#2 初戦闘、そして第二王女
「えーと、地図を見る限りこの森を抜ければティフォンに着くな」
【スマートフォン】の標準アプリとして、地図がインストールされていたのだけど、最初はよく分からん文字で書かれてたり、日本の地図がそのままだったりしていたけど、僕が何とかこの世界の地図にし、文字も日本文字にした。
これくらいディルナがしてくれても良かったんじゃないかと思ったのだが、僕はあえてこう考えた。
これくらいは自分でやれよと、この期に【スマートフォン】の機能を覚えろと。
そう思ったので、【スマートフォン】の機能を覚えたのだが、これまた【スマートフォン】が優秀過ぎた。
【スマートフォン】の元々の機能である、電話やメール、ライトなどの他に、異世界の文字を日本語に翻訳出来たり、自分が習得している《スキル》の一覧とその効果が見る事が出来た。
何より、ネットが使えるのと自分でアプリをインストール出来るのが凄いと思った。
まぁ、これより凄いのは、ちゃっかりディルナの電話番号とメールアドレスが追加されてた事だな。
そんな事言ってるけど、ここまででもうかなりの距離を歩いてきたから、精神的にも身体的にも疲れが溜まってきた。
幸いにも魔物には遭遇しなかったが、もし遭遇していたら、僕はまだここには辿り着けていないだろう。
「さて、行くか」
僕はそう言い、森の中へと入って行く。
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しばらく歩いていると《スキル》、【魔力感知】が反応した。
【魔力感知】 自分を中心とした半径30メートル圏内に入っていれば魔力を感知出来、半径20メートル圏内に入っていれば魔力を持つ生命体がどれだけいるのかが分かり、半径10メートル圏内に入っていれば魔力を持つ生命体が何なのかが大まかに分かる。
今、【魔力感知】で感じ取れているのは魔力を持つ生命体がどれだけいるのかが分かっている。
だから、魔力を持つ生命体と僕との距離は、半径10メートル以上、半径20メートル未満という事だ。
それで、【魔力感知】で感知出来た魔力を持つ生命体の数が10を超えている事に対しては別に可笑しい事ではないと思うのだが、その魔力を持つ生命体は動きを止めていたので、どうしたのかと思い、僕は【魔力感知】で感知出来た魔力の方へと歩みを進めて行く。
それからしばらく歩いていると、馬車らしき物が倒れているのが見えた。
何故、馬車らしき物と言ったのかというと、僕がいる木陰から、馬車らしき物が倒れている所まで、約10メートルは離れているからだ。
僕は木陰に隠れながら【遠見】で、その馬車らしき物が何なのかを確認する。
僕が馬車らしき物だと言っていた物は本当に馬車で、その馬車の近くに人が倒れているのと、狼型の魔物が10体程と、その狼型の魔物と戦っている男の人が二人確認出来た。
僕はそれを確認出来た瞬間に駆け出しており、今僕がいる場所とそれらの場所との距離は数メートルまで縮まっていた。
それで今の僕は走りながら狼型の魔物を【鑑定】で詳細を調べている。
えーと、何、何?
ブラッディ・ウルフ Lv2
特性 人間の血液を摂取すると、《ステータス》が上昇する。
群れを為している場合、戦わないのが吉。
……もう遅いよ。
調べるのが遅いよ。
もう僕、ブラッディ・ウルフに刀剣を振り下げてるよ。
ザクッ!
僕が振り下げた刀剣は、ブラッディ・ウルフの骨を断ち切り、背中から腹までを真っ二つにした。
そのブラッディ・ウルフは、吠える事も出来ずに絶命し、血液をそこら中に撒き散らす。
残りのブラッディ・ウルフの数は、11体。
数は僕より明らかに多いのに、負ける気がしない。
体の動かし方はUWOと似ているのも関係あると思うが、装備が優秀過ぎて、安心しながら戦う事が出来るのが大きいと思う。
元々、ブラッディ・ウルフと戦っていた男の人は、戦意を無くし、只々突っ立っているだけとなっていた。
だが、それは僕にとっては好都合だ。
それは何故かと言うと、ブラッディ・ウルフの敵意は完全に僕に向いているのに、下手に攻撃なんかされると、敵意がその男の人に向いてしまうのと、その男の人がただ単に邪魔にしかならないからだ。
ブラッディ・ウルフは僕を一斉に攻撃をし始めたが、僕はその攻撃を刀剣で受け流したり、避けた。
ブラッディ・ウルフは勉強しないのか、当たりもしないのに、何度も何度も同じ攻撃を繰り返す。
それを僕は避け続けていたが、そろそろ倒す事にした。
右から来たブラッディ・ウルフは横に薙ぎ払い、左から来たブラッディ・ウルフは、【
【
弱いなと思った僕は【瞬身】を使い、残りのブラッディ・ウルフを首を胴体から切り離したり、的確に魔物の心臓である魔石を狙い壊して一気に絶命させた。
全ての魔物を倒した僕はふぅ、と溜息を吐き、戦意を無くしていた男の人に「大丈夫ですか?」と声をかけるが、その男の人は口をパクパクさせるだけで、返事をしてくれなかった。
どうしようかと悩もうとしたのだが、その必要は無かった。
「あの、助けてくれてありがとうございます。私はアリシア=ネオン=アルトリアと申します。あなたの名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「僕の名前は天野 優夜。天野苗字で、優夜が名前ね。えーと、アリシア、アリシアさんはどこかの国の王女さん?」
「はい。私はアルトリア王国の第二王女です。優夜さんは、ヤマトの出身の方ですか?」
「ヤマト?」
「ち、違うのですか? 名前の感じからそうなのかと勝手に思ってしまってすみません」
「謝らなくてもいいよ。それで、アリシアさんはどうしてこんな所にいるのか聞いていい?」
「優夜さん、私の事はアリシアとお呼びください」
「じゃあ、僕の事も優夜と呼んでくれ」
「はい! それで、私がどうしてこんな所にいるのかというと、隣国のオールストン帝国に行ってたんですけど、今は帰って来る途中だったんです」
「それで帰って来る途中に、ブラッディ・ウルフに襲われたという事か?」
「はい、そういう事です」
「で、どうやって戻るの? もう馬車は使えないよね」
「……どうしましょう」
「取り敢えず、そこのずっと突っ立ってる男の人をどうにかしないと」
「放っていて大丈夫ですよ」
「本当にいいの?」
「はい。大丈夫です」
「そう? なら、王宮へ戻るか?」
「帰れるんですか?」
「大丈夫だと思うよ。場所さえ分かればね」
そこからは王宮の場所を教えてもらい、ある方法で王宮へ帰る事にした。
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