2話 フラグでバイトで討伐で 後編

「よぉ、久々だなー。元気してたか?我が息子よ」

「なんで親父がいるんだよーー!!!」

よし。一旦話を整理しようか。

ワープゲートなるものからこっちの世界にやってきた。うん、ここから既にツッコミいれたいが我慢しよう。そして、ロリな子供に連れられてやってきたのは討伐屋と言われる店で?来たら来たで行方不明だった親父がいて?もーわけわからん!!

「言いたい事はわかるぞぉ。でも細かいこと気にしたってしょーがねーだろ笑」

「笑じゃねーよ!一体今まで何してたんだよ!さっぱりわかんねーよ!連れてこられたらいきなり働くだのなんだの言われるしおまけに、そこのロリッ子は何なん...」

言いかけた瞬間右のすねに思い切り蹴りが炸裂した。蹴ったのは無論あのじゃじゃ馬お嬢様だ。

「だーれがロリッ子じゃ!この童貞が!」

「てめっ!人が気にしてる事をいちいち口にしやがって!」

「ふふん。事実なんだからしょうがなかろうドヤァ」

くそ。こいつのペースに巻き込まれてたら話が進まん。とりあえず親父に説明してもらわねば。ワケわからんこの現状を!

「で?一から説明してもらおうか?」

「恐い恐いよー?笑いながら怒ってるのかなー?ほらスマイルスマイルー」

「誰のせいだ!たく。で?とりあえずここはどこでそっちの二人は誰なんだ?」

「そうだな、とりあえずちょいと長くなるかもしれないが、まぁ構わんだろ。まず最初にここが...」

それから一時間程説明を受けた。

ここが異世界で居る場所がエストワール国と呼ばれる国から少し外れた小国なこと

そしてあの生意気なロリッ...もといイリアが

エストワール国の女王にして、ここの店長だということ。イリアに付き添ってる獣耳の女性がメイド長のリザさんなこと。

そして何よりだ...親父がエストワールで討伐軍のリーダーをしていたこと。もうすでに頭パンクなんですけどーー!!

なんでも異世界の扉は、こっちの魔導師が別の世界の扉を繋げたかったらしく失敗したらしい。どんだけいい加減な設定だ!とりあえず見つけたらぶん殴ろう。

「何だって親父が討伐軍のリーダーしてるんだよ。」

「そりゃああれだよ。ノリだノリ!こっちの店で酒飲んでたら偶然王様と意気投合してな

その場のノリでついついそれに俺はもう王国の討伐軍辞めたからなー」

ともかくツッコミどころ満載だけどノリって。この人は馬鹿なのでしょうか。親だけど頭大丈夫かよ。

「てか辞めたって、そんな簡単に辞められるのかよ。」

「おー。それなーエロ本やったら辞めさせてくれた」

この世界!おかしすぎるだろーーー!

と叫びたくなるのをこらえつつ、イリアの方へと目をやった。目が合いそうになり思わずおやじの方へと目をむけた

「それからどうして一国の女王が、こんな小国で、しかも店長なんかやってんだよ」

「それは私から説明しましょう。」

と言って前に出てきたのはメイド長こと

リザ=エルメスタだった。

「とその前に姫について説明しなければですね。この国では代々姫様方は14歳前後には婚約を交わされることとなっております。しかし見ての通りこのじゃじゃ...もといイリア姫はこの性格上、婚約をずっと断り続けています。」

今、あきらかにじゃじゃ馬って言いそうになってたよね?この人も絶対思ってるよね?!

「そこで、王が出した答えが」

ゴクリ

「15までに結婚相手を探してこいとのことで護衛に私と討伐軍のリーダーだった総次郎さんというわけです」

「なるほど。でどーしたら結婚相手探しが店を開くにいたるんだよ!」

それは...と口を開きながら

メイド長は深く重い溜め息をついた。

「お嬢様のわがままなのです。表は結婚相手を探すということにしておき楽して金を稼ぎグータラしたいという思ってた所存です。そこで貴方の父親が、だったら店開けばいいんじゃね?と軽いノリで言ったことが原因で」

「いや待てお金って姫様なら困ることないだろ」

「確かに困りません。この店も国王の資金から建てたものですし。」

「じゃあなぜ」

「娯楽です」

...はっ?今なんて?

「イリアお嬢様は退屈は嫌いな方で、それでいてグータラなダメダメな姫なのです。ただ面白いことがしたいがために建てたのです」

「おい!誰がグータラ姫だ!私だってやる時は」

「やる時が何ですか?私は未だに見たことありませんが姫様の、そのやる時を見たことありませんが?」

本当に駄目姫だ。メイド長の苦労が目に見える。この駄目姫と駄目親父は混ぜるな危険だな。でその駄目親父はというと

クエストボードを見て何かぶつくさ言っていた。でなにか決心したかと思うと、

あっこっちきた。やだなー。ニヤニヤしてる

「よし!お前これやってみるか!」

「よしじゃねーよ!なんで普通に入る流れになってんだよ!第一俺は元の世界でのバイトで忙しいんだよ!」

「その点は大丈夫!ちゃんとシフトも確認済みだし!」

「なっ!?一体いつ...」

思い当たる節はあった。帰ってきたら物の配置は違うし、まさか親父が...でもだったらなんで黙って

「もーいつばれるかドキドキだったよねーイリアちゃーん。」

「だから大丈夫だと言ったんじゃ!いかにも鈍そうだしな!」

こーいーつーらー!共犯でいやがった!確信犯だよ!しかも姫まで来てやがったのかよ!

