64話沙羅の決断!
交通事故に遭って下半身不随になった龍ヶ崎桜のリハビリを兼ねてVRゲームのハンティングワールドオンラインで毎日沙羅達と楽しく冒険をしてきた晃だったが、初めて沙羅がログインして来ないという事態と共に、沙羅が新月透と言うイケメン生徒会長に告白を受けているという話しを聞いて、胸が張り裂けそうな状態となっていた。
晃にとっては沙羅と付き合っていたわけではなかったが、沙羅と毎日会っているうちに何か特別な友情的な絆が生じているのだと勝手に思い込んでいた……そんなものはいつ崩れ去ってもおかしくない、砂の器でしかなかったのだ。
ひたすら沙羅の事を考えると胸が締め付けられるのでドラコツラーメンのスープ作りに専念する。次々とドラゴン骨付き肉を煮込むと浮いてくるアクを処理していく。窓の外の裏庭を見やると
、湖畔でルーク達が楽しそうに釣りに夢中である。
背後に気配を感じて振り返る晃、龍ヶ崎桜だった……「晃お師匠も、みんなと楽しく釣りをするでござるよ! スープのアクとりくらいなら私でも出来るでござる! さあ早く!」
晃の背中をどんっ! 裏庭に向けて押してくれ
た……裏庭に向かって歩きながら……下半身不随で病室のベッドに横たわりながらゲームにログインしてる桜が一番不幸せだろうに……それでも晃を健気に応援してくれる。思わず瞼に熱いものが
流れそうになるのを必死にこらえながら裏庭に出る晃……。「お! 晃来たか! 結構この湖イキの良い魚がいるぜ!」「大漁ですわよ!」
ピラニアの様なこじんまりとした魚がたくさん釣れている様だ、竹竿の先に糸を伸ばし先にはルークが土魔法で作った金属針がつけられている。そしてミミズを餌に釣っている様だ。
コタローとアリシアとエリザベスが餌を探す係でコタローがミミズを匂いで見つけ、その裏庭の石をひっくり返して、アリシアとエリザベスがミミズを掴み釣り役のルークと葵に渡していく。
キラキラと太陽の光を反射して輝く巨大な湖を見渡す。横幅800メートルはあろうか巨大な湖だけに大物が棲息していそうである……ルークとアリシアに近づいていった晃は、「よし! この僕が大物の釣り方を教えてあげよう!」
まずは材料となる大きめの石を数個前に置き、「土の精霊に命ずる……」土魔法により石が形を変え30センチ大の魚のフィギュアになった。尾の部分にはちゃんと関節がある。
「なかなか精巧なフィギュアですこと、これをどうしますの?」
「これは疑似餌(ルアー)といって、これを魚の様な動きで動かすと、縄張り争いや食べようと他の魚が喰いついてくるのさ……さあ、仕上げだ!
風の精霊に命ずる……」風魔法が込められた疑似餌(ルアー)はぴょこぴょこと尾を振り始めた。
みんなが興味津々で見守る中、釣り糸を疑似餌(ルアー)に巻きつけて投擲スキルの遠投で湖の奥に放り投げ、腕の小手に巻きつけ巻き戻していく、すると疑似餌(ルアー)を追いかける黒い影が……そして食い付く1メートル級の巨大魚! そして巻き上げ格闘をして、大きな牙を持つ巨大魚を釣り上げた。
「おー! やるなー晃! 俺も負けてられんな! 土の精霊に命ずる……」1メートル級の大きな疑似餌(ルアー)を作り上げた。
「それは大きすぎでは……」
「晃に負けてたまるものかふふふ!」
弓を使って湖の中央部に放り込んだ!
巨大な水飛沫を上げながらルークの疑似餌(ルアー)に噛み付く巨大な何か……。
「よし! 何か大物がかかったぞ!」
ルークが叫びながら巻き戻して行くが、湖に引き込まれそうになる。
「おいおい大丈夫か? 仕方ないなぁ!」
晃がルークの背中を支える。それでも止まらない!
「兄者何をしとるのじゃ!」
「私も手伝うわ!」
アリシア、エリザベスも加わるがまだまだ止まらない。
「あらあら! そんなに大物ですの!」
レベルアップのスキルポイントの大半を防御力と筋力アップに振り分けている葵が加わって初めて止まった。
そして引っ張り上げて行く彼らの前に姿を現したのはビッグワイルドアリゲーター……10メートル級のワニである。
「ルークさん……あれって魚というよりもモンスターですよねー!」
「ははは! その様だな!」
苦笑いを浮かべるルーク!
晃が手を離して臨戦態勢をとろうとすると、引きずりこまれそうになるルーク!
晃はあわててルークを捕まえる。
「これじゃにっちもさっちも行かないですわ!」
大きな口を開けて迫るビッグワイルドアリゲーター!
「ワン! ワン! ワン!」
その時後ろから槍(ランス)が風切り音を伴いながらビッグワイルドアリゲーター口の中を貫通して光るポリゴンに変えた。
一斉に振り返るみんなの目線の先には……。
「沙羅ちゃんお帰りなさいですわ!」
「ワン! ワン!」
「沙羅お帰りなさいじゃ!」
嬉しそうに駆け寄る葵、コタロー、アリシアとは対照的に別にあまり気にしてないぜ……とさりげなさを装いながら一番後から近づく晃!
「沙羅ちゃん、新月さんにはどの様な返答をされましたの?」
「一瞬だけど迷ったのは事実よ……でもみんなと一緒に過ごす楽しい時間とは引き換えには出来ないわ、だからきっぱりとお断りしたわ」
それを聞いてデレっとニヤケ顔になる晃!
その顔を見た沙羅は、「ちょ! なんてキモい表情浮かべてるのよ! 私はみんなと! って言ったんだからね!」
「良かったな晃!」
「良かったですわね!」
「ワン! ワン!」
そんな晃達を一人の女性と二人の男性が遠視スキルで見ていた。
女性がひとこと「なんでよりによって奴らが、私の住んでいた屋敷で楽しそうにやってるのよ、
一体どういうこと」
「次のターゲットは決まりだな!」
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