第46話エルフの伝説 ドラゴン島上陸
王国から西のはずれにある港町近くにワープした晃達は町並みを抜け何隻も停留している船の中でも1番巨大な船を目指して歩いた。
4本のマストを持つ巨大な帆船の乗場には見張りの兵士がいて、晃達が近づくと「これは王国軍艦だ、乗れるのは……」
晃達の首に吊られたゴールドカードに気付き、すかさず「こ、これは失礼しました、Bランク冒険者の方達でしたか……この船は最近発見されたドラゴンが生息するといわれる島に出航予定です」
沙羅が「どんな種類のドラゴンがいるの?」
「それが……先日兵士約100人を偵察に送り込んだのですが……全滅したみたいで、情報が全くない状態であります。それでBランク以上の冒険者達を集めて偵察か上手くいけば討伐を目論んでいる次第であります、かなりの数の冒険者グループが集まりましたので、もう少しで出航になります」
ルークがニンマリしながら
「面白そうだな……乗り込むぞ!」
晃も「もちろんさ! ドラゴンの素材欲しい!」
沙羅達も「わくわくして来たわ」
「楽しみでござる」
「ドラゴンの肉美味しそうですわ」
大きな船上に上がるとざっと見ただけで総勢100名を超える人だかりが……10以上のパーティーがいるのだろう。
しかも驚いたことに全員がAIのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)であった。
晃達が現れるとさっそく教官とAランク冒険パーティーの現役を兼ねている魔法使いイレーナ率いるパーティーの8名が近づいて来た。
イレーナと神官らしき女性を除くとコワ面の男性達の攻撃型パーティーだ、レベルは全員60前後である。
「あらあらエルフさん達さっそくドラゴンのクエストに参加ですわね! 心強いですわ、しかも最近珍しいアース大陸の連中とパーティー組み直したの?」
「お! イレーナの姉貴を圧倒したというエルフさん達か? マジですげえな!」
イレーナのパーティーの連中が賞賛する。
「間近で見てたけどすげかったよ! あんな魔法見たことないぜ!」他のBランク冒険者達もざわざわと集まって来た……よほどルーク、アリシアのデビューがすごかったのだろうな! 皆んなレベル的には40から50ってところで、イレーナ達Aランクは60前後と少し高い。
晃を見つめていたイレーナが「んー……!? あなたどっかで見たことあるわね! ひょっとして、最短記録でBランク試験に合格したという伝説の疾風のアキラ?」
「そうですよ!」晃が胸を張って答える!
「あなたがAランクの剣士クラークをスピードで圧倒した試合は覚えているわ! アース大陸の冒険者のすごさを目の当たりにして驚いたわ! ただその頃からアース大陸の連中がギルドに参加しなくなったのが寂しかったわ!」
「ご無沙汰してました……」晃が照れ笑いをしながら答えた、実はプレイヤー達がギルドを利用しなくなったのは晃が1年前にアップした動画が原因だった、『ギルドでクエストやって報酬貰うより、モンスター倒してドロップ素材を商人に売った方が儲かる』の題名で流した動画以降、ギルドが過疎化するきっかけを作ってしまったのである。
そこに現れたのが『闇の閃光』のSランクパーティー5名である、「ほほう! 昨日のエルフ達も参加か? お前達の実力は分かっている、歓迎だ!」
さらにその後方から「Bランクの分際で俺たちの進路をじゃまするな! いつまでも入り口を塞いでいるんじゃねえぞ!」と男ばかりの8人パーティーがどんと晃の肩に肩をぶつけて通り過ぎて行く。
「なによ! 感じ悪いわね!」沙羅が声を上げる。
イレーナが晃に「彼らはSランクの『殲滅の嵐』の連中よ! 強力な攻撃力を持っているわ」
晃が見るとSランクの『闇の閃光』や『殲滅の嵐』の連中は80〜90のレベルでNPCとしてはかなり高く、ダンジョンに潜る前の晃やルーク、アリシアに匹敵するレベルであった。
船上にいた王国兵士の一人が「では定員になりましたので出航します! 到着予定は1時間後になります」