てか姫家にあがってたのかよ!

そしたら何だ親父は行方不明なんかじゃなく

家に帰ってきてたのかよ。

「で、何でこのタイミングで俺がこっち来るはめになった」

「いや実際前々から考えてたよ?でも奏扉に全く気づかないから、分かりやすく取っ手付けてみましたーテヘペロ」

「あんなもん分かるわけねーだろーーー!!俺は帰るぞこれ以上は」

「まぁ待て、お前ここでバイトしてくれ」

はい?このアホな親父は何を言ってやがる

「嫌だね。こんな怪しいとこさっさと」

「でもお主帰れないぞ?」

今度はこっちのチビロリかい!

「おい、一体どういうことだよ」

「ワープは1日5回この扉の奥にしか出現しなくてな、まぁ後1時間は無理だということじゃ」

「それに俺ぁそろそろこの仕事も辞めようと思ってだな、そのツケ...いやいや経験を息子にも是非」

ツケとか言いやがった。あれだな駄目だなコイツ。

「頼むよー。やってくれよーバイトー」

親が子供に頼むことじゃねぇ!

「やるにしても一人でか?」

「やってくれる気に!」

「なってねーよ!人数もいないのに俺みたいな素人が討伐何か出来るかって

言ってんだ!」

「その点はお任せください。私が全力でサポートさせて頂きます。」

あーまぁこのメイド長がいれば安心か。なんかしっかりしてそうだし、この駄目駄目親父何かよりぜんっぜん良いな。

「はぁ。分かったよ。やればいいんだろ。それで武器とか防具は?」

「「え??」」

ダメダメコンビが見事に声が合わさった。

「いやいやいや流石に裸同然で戦うって無理あるでしょ。誘うからにはそのくらいは用意されてるんだよね?」

「え、いやぁ俺忙しかったからなー」

「用意...されてるんだよね??」

この駄目親父が!装備すら用意してないとはどういうことだ!呆れて言葉もでねぇよ。

「奏さん問題ありません。それなら私が用意させて頂きました。」

「そうなんですか!?」

やっぱり駄目コンビよりよっぽど頼りになる。よっぽど...頼りに......

しばらく考えこんだ。うん、これあれだよね

メイド喫茶の子達が着けるようなあれだよね

「いかがなされましたか??」

「リザさんこれ...メイド服だよね?」

「そうですが何か問題でも?」

「問題だらけだよ!!着られるわけないよ!」

後ろで大爆笑してるアホ二人は後でぶん殴るとして、とても着られんでしょこれ。

ではこちらはと代わりの装備品を出してくれた。うん。出してくれたは良いんだけどね、

これ...ビキニアーマー。どこのアマゾネスだよ!

「これも不満ですか?」

後ろで更に大爆笑して腹を抱えて涙流してる奴等はこの際無視するとして

「もっと普通なのないんですか!」

「あいにく後はこんなのしか」

そういって出してもらったのは黒いジャケットのような服だった 。

「これでいいですよ!何故最初から出してくれなかったんですか!」

「面白くないじゃないですか!全く貴方がさっきの服を来て戦うことに意味があるのです!似合わなくてもネタに...いえ何かの参考になるじゃないですか!」

ネタって言った!今ネタって言ったよね!

前言撤回。この人もやはり変人だー!

奏は着替えを済ませて武器を選んでいた。

「全く。その格好些か無難すぎじゃありませんか?」

「いいんです!無難で!さっきのよりはましですよ!とそれより武器を」

「そうですね、とりあえず奏さんには無難な剣とかオススメしますけど。」

「とりあえず剣で。」

「じゃあそれにしましょう。ちなみに双剣はダメですよ。私専用なので。てか私以外が使うものなら切り刻みます。」

どんだけ双剣好きなんだよ。双剣好きがヤンデレ化してるぞ。

「んじゃあこの銃剣てのを使ってみるわ」

「おいー。奏よ男ならガントレットだろ?夢みようぜ?拳と拳で語り合えばわかるんだよ」

「お前は夢みてくたばれ」

「冷たいよー。息子が冷たいよー。リズリズー。」

「やめてください、気持ち悪いです。近寄らないでください。」

うわー。本気でゴキブリを見る目だよ。

あれ。まぁ別に可哀想とは思わないけど。

「とりあえずこれにするわ。んでクエストってのはいつ行くんだ?」

「今です」

「これからじゃな」

は?急過ぎて話についていけない

「あのーいくらなんでも早すぎませんか?」

「ごちゃごちゃ言ってないで行きますよ。簡単な狂狼-ウルフ-相手ですから大丈夫です」

大丈夫といわれてもなー。

「ちなみに私はいかんぞ!」

「いやいやいや主犯確がいかんでどうする」

「いつも私だけか、たまにそこの変態と組んでます。」

「え?まじ?」

「まじです。」

うん。そうだよね。んじゃあまぁ...

