幼馴染に彼女と僕
「ゆーくんももう高校生なんだね」
制服姿の僕をみて彼女が言う。
黒い長い髪を浮かせ、同じだと言わんばかりに己の体を包むセーラー服を見せつけてくる。
「美月のそれとは幾分意味が違うとは思うけど」
そこで一息つく。彼女の大きくて愛らしい瞳は僕をしっかりと見つめている。恥ずかしくて、顔をそらしてしまうのは、未だ彼女の美しい顔になれないからだ。仕方ない。
「私と会ってもう10年、経つんだよね」
今も住むこの地に引っ越してきたのは十年前のこと。その時、僕は彼女と初めて出会った。
彼女の名前は美月。名字はないと言う。初めて会ったときからずっと美月と呼ぶので、彼女は美月であり、それ以外の呼び名なんて必要ない。
転校したばかりだった僕の初めての友達。
「あの時からゆーくんは全然変わらないね」
「美月はもっと変わらないよ」
あの時の僕と今の僕。変わっていないことのほうが少ないと思うけど、それは仕方ないことだ。生きていることは変わり続けるも同義なのだから。
「それで、ゆーくん。高校生になっちゃったけど、あなたの思いは変わらないの?」
「今、何も変わらないって話をしだしたところなのに、何を言っているんだい? 何も変わってない。その通りさ」
「中学校で魅力的な人もいたでしょ? 高校でだって、素敵な人はいるはずよ」
「中学にも高校にも、そんな人は存在しない。それだけは断言できる」
荒い口調で反論する。これだけは誰にも譲らないし、これだけは誰にも否定させない。
「君は変な奴だね」
「君には敵わないさ」
告白しよう。僕は美月が好きだ。
告白しよう。美月は死んでいる。
10年前出会った少女は10年経っても変わらない。姿、声、性格、全て同じを貫いている。
僕が何も変わらないなんて冗談、冗談にもなりゃしない。
「君が死ぬまで、私を愛してくれるんだっけ?」
「僕が死ぬまでに消えてくれるなよ?」
いつもと変わらない日常が今日も過ぎていく。ああ、今日も幸せだなあ。
僕はとっても幸せだ。
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