山ある。
このベッドにはアニメなどの二次元でしか見た事のないカーテンがかかってあった。
この王宮はとにかく凄い。
庭もエントランスもこの部屋も凄い。
凄いとしか一般市民の僕には言えない。
庭には沢山の薔薇が咲いていて、その薔薇が壁となり道を作ってて何より広かった。
エントランスも広く、赤い絨毯が敷かれており、豪華なシャンデリアが天井に吊られていた。
「それで、どうしていつもこの部屋にいるの?」
「お母様は目が見えないの」
「目が見えないのは、いつ頃か分かる?」
「生まれつきだって言ってたよ」
「そうか。……じゃあアリシアの母さんは、アリシアを見た事が無いって事なのか」
「はい」
アリシアは顔を暗くし、うなづいた。
こんな顔されたらさ、治したいのはやまやまなんだけど、元々目が見えないんじゃ、治せない。
「取り敢えず行こうか」
僕たちはドアの前から移動し、アリシアの母さんが横になっているベッドに近づいていく。
「お父様、お母様。只今戻りました」
「ご苦労だったな、アリシア。それで、結果はどうだった」
「ダメでした」
「そうか」
「で、でもお父様! 優夜らお母様の目を治せるかもしれません!」
え? 何これ? 僕目なんて治せないよ?
「本当か!」
「はい!」
「なら、早速悪いんだが優夜と言ったかの。マリアの目を治してくれ。……頼む」
えぇぇぇぇぇ!
アリシアの父さんって事は、この人王様だよね?
僕、そんな人に頭下げさせてるよ。
「は、はい! 分かりました。 ……あの、お手数ですが部屋の外に出て欲しいんですが」
「あぁ、分かった。アリシア、行くぞ」
「はい、お父様」
そう言って二人は部屋から出て行った。
出て行ったのだが、どうしよう。
「あの、マリアさん。目が見えないのは生まれつきですか?」
「はい、そうです。……あの、優夜さん。無理なら良いんですよ? 私の目は、どんな凄腕の医者や、魔法使いでも治せなかったんですから」
「でも、嫌じゃないですか? 自分の子供達や旦那さんが見えないのは」
「それは、そうですけど。子供達やクリストファーの声を聞けるだけで私は満足してるんです」
「ほ、本当にそんなんで良いんですか! そんなの、マリアさんが満足してるだけじゃないんですか? アリシアやクリストファーさんはどう思ってるのか、マリアさんには分かってるんですか? ……すみません、言い過ぎました」
「いえ、その通りです。私は諦めてるんです。……でも、治るなら治して欲しいです」
「なら、治しましょう。治す事は出来ませんが、新たに眼球を作る事は出来ます。それは、痛みが伴うかもしれません。どうするか、それはマリアさんが決めてください」
「お願いします、優夜さん。私にあの子達の顔を見せてください」
「分かりました。なら、いきますよ」
僕は【激減】をマリアさんにかけ、マリアさんの細胞を取り、その細胞を【細胞複製】を使って培養し、培養した細胞を【加工】を使って眼球を作り、マリアさんの眼球を抉り取り、すぐに作った眼球を【接着】で視神経と繋げ、【
【激減】 体にかかるダメージを75%減らす。
【細胞複製】 細胞を培養する。
【加工】 原料から新しい物を作る。
【接着】 何かと何かを引っ付ける。
【
最初この《スキル》を見つけた時、こんな《スキル》いつ使うんだよと思ってたんだけど、まさかこんな時に使えるとは思わなかったな。
このマリアさんの眼球、どうしよう。
【アイテムBOX】の中に入れておくか。
「マリアさん? 大丈夫ですか?」
「はい。痛みはありましたが、耐える事の出来るくらいの痛みでしたので」
「では、マリアさん。目を開けてください」
「はい」
マリアさんは少しずつ目を開けていく。
そして、完全に開かれた時、マリアさんは涙を流した。
「見えます、見えますよ。優夜さん!」
「良かったです」
こうしてマリアさんは、自分の子供達の顔を見る事が出来、アリシアやクリストファーさんは喜んで、めでたしめでたしと終わると思ったのだが、そうはいかなかった。
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