第60話昇格……湖畔の屋敷


 エンシェントファイヤードラゴンを見事に打ち倒した晃達は帰途の船上にてドラゴン焼肉立食パーティーに参加していた。


 行きの大型帆船には100名以上のNPC冒険者達が乗船していたが、今は70名程度である、3割もの冒険者が失われた計算になる。Bランクの単独パーティーでファフニールに立ち向かった連中は全滅だろうな。エリザベスの所属するキラーマーメイドの4人がアイスティーの入ったグラスを持ちながら近づいて来た。リーダーのカーラがエリザベスに「お疲れ様ベス! どうだった?」

「頂上にいた超大型の炎龍を倒した……これ戦利品、他にもいっぱい晃氏に預けてある」「すごい炎龍の牙じゃない! これ一つでひと財産だわ!

 ベス金持ちになれるね!」「これらはキラーマーメイドのみんなで山分け……最初からそう言う約束で晃達のパーティーについていったから」

「なんか申し訳ないわね! でもこんなに楽しそうなベスを見るの初めてかも……私達付き合い長いからあんたの考えてることなんて分かっちゃうのよね!」とカーラが言うと、他のキラーマーメイドの3人も微笑みながらうなずいている。


 キラーマーメイドの重戦士であるガーベラが笑いながら「言いたいことは言いなよ! ベス! じゃないと一生後悔するわよ!」


 それを聞いたエリザベスは晃の方を振り返り「晃君……これからも私を正式なパーティーメンバーとして一緒に冒険に加えて欲しい!」


「え! いいのか? あなた達だって神官であるエリザベスがいなくなると困るでしょうに?」

とカーラに向かって言うと、

「大丈夫よ! ベスの妹が近く成人である15歳になって私達のパーティーに加わる予定だったから……その子も神官としての能力が高いのよ、それに才能あるベスを低レベルの私達のパーティーに留めておくことに負い目を感じていたの……」


 確かに合流した時からエリザベスはレベル65でレベル60平均のAランクの連中より抜きんでていた……ましてやBランクであるキラーマーメイドの面々はレベル40台である。しかも今回のバハムートやエンシェントファイヤードラゴン討伐により、エリザベスのレベルは72に跳ね上がっていた。


「お願いします!」ペコリとお辞儀をするエリザベスに、「やったー! 私達正式な仲間ね!」

「よろしくでござる!」

「よろしくですわ!」

「ワン!」

 エリザベスに抱きつく沙羅、桜、葵とその周りを尻尾を振りながら走り回るコタロー。アリシアとルークもがっちりとエリザベスと握手をする。


 そしてキラーマーメイドのみんなとファフニールのドラゴン肉の串を頬張って行く晃達、アリシアとルークはビールをがぶ飲み状態である。


 そしてエンシェントファイヤードラゴン退治の自慢話を周りに語る……ルークさん呂律が回ってないかと……。


 カーラが晃に「あなた、闇属性魔法の使い手な

のね! 魔族でもないのに珍しいわね!」


「人間の闇属性魔法って珍しいの?」


「そうねー、悪魔と契約した人間とか犯罪者とかが使えるようになるとか言う噂はあるのは確かね!」

 沙羅が吹き出しながら、「ちょ! キャハハ!

晃君って、実は悪人だったのね?」


 一躍、話題の人となった晃の肩にコタローが飛び乗って来てペロペロ晃の顔をなめる。


「動物に好かれる人には悪い人はいないでござるよ、沙羅姉!」


「そうですわよ! オホホホ!」

桜と葵がアシストしてくれた?


「ジョークよジョーク! わかってるわよ! 晃君の人となりは!」

 今の沙羅の発言にコタローにペロペロされながらニヤケる晃でありました。


「陸が見えて来たぞー!」船員が叫んだ。



 

 そして今晃達は王国でも有数の大商人の事務所に来ていた。


 執務室のソファにでっぷりと太った西洋人が腰を掛けている。晃達を見るなり、ここまで案内してくれた受付の男性に怒鳴りつける「おい! コボルドよ! なんだ俺の部屋にこんな貧相なガキどもを案内しやがって、いったいなんのつもりだ!」


 怒鳴りつけられたコボルドと呼ばれた男性は、「待ってくださいよ親方、この方達の首からぶら下げているプレートをよく見てください」


「プレートだと……うっ、その輝きは……ミスリル、なんとその若さでSランク冒険者様でありましたか、という事は子爵様でもあらせますな、これは大変ご無礼を……私はこのスクラット商会の会長を務めるスクラットであります」

 晃達のプレートを見た瞬間に、おもむろに立ち上がり大汗をかきながらもみてを始めた、見事なまでの豹変ぶりである。


 大型帆船を降りてから、ギルドに直行した晃達は今回のドラゴン島攻略の功績と、Aランク冒険者であり教官でもある魔法使いイレーナの進言もあり、ギルマスからSランクを授与されていた。

Aランク以上は一代限定ではあるが、子爵の爵位が与えられる……そちらは王国の国王からの授与なので先になりそうではあるが……そして晃達は大量のドラゴン素材をギルドに買い取ってもらい、一人当たり金貨1000枚は手に入れていた。もちろんエンシェントファイヤードラゴンの牙や鱗や魔石など、武器や防具強化に使えそうな素材は別に残してある。


「で、いかなるご要望でお越しになりましたでしょうか?」すっかり敬語に変わったスクラットが聞いてきた。


 葵が一歩前に出る、「私達は家を買いに来たのですわ、あなたの商会が不動産物件を得意としているとお聞きしましてよ!」


「なるほど! そうでございましたか、では予算的にはいかほどの物件をご要望で?」


 晃がアイテムBOXから金貨を3000枚、一気に床にぶちまけた。今回のドラゴン討伐の利益とダンジョン攻略で手に入れた金貨である。


「僕だけでもこれだけあるよ! 他の者も同じくらい持ってます」

 大量の金貨を見て、商売人の目つきに変わったスクラットはニヤリとしながら「それならば、皆様にうってつけの物件がございます、さっそく下見に行きましょう」


 そして用意された馬車に乗り込み王国の街並みや門を抜けて20分程走ったところに見えてきたのは……大きな湖とその側に建つ立派な屋敷であった。


「もしかして、あの立派な屋敷ですの?」

「さようでございます」

「最高に立派なお屋敷でござる」

「まあ、素敵!」葵、沙羅達女性陣の顔が輝く。


「あの屋敷はとある有力貴族のお屋敷でしたが、国王の反対勢力として処罰され、没落したため手放さざるを得なくなった物件です。非常に素敵な屋敷ですが、一点だけ問題がありまして……湖に近いこともあり、そこに生息する魔物が出現することがある為に常に冒険者を護衛に充てなければならないという、ランニングコストのかかる物件でございます。しかしながら皆様方はSランク冒険者ですので、それは問題になりませんな、はははは!」


 立派な門と庭を通り入り口から中に入る、2階建で10畳はある部屋が10室はあり、さらに大きな大広間がある、ダイニングとしては大きすぎるくらいである。

「広い! 広い!」「ワン!」

 はしゃいで走り回るエリザベスとコタロー。


 そして裏口を開けると大きな湖と浜辺が広がっていた。


「気に入りましたわ! おいくらですの!」

 晃達全員うなずく!


「訳あり物件でもありますから、金貨5000枚でいかがでしょう?」


「即決ですわ!」


 こうして立派な屋敷を拠点として手に入れた晃達であった。





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