ヒラカズ

甲藤

第1話

覚えているのは、お母さんの背中が真っ赤だったこと。前屈みになってて、呼んでも動かなかったこと。

「他に覚えていることはあるかい?」

どうすればいいかわからなくて泣いてたら、隣のおばさんが来てくれた。それから警察を呼んでくれた。

「それから?」

お母さんに触って血で汚れてたから、おばさんが洗ってくれた。着替えを用意してくれた。警察の人が来てくれるまで一緒にいてくれた。

「じゃあ、隣のおばさん以外は誰もいなかったんだね?」

うん。でも、おばさんが来る前までヒラカズがいた。

「ヒラカズ?」

うん、友達なんだ。

「友達はどんな人?」

外人さんみたいな見た目で、いつも公園で遊んでくれた。

「そのヒラカズ君はどこに行ったかわかる?」

わからない。逃げちゃった。

「なんで逃げたのかな?」

お母さんを殺したから。

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