第3話



 夜、たまたま眠れなかったユウは割り当てられている部屋を出て、休憩室に居た。

 そこでぼうっとしていたら、エリザがどこかへと向かっていくのが見えた。


 人目を気にしながらこそこそしている。

 気になったユウは後を付けて行った。


 辿り着いたのは、建物の屋上だった。

 立ち入り禁止となっている区画の向こう。

 狩猟犬では情報の漏洩や、脱走防止のため、外に繋がる扉は許可なく出入りできないのだ。


エリザ「ここの扉、セキュリティが壊れてるみたいなの。だから息抜きに出て来ちゃった」

ユウ「重大な規則違反だ。通報する」


 持ち歩いていたデバイスで通報しようとするが、エリザに止められる。


エリザ「悪い事は叱られなきゃ駄目よね。でもその前に見て、この景色を」


 促されてユウが屋上から見たのは、夜景だった。

 宝石の様な夜景。

 任務で見た事はあるが、他に優先すべき事が無い状況でのんびり見たのは始めてだった。


 綺麗だった。

 ユウはしばらくその光景に見とれていた。


エリザ「狩猟犬にいる私たちは、皆孤児だわ。生き方を他に知らないから、ここにいるしかない。でも、人は自由よ。望めばどこへだっていける」


 エリザはこちらを見つめて言う。


エリザ「ここにいる人たちも、貴方も自分の生き方もあり方も、どうか決めつけないで」


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