ゲームなので1時間で済んだか、リアルに作り過ぎたら3日くらいの船旅になるところであったと思う晃であった。
しかも、実装されたばかりのクエストにプレイヤーとしては単独パーティーで参加出来るとはなんて幸運なんだろう。プレイヤーのギルド離れが進んでいたおかげでパーティーメンバーを全員Bランクにあげるのにみんな苦労しているのに違いない、ルークとアリシアには感謝だ。
「なんてかわいいモフモフちゃんなの!」
コタローを撫で回しているイレーナに他のパーティーの事を聞いて集めた情報によると、全部で15のパーティーが参加しており、Sランクが2組、Aランクが3組、残りの10組がBランクのパーティーで総勢103人らしい。
「ドラゴンの島についての情報はもってませんか?」と晃の質問に、
「残念ながらわかりませんわ」と返答のイレーナ。
ルークがおもむろに「なんだ、お前達知らなかったのか? エルフには先代達が残した龍島の伝説が残っているぞ」
その言葉を聞いた冒険者パーティー達がルークを取り囲む「わかった! 詳しく話してやるからみんな座れ!」
ルークが話し始めると全員が静かになりSランクの2パーティーも耳を傾けている。
話の内容はこうであった長命種族のエルフの先代の話だけに何百年も昔の話なるが、旅好きのエルフ8人が帆船を建造して風魔法を操り、大海に旅立った話から始まる……そこである大きな火山を中心にした島を発見したらしい。
そこは龍の島であった、大火山の裾野にはワイバーンを大きくしたような小型龍の生息地で山を上がるにつれて中型龍が住み着いていた、小型龍はエルフの魔法攻撃や弓で撃退出来たが、中型龍は歯が立たなかった、そしてある日見てしまったのである、火山から飛び出して来た超大型の炎龍を、エルフ達は命からがら逃げて来た……という内容であった。
イレーナが「なるほどですわ、どうやら小型のドラゴンに関しては各パーティーで対処出来そうですけど、中型ドラゴン以上に関しては共闘が必要なようね!」
それを聞いた『殲滅の嵐』の一人が、「ふん! エルフごときの戦闘能力じゃ参考にならん、俺たちだけで炎のドラゴンをやっつけてやるさ!」
「ルークさんお疲れ様!」
「熱弁だったでござるよ!」
「わかりやすかったですわ、ほほほほ!」
沙羅、桜、葵がルークを褒め称えた。
「兄者、鼻の下が伸びてるぞ!」
「ワン!」
イレーナまでもが「貴重な情報ありがとうですわ、私はギルドの教官も兼ねているので冒険者達の安全確保もギルドマスターから頼まれてますの! あなた達にはぜひ手伝って頂きたいのですわ!」
沙羅が「NPCさん達って本当に死んじゃうのよね……私達で守ってあげようよ」
「そうだね、100名全員は無理だけど出来る限り助太刀してあげることにしよう」晃がそっと沙羅に耳打ちした。
「島が見えて来たぞー!」王国兵士が叫ぶ!
巨大な火山のある島が見えて来た、晃の気合も高まって来た!
ドラゴンってまさしくファンタジー世界の代名詞だもんな、前になぜヨーロッパや中国と離れた国々でドラゴンや龍といった似たような生き物が想像されたのか、いろいろな文献で調べて見た、結論から言うと、恐竜の骨を発見した古代の人々が天界にはこんな恐ろしい生き物が生息しているのか? という疑問から想像されたのではないか……。
「浅瀬の浜辺近くにつけるぞ! みんなボートに分乗してくれ!」
20人乗りボートでピストン輸送が始まった。
Bランクなりたての晃達パーティーは最終組であった、浜辺に降りた冒険者達は続々と浜辺の先の森の中に入って行く。
順番が来て風のドラプリwithエルフ兄妹と1匹も意気揚々とボートから降り立った。
「わくわくして来たぞ!」晃が叫ぶ!
「私もドキドキしてきたわ」と沙羅。
「ドラゴンさんきっと強いのでござる」
「ワン!」
さて彼らにどんな冒険が待ち構えているのか?
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