1-06 各自の装備
――◆ side:高円寺直輝 ◆――
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高円寺=直輝(コウエンジ=ナオキ) 13歳:男♂
初期ステータス
レベル:1 職業:弓師
生命力:2234/2234 精神力:1901/1901
攻撃:802
防御:559
魔法:704
素早:866
命中:915
知力:717
運 :75
特殊技能:夢見
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国王への謁見が終わった次の日、直輝たちはこれからの活動の為の防具を作る為の採寸を行なった。
それと同時に、各自どういった装備が適しているのか調べ上げる。
「防具って…甲冑でも着るの?中世ヨーロッパみたいに?」
「流石に全身鎧を着るのは嫌だよねぇ。」
「ゲームみたいに鉄の胸当てとか皮鎧、布なのに防御力の高いローブとかもあんじゃねぇの?」
「空を飛べる装備とかもあるのかな!」
訝しげに実嶺が呟けば、続けて獅乃が困った様に言葉をこぼした。ゲームや漫画好きな隼嗣と直樹は防具と聞けば、空想上のものが実在するのかと妄想を膨らます。
「死霊使い…一体何を着せられるのよ…」
深澄は唯でさえ成人した良い大人なのにと、げんなりとした顔だ。
「他の奴は職業的に何となく分かるが…ゾラの装備だけ想像できないんだよな」
「…遊び人って防具も武器も何を使うの?吹き矢、投げナイフ、とか?」
「あはは、あえて仮面被ったりしてジャグラーの様にボールをぶつけて戦うのも面白いね」
洸哉と実嶺は首を傾げてゾラを見るが、当の本人は笑みを浮かべて足を進める。
現在直輝達は各自適した装備を調べるついでに、自分達の能力がどの程度のものなのかを確認する為に訓練場へ移動しているところだった。
各自の職業から装備を推測してもいいのだが、実際に武器を手に持ってみたほうがより適性を知ることができる為だ。武器一種類にしても色々な形状のものがあるのも理由の一つではある。
「皆さーん、此処が我が騎士隊が使用している第二訓練場でーす。この場所は、皆さん専用の場所になってまーす。戦闘訓練をする時はこちらに来て下さいねー。」
全身鎧を着た騎士が直輝達に向かって声を張る。
先導するチャーリー=グレーと名乗った彼は年若いが副騎士団長を務めており、これからの直輝達の戦闘訓練は彼が担当するのだという。
直輝はてっきり召喚された時にいた武官風の男、ガバリルアス騎士団長と何度も顔を合わせなければいけないのかと思っていただけに取っ付きやすいチャーリーを良く思っていた。
それは直輝以外の者も同じであり、こうして会話を楽しめる程度には親しみを覚えている。
「チャーリーさん戦闘訓練って何するの?」
ハイハイと手を挙げて直輝が質問すると、チャーリーは笑みを浮かべて答える。
「皆さんは武器も扱ったことがないと聞きましたんで、まずは使い方を覚えるところからですかね。そこから戦闘するにあたっての動きを覚えて、実際に模擬戦をって感じの流れになるかなと思います。魔術については座学の方で勉強してもらわないといけないですね。」
あそこの的を使ったりするんですよ、と訓練場の端に立てられた丸太を指差す。
それなりに使用されているのか、その丸太には大小様々な傷や焦げ跡が多数あった。
直樹と隼嗣はそれを見ていかにもファンタジーだと期待に胸膨らませる。
「今日は皆さんの武器を決める為に来たので、訓練用の武器を置いている武器庫の方へと案内します。」
チャーリーはそう言って言葉を切ると、訓練場横の一室へと歩き始めた。
「ふわぁぁぁぁ!」
「ふおおぉぉぉぉ!」
案内された武器庫は思った以上に大きな部屋で、剣以外にも色々な武器が置かれていた。自然と直輝と隼嗣のテンションが上がる。
「鈍器系のものはそのままですが、剣などは刃引きされている訓練用の物です。ちょっと触った程度で怪我する様なものではないので、気軽に手にとってみて下さい。」
チャーリーの言葉を聞くや否や、テンションの上がった二人は武器庫内へ駆け出した。
渋々と残りのメンバーも動き出す。
「職業的に私は杖、よね?」
「…私も杖かな。」
「私は、剣かなぁ?剣も色々あるよねぇ。」
女子メンバーが相談半分で会話しながら武器を手にした。
「モーニングスター、こんな物まであるのね」
深澄は武器庫内をうろついて自分が扱えそうな武器を探す。
「深澄先生は鞭とかが似合いそうだよねぇ。死霊師だし、教師だし?」
「…お前それ、偏見とか入ってねぇか?もしくは性癖とか。」
「酷いなぁ、よくある設定から引用しただけじゃないか。それをいうと洸哉君は反り返った短剣一択だよね。大丈夫?よくわからない笑い声をあげて戦いに出る準備出来てる?」
「俺は世紀末的な世界に出てくる雑魚みたいな動きはしないからな!?」
洸哉とゾラは武器に手を伸ばすでもなく、他のメンバーを見ていつもの掛け合いをしていた。
勢いよく駆け出した直輝と隼嗣はというと。
「おお、槍剣!でっけぇ戦斧とかもある!スッゲェ!!」
「隼嗣にいちゃん、僕の背丈以上もある大剣があるよ!」
「大鎚!!マジかよ、こんなの誰が使えんだ!?」
「これって棍棒?木材?一つ目巨人が使ってそー!」
あれやこれやと武器を前に、はしゃぎ回っていた。
「えー皆さん。取り敢えず興味のある武器を手にとって振って見て下さい。適性のある武器があれば、手に馴染む感覚が戻ってくることがあります。悩んで選ぶのもいいですが、決められないのなら適性で選択してみるのもいいと思いますよ。」
苦笑を浮かべたチャーリーが全員に声をかけると、その提案を元に各自の自分の武器を選んでいった。
数刻後。
案内されて武器庫を出て、直輝は不満気に顔を顰める。
自分が使いたいと思う武器が悉く手に馴染まなかったのだ。
近接武器は全滅、唯一手に馴染んだのは自身の職業にもある弓だけ。それも身体が小さい直輝に使えたのは短弓だけだ。
「…ボウガンとかあればよかったのに。」
ボウガンに似た武器はこの世界にあるらしいのだが、この訓練場には取り揃えていないのだそうだ。
不貞腐れて座り込む直輝の前では、各々手にした武器を振るうみんなの姿がある。
姉の実嶺は短杖を、彩峯は長杖を軽く振っている。この二人は近接戦闘型では無いので、武器を持って動く事に慣れようとしているのかもしれない。
獅乃は盾と長剣、洸哉は曲刀、隼嗣は両手剣を手にチャーリーに使い方の指導を受けている。隼嗣は大楯の適性もあったが自身の好みを優先したのだという。
深澄は苦々し気な表情を浮かべ一人、鞭を片手に的へ振るっていた。八つ当たりの様に振るわれたその鞭は、何度も的に命中して鋭い音を撒き散らす。まるで普段から使い慣らしている様にその姿は様になっていた。
「みんな良いなぁ。」
祖父に教えてもらった武術は役に立たず、元の世界にあった銃の様なものもない。それは姉の実嶺にしても同じ事で、祖父直伝の武術を二人揃って役立たせることはできない状況だ。
格好良さ重視で大弓を使おうとしたが、弦を絞りきれず矢が前に飛ばなかった事で使用を断念せざる得なかった。
「むぅ………ん?」
むくれた顔でみんなから視線を外せば、そこには壁を背にして立つゾラの姿があった。
ゾラは自分の適性武器が見つからないのか、武器庫にあったモノを全て訓練場で振るって確認した後、ずっと一人離れた場所にいる。
その姿はどれを自分の武器にしようか思い悩んでいる様には見えなかった。
「…何してるんだろうゾラ先輩。」
一人宙に目をやって、立てた指をクルリクルリと回している。
不思議とその姿は、直輝の心に印象深く残った。
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