第2話
母を殺したのは友人。そう断言したのは、小学四年生の少年だった。
名前は今野朔太。母子家庭の一人息子。年齢より幼く見え、手足は異様に細かった。手の甲の円状の火傷跡や袖からたまに見える青痣で、捜査資料を見ずとも少年が虐待されていることは明らかだった。髪は、前髪だけが長く後ろは乱雑に切られていた。
事件があったのは昨日の夜、二階建てアパートの二階で起きた。発見したのは隣の部屋に住む中年女性。泣きじゃくる子供の声がしたので外に出てみると、隣の玄関が開けっ放しになっていた。中を覗いてみると、血塗れの母親を抱きかかえた朔太がいた、という。慌てて警察に連絡。警察が来るまでに血塗れの朔太の手を洗い、着替えさせた。警察が来ても泣きわめく朔太に戸惑ったが、少ししたら泣き疲れたのか署に向かう途中で車内で寝てしまった。
起きたのは翌日。昨日の態度が嘘だったかのように、少年は大人しかった。仮眠室で目を覚ました朔太を、使ってない会議室に連れていってから軽食を食べさせた。黙々と食べる様子は、いやに大人びていた。
「気分はどうだい。落ち着いた?」
「うん」
「それはよかった」
食べ終えて、ご馳走さまでしたと小さな唇が動く。行儀のいい子だ、と思った。
捜査一課の高坂匡は、朔太の隣に座った。
「刑事さん」
「高坂でいいよ」
「お母さん、死んじゃったの?」
今にも泣きそうな表情で、高坂を見上げた。嘘をつくわけにはいかないので、正直に答えた。
「残念だけど…」
「…死んじゃったんだ」
「朔太くん、昨日のことで思い出せることがあれば教えて欲しい。お母さんを傷つけた人を探したいから」
朔太は縦に首を振った。
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