63話 晃の恋の行方!



 沙羅が生徒会長である新月透に告白を受けていると葵から報告を受けてから石化したように固まってしまった晃であった。


 明らかに衝撃を受けてサーバーダウンを起こして固まっている晃をルーク、アリシアのエルフ兄妹やエリザベス、葵と桜の龍ヶ崎姉妹が必死に励まそうとする。


 エリザベスが「晃君、私が育った村は15才を超えた男性はみんな町に出稼ぎに行ってしまうの……だから村にいる男は年寄りか子供しかいなくて恋の対象なんていなかったのよ、それに比べれば恋の対象がいる晃君は立派な幸せ者だわ!」

 晃を励まそうとするエリザベス……しかし、そんな過疎化が進んでいる村の話を聞かされたところで晃には何の慰めにもならない。


 アリシアが「今、沙羅が告白されているという新月透とかいう人物、ルックスがそんなに良いのか?」


「こんな感じですわ!」葵が仮想端末のスクリーンを広げて、高校生アイドルのタックンこと滝沢光の顔写真をアリシアに見せる。


「これはかなりのイケメンじゃな!」アリシアが驚きの声を上げる。


 エリザベスも「こ、これは……かなりの破壊力だわ……まあ、顔がすべてじゃない……とはいえ」

「生徒会長としても、イジメ撲滅をテーマとして掲げていたりして、立派な方ですわと沙羅ちゃんは評価してましたわ、しかも頭脳もスポーツもトップクラス」

 ルークがニヤケ顔を見せながら「ふっ! まるで俺のヒューマンバージョンじゃないか、晃も厄介な奴を敵に迎えてしまったな……」


 それらの言葉が強力な破壊魔法となり、晃の心をさらに粉砕して行く。


 晃の心は深い深い海の底に沈んでいた。


 そう、今までが上手くいきすぎていたんだ、桜のリハビリを理由に沙羅や龍ヶ崎姉妹と毎日楽しくゲームで遊び、そしてさらにルーク、アリシア、エリザベスという仲間が出来、コタローという愛嬌のあるペットまでいる……そんな最高な毎日がいつまでも続くと慢心していたんだ……そんな感じで天狗になっていた晃の心に今回の出来事は強烈なカウンターパンチを食らわせていた。




「追い討ちをかけてどうするでござるよ、晃お師匠を励ますでござるよ! 沙羅姉は晃お師匠の料理の腕前をかなり評価してたでござる」


「そうじゃ晃の作るハンバーグは絶品じゃ! それに戦いの時の指示はいつも的確で頼りになる!」


 桜とアリシアが無理やりではあるが、晃の良いところを並べ褒め称える。


「今日は朝食食べてないし、昼食作ってよ晃君!」エリザベスが満面の笑顔で晃に語りかける。


「そうだ、腹減ったぜ晃! 何か得意な料理を作ってくれよ!」


 なかなか再起動しない晃……。



「ワン! ワン! ワン!」コタローが晃に向かって鳴いている!


 そのコタローの鳴き声が晃の瞳に灯をともした。


「そうだな……ペットは主人を選べないんだった、飼うと決めた以上は恋煩いくらいのことでペットを不幸にしてはいけないよね、何かやってないと気が紛れないから料理つくりをやります」


「そう来なくちゃですわ!」

「晃お師匠が復活したでござるよ!」

「ワン! ワン!」


 そしてダイニングルームの奥にある厨房でドラゴン肉を取り出し包丁で切り刻み始めた!


 そんな晃の姿を暖かく見守るみんな。



 ドラゴン肉をひたすら包丁で刻んでミンチ肉を作る晃の姿は鬼気迫るものがあった!


 ハンバーグ……それはアジアの騎馬民族が、死んでしまった硬い馬の肉を食べるためにひき肉を発明、それがハンブルグに伝わり、今では世界で一番食される料理(ハンバーガー含む)と言われる。


「うまい!」

「こんなに美味しい料理初めてよ!」エリザベスが褒め称える。



 そして、夕食の仕込みを始める晃、高火力の火魔法を使い、ドラゴン骨付き肉を煮込み始めたドラコツラーメンのスープ作りである。ひたすら浮いてくるアクを取り続ける晃はあまり考えことをしたくない、というのが一目瞭然だった。



 「よし、俺たちも夕食材料を調達だ、裏庭の湖で釣りをしようぜ!」


「いいですわよ!」

「それは良い考えじゃ兄者!」

「おー!」



 こうして湖畔の屋敷は昼過ぎを迎えていった。




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