第8話 浦澤神奈

さて、昼休みになった。確か屋上に呼ばれたんだよな。誰か知らんけど。


「じゃ二人とも、行ってくるわ。」

「いってら。」

「行ってらしゃーい。」


羽島と平山に声をかけてから行く。ちなみに紗羅は本を読みながら昼食を食っている。器用だな。

教室から出ようとしたとき、羽島たちの談笑が聞こえ........


「.....テレビのリモコンがなくなってさ。そんとき思ったんだよ。『大切なものは、なくなってから大切だって気付く』という事をさ。」

「そうなんだー。」

「.................」


.........た。







「っ........」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







やっとの事で屋上に着いた。ドアを開けると、一人の女子生徒が居た。すらりとした足。少し青みがかった髪。そして、可愛らしい顔立ち。羽島が絶賛するのもわかる気がする。

その女子生徒はこちらに気づくと、少しふてくされた顔でいった。


「もう〜十分たったから来ないのかと思いましたよ。」

「はぁ.....」


いきなり呼ばれたんだからしかたないだろ。って言いたかったけど、面倒くさいので言わなかった。そんなことより、


「あんた、誰だ。なんで呼び出したんだ?」

「誰だ、っておぼえてないんですか?」


そう言われても、記憶にない。


「入学式の日に助けてもらった人です!名前は浦澤神奈です。」

「....ああ、あん時の。」


思い出した。そういえばそうだった。


「それで、あんたは何の用だ?」

「あの時は言えなかったけど、本当にありがとうございました‼︎」


浦澤は深く頭を下げる。


「助けてもらえなかったらどうなってたことか、想像しただけでゾッとします!」

「そうか、じゃあな。」


お礼を言うためにつれてこられたらしい。まあ、もうお礼されたから用はないな、と自分はそう捉えて帰ろうとした。だか......


「ちょ、ちょっと待ってください!」

「なに」

「助けてもらったお礼なんですが、受け取ってください。」


そう言って渡されたのはお菓子だった。手作りか?


「早速食べてください」

「いや、後で....」

「今、食べてください!」


この子意外と強情だな。


「はぁ.....」


食べろと言われたのでとりあえず食べた。

........なんか、甘すぎるような。不味くはないけど、かと言って美味しいとも言えない。


「どうですか?」

「....まあ、普通だな。」


ちょっと失礼な言い方だったか?けど、浦澤はそんなこと気にして居ないようだった。


「お菓子、どうも。じゃあな。」


そう言って今度こそ帰ろうと思ったけど....


「まっ、待ってください!」

「....今度はなに?」


いい加減帰りたいんだか。


「あの!」


浦澤はなぜか深呼吸をする。そして、


「わ、私のお菓子作りを手伝だってください!」

「.........えー」


なんで、そうなるんだよ。

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