第36話お楽しみ宝物庫……隠し部屋!


 ダンジョンのラスボス悪魔公爵アスタロトにアリシアの右腕が切断されるという悲しい出来事が起こったものの、晃が近代手術魔法を生み出し彼女の窮地を見事に救ったのであった。


 桜が「晃お師匠! 手術をしてしまうとはすごいでござるよ、どこで覚えたでござるか?」


「いやぁ、アニメのBJ先生や漫画のJ先生の見よう見まねっすよ、ある程度縫合したところで部位欠損ではなく、怪我とみなされ中級のヒーリング魔法が効いたのだろう。本当に治したのは桜のヒーリング魔法だよ!」


「おほほほ! 晃君ご謙遜ですわ! 見事な手術でしたわよ」葵さんが褒める。


 アリシアが微笑みながら「晃も桜も、ありがとう! 私の右腕の恩人だ!」

と晃と桜に寄ってきてハグしてくれた。


 アリシアの豊満な胸が……晃の腕に……。

「ちょ! アリシアさんサービスしすぎ!」

沙羅の抗議を聴きながらニヤケ顔が止まりそうもない晃であった。


「ワン! ワン!」コタローが吠えた!


 アリシアが慌てて「最大の命の恩人はコタローと虫さん達でしたわね!」とコタローを抱き上げて首輪に戻っている金属甲虫達を撫でてあげる、首輪が誇らしげにプルルンと動いた。


 沙羅が「私の左腕のガントレットのレティみたいに貴方達にも名前をつけてあげないとね! 首輪だけにネッキーで良いかしら?」


「ワン!」コタローの返事とともに首輪が縦に揺れた。

「おほほほ! 気に入ったようですわね!」

「はははは!」


 ルークが「そういえば晃、アスタロトを倒した闇属性魔法だが、すごい威力だったな! いつの間にあんな魔法覚えたんだ?」


「それが……20階層のボスだったデスマーリンの亡霊の声が聞こえて……教えてくれたんだよね」


 その時、全員の耳に「こぉらー! わしを勝手に殺すな! 今でも現役バリバリで20階層のボスやっとるわい! まあアンデッドじゃから間違ってはないがな、はっはっは! そこに使い魔がおるじゃろ、暇つぶしにそいつの目を通してお前達の戦いを見ておったのじゃ!」


 みんなが周りを見渡すと、壁にフクロウが一羽止まっていた!


 桜が「そういえば、私達が露天風呂入ってた時もフクロウを見たような……」

「最低! エロじじい」沙羅が叫ぶ!


「ま、待て! 濡れ衣じゃ! アンデッドになって肉欲などとっくに消失しとるわい」


「はははは!」

「おほほほ!」

「デスマーリンさんありがとう! 疑ってごめんね!」


「こちらもちょうど良い退屈しのぎになったわ、

ではさらばじゃ! はっはっは」


 晃が「ところでアスタロトからドロップした魔剣グラムだけど誰か欲しい? 剣だから職業的には、アリシアさんかな? ガーディアンの葵さんは大剣しか装備出来ないし……」


 アリシアは「私はこのお気に入りの愛用の剣があるからな! それに葵からフローラ王国騎士団の魔法使い愛用のメイスをもらう約束をしてるからな、楽しみじゃ!」


「さすがアニオタ、そういえばアリシアさんの剣て、魔剣と打ち合ったのに刃こぼれひとつしてないね! 実はかなりの名剣だったりするの?」


「名剣かどうかは知らんが、幼少の頃母親に最後に会った時に、母がくれたものだ!」


「へぇーアリシアさんのお母さんて剣士だったのかもね」


ルークが「だったら俺が魔剣グラムもらってもいいか? アスタロトのような魔法カウンターを使う相手に対し、弓と足技格闘だけだと力不足なことを改めて感じたのでな……これからは魔法剣士の修行も積むぞ!」


「よし、魔剣グラムはルークに進呈しよう!

ではお楽しみのダンジョンクリアの報酬である宝物庫に突入だ!」


「おー!」

「ワン!」


 アスタロトのいた場所の後方の大理石の壁に扉があり、それを開いた……。


「おーーー!」

「ちょ! すごい!」

「まじかよ!」

 

 20畳はあろう広さの部屋に金貨や黄金の首飾りなどの財宝が所狭しと溢れんばかりに……。


「エルフで一番の金持ちになったぜ!」とルークが感動しながら叫ぶ!


