第56話Sランクの実力……氷の女王!
エンシェントファイヤードラゴンと戦闘中であったNPCのAIであるSランクパーティー「闇の閃光」と「殲滅の嵐」と共闘することとなった晃達である。
とりあえず防御に徹しながらSランクの連中のお手並みを拝見とする。
「闇の閃光」のリーダーで剣士のフィツジェラルドは大振りの大剣を巧みに扱いエンシェントファイヤードラゴンに斬りかかる、魔法効果も発現して雷エフェクトが起こる。
さらに槍(ランス)を操るキーストンが加わり連携を取りながら攻撃を仕掛けている。
後方では重装備のタンクであるハンクに守られた魔法使いのミレーヌが、水属性魔法であるウォーターカッターを次々と放ち、賢者のエレインも前衛の2人に支援魔法を飛ばしている……なかなか連携バランスの良いチームの様である。
それに対して「殲滅の嵐」の連中は神官らしい1人を除くと残り7名ともバルディシュやハルバードと呼ばれる戦斧をぶん回す重戦士である。さながら冒険者と言うよりは兵士のごとき戦い方である。それぞれがかなりのパワーを持っていて強そうだが、しかしながら連携を取っているとは言い難いバラバラの攻撃である。
神官が後方で必死に回復魔法(ヒール)を掛けている。
戦いを見ていた沙羅が晃に「みんな凄く強い! 王国の兵士とかでもレベル35位が平均なのに、なんでこの人達レベルが高いの?」
「例えどんなに強いモンスターと戦って死んでも何度でも挑戦できるプレイヤーと違って、この世界の人達は自分より強いモンスターには絶対に近寄らないはず、だから経験値がたまらないからレベルも低いんだ、でもここにいる連中は命懸けで
自分達より強いモンスターに挑んで経験値を稼いできた命知らずってとこかな」
「なるほどでござるか、ルークさんもアリシアさんもやはり命知らずでござったか」桜が笑いながら叫ぶ。
苦笑いを浮かべながらルークが「ははは! 俺達エルフ兄妹は、60年以上戦い続けて来たからな、こいつらはヒューマンなのにここまで強くなったんだから大したものだ」
その間にもSランクの連中の攻撃が続いている……しかしエンシェントファイヤードラゴンは50メートルもある巨体である、彼らの猛攻もあまり効いては無さそうである、エンシェントファイヤードラゴン自体も本気で戦っているというよりは戯れているかの様な相手の仕方である。
アリシアが「そろそろ助太刀するか! ファイヤードラゴンだけに水属性攻撃が有効なのだろ?」
「そうだな相手の攻撃パターンもある程度見えたし、攻撃するか! ルーク、アリシア、沙羅、桜は遊撃、葵はエリザベスとコタローを守ってくれ! エリザベスさんはヒールと支援魔法よろしく!」
「わかりましてよ!」
「了解!」
「わかったぜ!」
「ワン!」
巧みにエンシェントファイヤードラゴンの後方から攻撃を仕掛ける「闇の閃光」に対し、真正面に布陣を置く「殲滅の嵐」晃達は右側面に位置どりをとる。
「桜、ルーク奴の眼を弓矢で射るんだ!」
「承知でござる!」
桜、ルークが弓を構え水属性魔法を詠唱しながら矢尻に鋭利な氷柱を創り出し、矢継ぎ早に矢を射っていく!
流石に1メートル以上ある巨大な眼だけに全弾命中するも、甲高い音と共に矢は弾かれる。
「なんて硬い角膜なんだ……防弾ガラスみたいだ!」晃のつぶやきに、沙羅が「槍(ランス)ならどうかしら?」と槍を目に向けて投擲した。
これは流石に嫌ったのか前脚で防御された!
「ワフ!」コタローが尻尾を振りながら興奮する!
「コタローさん! 待てですわよ、槍拾いはバハムート戦の時みたいに戦いが終わってからですわよ!」前にバハムートが光るポリゴンになって消滅してパタパタと地面に落ちて来た槍を咥えて沙羅に拾ってくるコタローは本当に幸せ一杯の様子だったな!
晃達を睨み付けるエンシェントファイヤードラゴン、頭を伸ばし噛みつき攻撃をしてくる。
中型トラック位の巨大な頭部が晃達に接近してくる、大きく開いた顎には大剣の様な牙がびっしりと生えている。
「今だ! 奴の口内に一斉攻撃だ!」
ジャンプした晃は爆破力を高めた強力癇癪玉や痺れ薬などを奴の口内に放り込んで行く、続けとばかりに桜は毒手裏剣、ルークとアリシアは氷弾をガトリングガンのように連射、そして奴の噛みつき攻撃を華麗に回避!
エンシェントファイヤードラゴンの口内で癇癪玉が爆発を起こしている!
しかし、蚊に刺された程度しかダメージが通ってない様だ。
「殲滅の嵐」のリーダー格が叫ぶ!
「そんな程度の攻撃が効くくらいなら苦労はしない! お前達邪魔だ、目の前をうろちょろするな!」
「くっ! やはり通常攻撃は通じないか……」
アリシアが嬉しそうに、「私の水精霊リヴァイアサンの出番じゃな!」
「アリシアやめてくれ! みんなを津波で飲み込んだら! あとで何を言われるか! 葵さん氷の精霊シブァで攻撃してみてくれ!」
「了解しましてよ! 氷の精霊シヴァよ現れたまえ!」
残念そうな表情のアリシアと対照的な笑顔を浮かべた葵が目の前に氷の精霊シヴァを出現させた。
まさしく氷の女王と形容してしまう圧倒的な佇まいは、周囲を凍てつく寒さで覆っていく! そして彼女の頭上には、無数の氷柱が空を覆っていく「まだまだですわよ! もっと大きく、強くですわよ!」主人の声に反応したシヴァは、無数の氷柱を一点に集合させ、ひとつの巨大な氷柱を創り上げた!
「今ですわ!」巨大な氷柱はミサイルの様なスピードでエンシェントファイヤードラゴンの顔面を襲う! 顔面を守ろうと奴は左前脚を突き出す!
その左前脚が吹き飛び血しぶきが上がった!
「なんだと……! 精霊召喚だと!」驚きの表情を浮かべる「殲滅の嵐」の面々……。
「凄いぞ! 初めてダメージが通ったぞ」嬉々とした表情を浮かべる「闇の閃光」の面々、どちらも初めて見る精霊召喚魔法に驚きを隠せない!
そういえばエリザベスさんも初めて晃の風精霊グリフォンを見た時、目を白黒させてたな。
大地が揺れるほどの音量の咆哮を上げるエンシェントファイヤードラゴン……どうやら本気モードに突入したらしい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます