小蝿
小蝿が嫌いだ。これでもかというほど人の周りをうろうろ飛び回って、おちょくってくる小蝿が嫌いだ。
いや、きっと彼らにも理由があるんだろうけれど。一説によると黒いものが好きだとか、アルコールの匂いをさせているとか。今これを書いている私は一滴も飲んでいない上、白い服だけれども。(臭いってかこのやろう。)
いくら追い払っても近づいてくる彼らと戦って、勝つ瞬間がまあ稀にある。稀にね。
グッと握りしめた手の中に奴らがいた時には「やってやった」感がある。そりゃもうゲーム感覚に近い。安っぽいシューティングゲーム。
けど、ふとティッシュで手を拭っている時に思った。「こいつらも生きてるんだよなぁ」なんて。こんな風に潰される予定はなかっただろうなとか。家族がいるのかなとか、家では子蝿が待ってて、親蝿がご飯を持って帰るのかなとか。
そんな妄想しながら、手を拭ったティッシュを丸めて捨てるのだけれど。
人間もいつかプチッといとも簡単に始末されるんじゃないだろうか。巨大すぎる宇宙人とか、未知の生物が「こいつら鬱陶しい!」ってプチッて。そりゃもうプチッて。
生物の頂点に君臨してるようなツラをしてるけど、野生のライオンの前にいたらあっという間に食べられちゃうだろうし、ホッキョクグマが見える距離にいたらそれもまたあっという間に追いつかれちゃうだろうし。
人間も小蝿もあんまり変わらないのかもしれない。明日は我が身か。そんなことを考えながら、今もまた目の前をこれでもかと通過する小蝿と死闘するのである。
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