「おほほほ! 龍ヶ崎家の資産がさらに増えますわね!」

 ゲーム内資産だけどね、葵さん……。


「すごいでござるよ! さすがダンジョン! 苦労した甲斐があったでござるよ」桜も興奮気味だ。


「単独パーティーだけに一人当たりの取り分、半端ねぇ! 僕がアイテムボックスに入れるんで街に帰ってから人数割りで分配しましょう」晃の提案にアリシアが、

「助かるぞ晃、こんな大量の宝、運びきれなかったわ!」


 晃がせっせとアイテムボックスに大量の金貨やら黄金の花瓶やら首飾りなどのお宝を収納していった……。


 すっかり空っぽになった宝物庫には大理石の床に固定された立派な大理石の椅子が残るのみとなった。


「……?」ルークとアリシアの視線がその椅子に釘付けとなり、じっと固まっている。


「その椅子、何かあるの?」沙羅の問いにアリシアもルークも聞こえてないかのように沈黙のままである。


 アリシアが突然走り出した、「兄者、懐かしいのう!」

「おう!」ルークもなぜか興奮している。



 椅子に駆け寄ったアリシアが、「そうそう、この椅子の腰掛けの裏側に仕掛けがあってな……」

と言いつつ仕掛けを回している。


 宝物庫の奥の壁がいきなり下降しはじめ、さらに大部屋が……。


 裏ルート攻略大好きマニアの晃の目が輝く「隠し部屋? ナイスですよアリシアさん」


 隠し部屋の中にいたのは、3メートル近い大きさの真っ白なオーラを放ち純白のフサフサした毛で覆われた7つの尾を持ち、真紅の目のメス狐のモンスターであった!



「ついにわらわの元にたどりついたか! ヒューマンとエルフの冒険者達よ! わらわこそ、このダンジョンの真のマスター、神獣 7尾白狐である」


「あちゃー、こりゃまたお強そうなのが現れたな連戦はきついぜ!」晃が叫びながら妖刀イザナギ改を抜く。


「ちょ! 戦いの準備してないわ!」沙羅が焦りながらロンギヌスを取り出す!


 ルークがそれを手で制し、「こいつの相手は俺とアリシアに任せて欲しい! アリシア行くぞ!」

 弓矢を取り出したルークがアリシアに声をかける。


「もちろんじゃ、兄者!」剣を抜きながらアリシアも呼応する。


 ルークが火属性の魔法矢を立て続けに放って行く!


 7尾白狐の尾に魔法で剣が6本創造され、それぞれの尾が動き、ルークの放った火矢を次々と叩き折っていった!


 そこにアリシアが飛び込んで行き、6本の剣を相手に打ち合う!


 6本の鋭い剣が襲いかかってくるが、アリシアは剣撃乱舞で対抗する!


 その時、白狐の剣が白いオーラを放ち必殺スキルが発動!

 白く光る球が散弾銃のように多数アリシアを襲った!


「ロックウォール!」ルークの魔法による岩のバリアがかろうじてアリシアを守る。


「やばいでござるよ! かなりの強敵でござる!

助太刀しなきゃ!」桜が助太刀の体勢に入ろうとする。

 コタローも興奮しながら、「ウー!」といまにも父ちゃん母ちゃんを助けようと飛び出そうとする。

 興奮したコタローを沙羅が抱き上げて、「大丈夫よ! 心配の必要ないわ!」とにっこり微笑む。


「どうゆう事でござるか?」


 晃も微笑みながら「ルークとアリシアの表情見てみなよ!」

 葵が「あんなに楽しそうなルークとアリシアの表情、アキバ以来ですわね!」


 そう言われて桜が見たルークとアリシアの表情は幸せ一杯に包まれているかの様であった。



 ルークが「あの剣にはあんな必殺スキルがあったんだな! アリシアお前もやってみろ、イメージするんだ!」


「兄者! 承知した、やってみる!」

アリシアの剣からも白いオーラが浮かび上がる、

そしてショットガンの様に光弾が放たれた!


 白狐はよける気がないのか身体全体で受け止めた! それでもHPゲージは3割も減っていない。


 コタローは敵から殺気がないことを理解したのか沙羅の腕の中で撫でられながら気持ち良さそうにあくびをしている。


 葵が桜に「桜、いいかげん気付きまして? コタローでもわかってますわ!」


「なんとなく……葵姉はどこで気付いたでござるか?」

「前にアリシアが焼肉の席で母親の話をした時に、父が母親に会いにいくのに洞窟のようなところに入っていって、たくさんの敵と戦ってたとか言ってましたもの、あの白い毛とルークのような真紅の目をみて、ピンときましたわ!」


「それはすごい!」沙羅と晃がハモった。


沙羅が「晃君はどこで?」


「だって白狐の剣、アリシアの剣と全く同じだからなぁ! 沙羅は?」


「さすが武器オタクね! 椅子の仕掛けをアリシアさんが懐かしいって言ってたからね、何かあるかも? と注意して見てたら、あの2人の幸せそうな表情だもの!」


 そんな晃達の会話をよそにルーク、アリシアの白狐との戦いは続いていたが……。


「もうそろそろいいじゃろ! ルークもアリシアも、見違えるくらい強くなったぞ!」


 突然、白狐の姿が白い霧のようなオーラでつつまれ……再び現れた姿は、白い和風のドレスを着ており、アリシアが30才位に成熟したような美女。

 白い髪に白い肌、そしてルークと同じ真紅の瞳の持ち主である。





「母上ずっと……会いたかった!」アリシアが涙を流しながら母親に抱きつく!


「母様お久しぶりです!」ルークも照れ笑いこそしているが瞳にはうっすら涙が。


「お前達に会うのは60年ぶりかしらね! 

すっかり大きくなって……」


「ううううっ……」アリシアは母さんに抱きついたままだ。



 かくしてルークとアリシアは母親と久しぶりの再会を果たしたのでありました。



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