第43話エルフ兄妹と1匹の王国奮闘記 ギルド編④
B級昇格試験に飛び級で挑む事となった、ルークとアリシアの前に立ちはだかるのは元Aランク冒険者で剣豪と呼ばれるクラーク、現役のAランクにして教官を兼務する大魔法使いイレーナである。
「どうやら剣士と魔法使いの組み合わせらしいな、アース大陸の晃の様に相手のレベルや職業は見破れないが、まずまずの使い手だろうな……Aランクらしいし」ルークが魔剣グラムを鞘から抜く、背中にはデスマーリンからドロップしたロッドを差している。
弓矢はかさばるので今回は後ろに置いてコタローに見張り番をさせている。
「まあ、油断はしないが、まず相手の力量を見極めるか」アリシアも神剣白狐を腰から抜いた。
それを見たイレーナは「ふふっ! クラークよあのエルフの男が持ってる黒光りする剣、魔剣じゃあないのかい?」
「まさかな、貧乏種族のエルフごときに魔剣が手に入れられるとは思えんが……まああいつらはここまで来たのだから、エルフの中では強い方なのだろう……本物の強さという物を味わったことのない思い上がった弱者であるあいつらに、このドワーフが鍛造したミスリルの名剣の切れ味を殺さない程度に味あわせてやるとするか……ふふふ」と腰からミスリル製の剣を抜いた。
イレーナが「二人ともクラークひとりで倒さずに一人は私の獲物をよこすのですわよ! 確かマリッサの話だと爆裂魔法を使える魔法使いがいるらしいわ!」
「心配するな魔法が得意な方を残してやる!
武技上段閃斬!」
その言葉と共にルークに向かって素早く移動、
鋭く且つ力溢れる剣を大上段から振り下ろした。
ルークはすかさず受け太刀をした。
甲高い金属音が発生する。
「ほほう! よくぞ俺の受け太刀ごと相手を粉砕する上段閃斬を受けたな! 力だけはある様だな、では貴様の剣技を試してやろう!」
クラークから凄まじいばかりの攻撃が始まる、
ルークは魔剣グラムで受ける一方であった。
「貴様なかなかの剣さばきだ! 剣技はまだ身に付いてない様だがな、すると貴様が魔法使いの方か?」
ルークが苦笑いしながら、「そうかもな、まだ魔法剣士になって2日目だからな……」
「はっはっは! ご冗談を! まあ貴様が剣を得意としてないのは理解した、まあBランクのレベルとしては充分合格だ! イレーナに魔法のテストをしてもらうんだな! イレーナ! こいつは任せた! 俺はエルフの女剣士とやる!」
それをギャラリーとして見ていた、ギルドマスターであるグローストークはSランクの『闇の閃光』のリーダーである剣士フィツジェラルドに「ほう、あのクラークの猛攻を受け止めたか……使える人材かもな」
「不思議だ……剣の腕は大したことないのだが、足のさばき方、体さばきには凄みを感じる、充分将来性がある」と余裕の表情でフィツジェラルドも応ずる。
さて、剣士クラークはアリシアと向き合っている、彼女も剣を構える。
「ふふふ、どうやら剣士はお前の方だったみたいだな……構えに隙が無い」
自然体で構えを取るアリシアに対しクラークは攻めるタイミングを計りかねていた。
一方ルークは魔法使いイレーナと向き合う、
イレーナは1メートル50センチはありそうな長めのロッドを握っている、ルークも魔剣グラムを腰に差し、デスマーリン戦でドロップした黒龍のロッドに持ち替えた。
「あらあらなんて美しい坊やかしら、私の好みだわ! ギルドマスターに本気で戦う様言われてますけど、あなた魔法に対する防御に自信は?
間違えて殺してしまうわけにはいけませんし……」
「大丈夫さ! どんな魔法でも防御する自信があるぜ、遠慮なく全力で来ていいぜ!」
「あらあら大した自信家だこと、せいぜい楽しませてね! 火の精霊よ……炎の球にて奴を焼き尽くせ!」30なかばの年齢だが美貌を持つイレーナの詠唱と共にファイヤーボールがロッドの先から次から次へと連射されルークに襲いかかる!
それを見ていたB級、C級の冒険者達は口々に
「大魔法使いイレーナの得意技炎弾撒布だ、あんなの食らったら、身体中火傷だらけになるぜ、容赦無い攻撃だ……本当に試験か? 公開処刑では……」
一方アリシアと対峙する、クラークは「なかなか良い構えだが、攻撃してこないのか?」
アリシアが微笑みながら「どうぞお先に! あなたの技を見極めたい!」
「俺の技を見極めたいだと……ふっ! まあいい、お前が怪我しても治療出来るように神官を用意してあるからな! 死なない程度に攻撃してやるか、武技大回転斬り!」
クラークの大ジャンプしながらの回転斬りがアリシアに襲いかかる!
アリシアは容易に見切ってかわす、すかさずクラークから目にも留まらぬ速さの三連突きが繰り出された。
アリシアはこともなげに三連突きを剣で受けた。
ギャラリーから「あの女剣士すげぇ! クラークの必殺大回転斬りからの三連突きを止めたぞ!」
その頃、次々とルークに襲いかかっていたファイヤーボールが彼の手前で防御された
「水の精霊よ……ウォーターバリア」
ルークが出現させた水の壁がファイヤーボールを防ぎきり、さらに前進して行きイレーナを飲み込んだ。
水浸しになるイレーナ!
ルークとアリシアが同時に叫ぶ「その程度か? 本気でこい!」
「ならば取って置きを見せてやろう!」とクラーク。
「どうやら私を本気にさせました様ですわね! 後悔しても遅いですわよ!」
濡れたイレーナ!
表情の変わった教官達の手加減無しの攻撃が、
今始まろうとしていた……。
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