トライアンドエラー

「物販こちらでやっております!本日演奏した曲のCDのほか、アクセサリーなどライブを観ていらっしゃらない方でも楽しめる物販ですので、是非ご覧ください。」

 ライブ終わりはこんな風にセールストークをしている。ライブハウスのスタッフさんや、共演者の方からはよく「言い方が完全に販売員だよね」なんて言われる。実はかなり嬉しい。


 私には販売員の経験はない。仕事の経験といえば、コンビニの店員と派遣会社の登録担当くらいだ。せいぜいコンビニでのホットスナックのセールストークくらい。(「から◯げくん出来立てご用意いたしました、いかがでしょうか」とか。)

 少し前までは、ライブ終わりの物販はただ立ってるだけの壁の花、いや壁の木だった。黙って物販の前で立っていたのだ。

 もちろん、それでもライブを観てくれた人で気に入ってくれた人は足を運んでくれる。CDも買ってくれる。それでいい気もしていた。だって、見てくれる人はゼロじゃなかったから。

 でも、ライブが終わった後「これでいいのだろうか」なんて悩んだ日があって。その日は出演者全員レベルが高くて、私の出演は前半。お客さんは自分の目当てのミュージシャンを見にきて、私の時間帯にいない人がほとんど。私を知らない人がほとんど。その人達が物販を見てくれる確率はかなり低かった。

 物販を見てくれる人はライブを見てくれた人がほとんどなのだ。雑貨をおいても、それを知るのはライブを見た人だけ。見てない人は私の存在に気付いていないのだ。壁の木どころの騒ぎじゃない、壁の中なのだ。


 そこから変わった。まずは商品の陳列や看板の設置。次に注目したのがセールストークだった。コンビニの経験くらいしかなく、アパレルや量販店のような販売系の仕事についたことはなかったから、できることは観察だった。原宿や新宿、渋谷のようなダウンタウンに行くたびに販売員のお姉さん方の言葉を聞き耳立ててインプット。さすがにメモを取ることはできないから、店の中をちょっとウロウロしながら頭に叩き込んでいた。(きっと不審者に思われただろうな)

 アウトプットは実践だった。正直これが一番キツい。滑舌が悪い私はライブのMCですら噛む。喋るのも正直下手だった。(よく歌ってるな)そんな中で誰が聞いてるかわからない、むしろ誰も聞いていないかもしれない環境で声を大にして自分を売るなんて、恥ずかしくて仕方がなかった。

 当然、沢山失敗した。頭の中で反芻した言葉を口から出すだけなのに、台詞途中で噛んで全文が台無し、その後続けるのもしんどくなったり。迷惑そうな顔でみられたこともあったっけ。

 けど、諦めなかった。何度も何度も繰り返してやっていくうちに自分なりのやり方が見つかってきて、それが結果に繋がるようになった。セールストークをした直後にお客さんが立ち寄ってくれるようになったのだ。

 慣れてきた今でも台詞途中で噛むことはあるし、失敗する事は多々ある。けど、堂々とできるようになった。


 どんなことでもそうだと思う。勉強して、チャレンジして、失敗して。それを何度も何度も繰り返してエラー修正していく。


 エラーを恐れて行動しないんじゃない、エラーがあるのは当たり前。失敗して当たり前、間違えて当たり前。それをどう修正して、どう行動するかなのだ。

 当たり前のことを言っているけど、実は当たり前じゃなかったりする。だって、失敗が怖くて行動できないことなんて、誰しも1度はあることだ。都合の良い言い訳をしながら避けて通ろうとしてるなんてことがあるはず。

 人間にはエラーがつきものだ。機械だってエラーを起こすのだから、それを作る人間にもエラーが起こって当然なのだ。人間はそれを自分で修正することができる。


 自信を持って失敗しよう。それを乗り越えた時、必ず結果に繋がるから。



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