過保護で幼女な女神に送られ異世界最強

神無月 月詠

#1 全職レベル最大、そして異世界転移

2025年、VRMMORPG《バーチャル・リアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム》の最新作、UWO《アンリミテッド・ワールド・オンライン》が発売された。


そして僅か数週間で、ある噂がネットで流れた。


ゲーム内の職業を全てレベル最大にしたら、異世界に転移出来るという噂が。


だが、その噂を信じる人は誰もいなかった。


しかし、ある時一人の青年はそれを確かめる為。二年かけてようやく全職業をレベル最大にした。


そして、その青年は突然姿を消した。


その青年が突然姿を消した原因、それは異世界転移だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕は【天野あまの 優夜ゆうや】、16歳、高校生だ。


俺はさっきまでUWOで全職をレベル最大にする為に頑張ってたんだけど、今俺は見知らぬ場所立っている。


何もない場所、ずっと真っ白な空間が続いてそうな感じがする。


UWOが発売されたのは2025年、今は2027年。


つまりこれが噂に有った異世界転移なら、二年で全職をレベル最大にした事になる。


課金はしてないが、毎日寝る間も惜しんでUWOをプレイしていたなぁ。と、今はそう思う。


で、これってどうしたらいいんだろう。


一生このままってわけでは無いと思うのだが、既にここに来てから数時間は経っている。


しかし、ここでようやく変化が訪れた。


「ご、ごめんなさーい。少し遅れちゃいました!」と言いながら走ってくる女性が現れたからだ。


少しじゃないけどな、数時間は経ってるけどな!と言いたかったのだが、それは抑えて「あなたは?」と問いかける。


「わ、私は、そのディルナです。一応女神と呼ばれてます」


……これが女神なのか?


どう考えても唯の幼女にしか見えないのだが。


銀髪で黄色い瞳で、小さな体にぺったんこな胸。


これのどこが女神なのだろうか。


まぁ、いいか。


「それでディルナは何の為にここに来たんだ?」


「い、いきなり呼び捨てにしないでください。……あわわ、呼び捨てが嫌なわけでは無いんですけど、あの、その……」とモジモジしながらディルナは言う。


「あの、その……、何?」


「と、とにかく呼び捨てにしていいのは、もっと仲良くなってからです! それで、ここに私が来た理由はあなたを異世界に転移させる為です」


……。


「えーと、あなたの名前は……あっ、思い出しました!ゆーく、天野 優夜君!」


……。


「えーと、優夜君、おめでとうございます!UWOの職業を全てレベル最大にしたあなたは異世界に行く権利が与えられました!」


……。


「そして優夜君には異世界転移特典として、最初から異世界のスキルを全て習得済み、なおかつスキルレベル最大になっております!」


……。


「……あの、どうしたのでしょうか?」


「いや、別に大した事じゃ無いんだけどな。僕、昔ディルナと遊んだ事があるんじゃないかと思ってな」


「そんなわけないじゃないですか。そんなわけ……」


「ま、別にいいんだけどね。僕がディルナと遊んだ事があるのか、ないのかとか別にどうでもいいんだよね」


「……むぅ。じゃあ、最後にこの中から最後に一つだけ選んでください。一度選んだ物は変えられませんからね」


少し頰を膨らませてから、そう言って、ディルナは何もない場所から紙を取り出し、渡して来た。


その紙には魔剣や聖剣などのチート武器の名前や、【魔力無限】などのチートスキルの名前が書かれていたのだが、僕はそんなチート武器やスキルが書かれている紙じゃなくある一つの物の名前が書かれている紙に目が行った。


そのある一つの物の名前とは、【スマートフォン】。


多分何だけど、この【スマートフォン】は異世界でも使えるように改造されている物だと思う。


そうじゃなければ、チート武器やチートスキルの中に混ぜるわけがない。


……決めた。


「僕はこの【スマートフォン】を選ぶよ」


「本当に【スマートフォン】でいいんですか?」


「何で聞き返すんだ? 一度選んだ物は変えられないんだろ?」


「……はい。あの、優夜君! 【アイテムBOX】の中に少しのお金と、装備を入れておきます」


「ありがとう」


「それでは優夜君、異世界での生活がより良いものになる事を願っています」


そう言い終わったディルナは微笑み、僕を異世界へと飛ばした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕は目を覚まし、辺りを見回す。


僕が眠っていた場所にだけ木が生えているのと、一本だけ道があるだけのを除くと、後は緑が一面に広がっているだけだった。


これからどうすればいいんだ? ……取り敢えず一番近い街に行けばいいかな? でも、道が分からないんだよなぁ。


地図、地図があれば……、あ、【スマートフォン】には地図機能があるはずだ。


そう思い【スマートフォン】を探したのだが、どこにもなかった。


……あれ? 無いんだけど。


そういや、少しのお金と装備は【アイテムBOX】の中に入れておくって言ってたから、もしかしたら、【スマートフォン】もその中にあるのかも。


……どうやって【アイテムBOX】を開くんだ?


取り敢えず、【アイテムBOX】と口に出してみようか。


「【アイテムBOX】!」


そう言った瞬間、目の前にアイテム欄が表示された。


おっ? あった、あった。


僕はアイテム欄から【スマートフォン】と書かれている文字をタップした。


そうすると手には【スマートフォン】が握られていた。


一応装備もしておこうと思い、アイテム欄から装備の名前が書かれている文字をタップしたら、自動で装備された。


便利なものだなぁと心から思った。


今、僕が装備してる防具は黒いジャケットに黒いTシャツ、そしてズボンだけなのに、魔法攻撃ダメージ75%減、物理攻撃ダメージ75%減、斬撃ダメージ75%減されている。


そして武器の方は紫紺の刀身の刀剣なんだけど、これもまた性能がいい。


何故なら斬れ味が落ちない、壊れない、属性付与可能武器、持ち主が成長すると、武器も並行して成長するからだ。


ディルナはこんなに性能の良い装備を与えて、何がしたいんだと思ったのだが、僕はある事に思い至った。


それは僕が【スマートフォン】なんて選んだから、ディルナは心配してこんなに性能の良い装備を与えたんだと。


僕はなんて過保護で幼女な女神に出会えたのだろうと心から思った。


それから僕は【スマートフォン】をズボンに付いているポケットの中に入れて、歩き始める。


始まりの街であるティフォンに向けて。





















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