第5話 少ない自己紹介
三人と喋りながら歩いていると、体育館に着いた。
「名簿順だから、また後で」
紗羅はそう言って列に並ぶ。自分たちも並ぶべき場所に並ぶ。ちなみに、自分の名前は、『はるぎ』で、他の二人も『はしま』と『ひらやま』なので、自分の前後に二人がいる。
「久しぶりに紗羅と会ったけど、相変わらずだったな。」
「そうだな。」
「もっと他の人としゃべったらいいのにねー」
確かに紗羅は二年になってもあのスタイルを変えないようだ。まあ....
「自分はあれが一番あいつらしいと思うけどな。」
「そうか〜?」
羽島はそう言うが、無理に愛想振りまくより、『自分の意志』が出せる人間の方が好きだな。『あれ』よりは。
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始業式が終わり、教室に戻り全員席に着いた。すると、数分もしないうちに先生が来た。
「よ〜し、おまえらいるな、知っていると思うが一応自己紹介しとくぞ。俺は体育担当の野村和幸だ。よろしくな。」
どうやら、体育館に放送で集合をかけた先生のようだ。野村は体格も良く、完全にスポーツ系の男性だ。
「じゃあせっかくだし、一人一人自己紹介していこう。前からどうぞ。」
そう言うと前から順番に自己紹介していった。全部聞くのは面倒だから、知り合いの人間だけ聞いていた。
「紗羅愛華。読書が趣味。」
そう言って紗羅は自己紹介を終えた。短くない?相変わらずサバサバしてる。
「俺は羽島和也‼︎スポーツはサッカーが得意で、他にもバスケが得意だぜ。絶賛彼女募集中です‼︎」
羽島の自己紹介でみんなが笑う。まああれで彼女ができたことがないけどな。
そして自分の番が来た。目立ちたくないので、無難な自己紹介をする。
「名前は春祇奏。5教科は英語と社会ができなくて、あと少しだけテニスができます。」
そう言って終わる。うん、普通だな。
「僕は平山赤城です。勉強はできるけど、運動はあまり得意じゃないです。」
平山は相変わらずのんびりした口調でいう。でも一部の女子はキャーキャー言っている。人気だな。
「私の名前は水嶋愛華です。勉強はあれだけど、部活でテニスを頑張っています。みんな、よろしく!」
そう水嶋が言うと、みんなが(特に男子が)「おうー!」などと叫んだりする。羽島も混ざってる。何やってんだ。
改めて水嶋を見る。
「............」
やっぱりな。なんでそんなことをしているのか知らないが、あういう『キャラ』なんだな。
まあ、知ったこっちゃないが。
あと、自分知り合い少なくない?
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「はぁ....」
自己紹介が終わり、二年生は入学式の準備のため動いている。自分のクラスは体育館のパイプ椅子並べだ。だるい。
「いくぞー!パイプ椅子8個同時持ち!」
「すごいなー」
遠くで羽島や平山がパイプ椅子で遊んでいる。てか羽島、パイプ椅子8個って。
「もう....」
近くで、紗羅が独りごちてた。どうやら椅子がうまく取れないようだ。
「紗羅。ちょっとかしてみろ。」
そう言って自分は紗羅の代わりに椅子を取り出し、一つ渡す。
「ありがと。」
「どうも。」
そう言って自分も二つほど運びながら、二人で歩く。
「奏も椅子8個ぐらい運んだら?」
そう紗羅に冗談ぽく言われる。
「バカ言え。やるわけ無いだろ。」
そう言うと、紗羅は笑う。普段は笑わないが無愛想なこいつでも笑うときは笑う。他の奴らは、『笑わない』なんて言うが。
「はあ.....」
またため息を吐く。まったく、この二年生の間で何が起こるのか。一年の時もちょっと色々あったしな。
今度こそ何も起こらないでほしい。
本当に。
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