「待ってください。どこへ行くんですか?」

「アハハー。やだなぁトイレだよトイレ」

「そうですか。トイレですかなら仕方ありませんね。ごゆっくりどうぞ」

言いながらリズは奏の肩を掴んだまま離さない。

「あのー。離してくれませんかね??」

「お気になさらずに」

「気にするよ!いいからはーなーせー」

「奏さん。さては逃げるつもりでは?」

「ギクッ!」

「息子がギクッていった」

「ギクッって言ったのう」

声に出ちまったじゃねーかー!

「ムリムリムリムリ!いいからはーなーせー!無理ゲーすぎるだろ!人数聞くまでは行けるかなと思ったよ!?でも今は不安しかねーよ!」

「そのための護衛です。問題ありませんそれに断言します。達成した時の喜びは大きいですよ。」

「そうかもしれないけど!」

「一回だけでもお願い出来ませんか?」

「うっ。」

そんな上目遣いされたら断るに断れない

「分かったよ!その代わり一回だけだからな!」

「ありがとうございます。ではさっそく出発しましょう。」

「おー二人ともファイトじゃぞ!」

「イチャイチャすんなよー!」

この駄目コンビうっぜーー!!!

と思いつつもリズと一緒に近くの森までウルフの討伐に来てしまった。

【依頼内容-狂狼討伐

難易度☆☆

近くの森でのウルフ討伐

10匹を狩ること。】


「さてこの辺でいいでしょう。」

ここって確かさっき俺が追いかけられてた

ん?待てよウルフって、さっきのやつと狼っぽかったけど、アハハァまさかなぁ。

ーグルルルル

「奏さん来ますよ!」

やっぱりさっきのやつだったーーー!

「くそっ、あれこの武器どう使うんだ!?」

「奏さん!旋風切!」

ウルフ達が次々に風の刃の餌食となってく

す、すげぇまとめて3匹も

「奏さん、死にたいんですか!」

「いや、使い方が分からないんだよ !」

「こっちの武器はある程度なら自分の考え通りに動きます!自分がどうしたいのか強く思ってください!」

自分がどうしたいか...帰りたい。

いやいやいやいや、違う違う。

ブレードモードになれ!

すると銃口近くの剣先が形を変えていき

リーチ充分の長剣となった。

「奏さん!きますよ!」

くらえぇえええ!

ズシャアと勢い良く血を吹き出してウルフは後方へと吹き飛んだ。

やった。て切れ味良すぎ!威力強すぎでしょー!

何十分もかからないうちにウルフは20匹近く仕留められた。

「ふぅ。こんなものでしょうか。一応依頼者に伝えに行きますので奏さんもへばってないで着いてきてください。」

いやいや、こっちは慣れないことして心底疲れてるっていうのに。仕方ないか依頼はまだ終わってないんだしな

それから依頼者の元へと出向き報告をし

報酬を受け取った。

「まさかあんな感謝されるなんてな」

「まぁ元々農作物も荒らされて困ってた見たいですし。でも気持ちいいものでしょう?」

「何が」

「人に感謝されるということがです!」

そうやって今日初めて、それも柔らかに笑う彼女に見とれてしまった。こういう顔も出来るんだなこの人。

「そうだな。悪くはないな。」

「じゃあ継続してくれますか?」

「それは一旦考えさせてくれ。」

話してるうちに仕事場へと戻った。時刻は夕刻5時を指していた。が二人は居なかった。

「あれ?誰もいないのか!?」

「まぁ二人には私から言っておきますので今日はもう帰っても大丈夫ですよ?」

「え、でもあれって一日に5回じゃあ」

「あー。あれは嘘です。ジョークです。扉の向こうというのは本当ですが四六時中開いてますよ?」

あの糞ロリ騙しやがったなーーー!!!

「とりあえず今日はもう疲れたので帰りますね」

「はい。また後日お待ちしております」

そう言い残しまたワープゲートへと足を運んだ。

よし。もう二度と行かない!

「ただいまーっと誰もいないか」

戻ってきてリビングの扉を開けると

「おーおかえりー息子よ」

「うむ。邪魔しておるぞ!」

こーいーつーらー!

「何でここにいるって顔してるな?そりゃお前さんあれだよ。お前がゲートに再び行くか見届けなきゃな」

「どーせもう二度行かないとか思ってたんじゃろ?残念だったなー?今どんな気分じゃ?どんな気分じゃ?」

イラッ!とりあえず親父の顔を笑顔でグーパンした後に自称お姫様をグリグリの刑に処した。

どうやら俺の日常は死亡フラグを迎えたらしい。誰か俺を休ませろーー!

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