第26話エルフのアキバ巡礼 ドッグランデビュー

 40階層攻略を終えて、41階層の野営地にたどり着いた晃達に運営からの素敵なご褒美として、ルーク、アリシア、コタローをVRセンターシティに半日限定ではあるが、招待できることとなった。


 野営地の真ん中にある光るゲートを通り抜けた先には……。無数の高層ビルによる綺麗な夜景が出現!


「マジか! 本当にアニメと同じ世界じゃないか!」ルークが驚嘆しながら叫ぶ!


「綺麗すぎて言葉が出ないわ! あの大きな建物一つ一つが石で作られているとか……凄すぎるわ!」アリシアも驚きを隠せない。


「ワン! ワン! ワン!」コタローも見える物全てが珍しくて興奮状態である……。


 人だかりが出来始めた「コスプレ?」

「エルフのレイヤー?」

「美男美女よ!」


 エルフの民族衣装に身を包んだルークとアリシアはあまりにも目立っていた。


 センターシティに戻って来た時点で、晃や沙羅達はログインした時の私服に戻っていた、桜はセーラー服……。


「エルフさん写真撮らせて!」

「私も!」


 人がどんどん集まって来た、父さん母さんを守ろうと

「ウー! ワン!」とコタローが立ちはだかるが、

「なにこのモフモフかわいい!」


 と撫でられまくり、すっかり尻尾を振って懐柔されてしまう始末である。


「こっちこっち!」沙羅の手招きに沿って、裏道を通って明るい場所に出た……。


 彼らの眼前には壮大なファッションモールが出現!


 アリシアが感嘆しながら、「あそこにあるのは服なのか? あんなに沢山の服見たことないぞ!」


「すげーな……」ルークも唖然としている。


「ここは龍ヶ崎系列のファッションモールですわ! ルークさんとアリシアさんには好きな服を着てもらって、着た服全てを経費で落として差し上げますわ!

 そのかわり服を着た姿を動画撮影させてもらいますわ、このファッションモールのモデルとして、HPにて流しますのよ、よろしいかしら?」


さすが龍ヶ崎葵! 超高校級の商売人の称号は伊達ではない……。


「ここにある美しいドレスを貰えるならなんだってするぞ!」アリシアさんあっさり陥落!


「俺だって、魔王に魂を売っても良いぐらいだ!」はい、ルークも陥落。


「コタローにも犬用の可愛い服がありますの、よろしくですわ!」


「ワン!」コタローもついでに陥落!


「さっそく契約書を作成しましたわ、指紋で構いませんのでハンコをついて貰えますわね!」


 さすが準備が早い!


 こうして龍ヶ崎葵が作成した契約書にルークとアリシアの指紋と、コタローの足形が記されたのである。


 エルフの二人60年以上生きてるから老獪さが身についても良さそうだが、所詮はエルフの里の田舎者……、葵さんから見ればちょろいもんですな!


 すぐに葵が手配したカメラマン、スタイリスト、ヘアメークさんetcが到着、撮影が始まる。


 白髪のロン毛に紅い目、黒服を着たルーク、白髪のストレートに蒼い目、真っ赤なドレスを着たアリシアこの2人が歩くと、ため息が出るぐらい美しい……幻想的な非日常だ!


 今度はカジュアルウェアのアリシア、カジュアルジャケットのルーク、ちゃんちゃんこのコタロー! これもまた、日常の中の美学って感じで絵になる……。


 父ちゃん母ちゃんと一緒に着せ替え人形になったコタローは、プルプルプルプル尻尾を振って満足そうな顔をしていた。彼の人生の中でも最高級の幸せの真っ最中なんだろうな……。




 撮影も無事終了して、沢山の服の入った袋を抱えながら晃が「ルーク、アリシアさんお疲れ様! 腹も減ったでしょ? リクエストあります?」


 アリシアが「いやいや撮影も楽しかったぞ! 確かにお腹が空いた、ハンバーグとかいうものが食べて見たいな!」


 ルークがすかさず、「メイド喫茶でオムライスを食べてみたいぜ!」


 晃が「じゃあ、料理が美味いので有名なメイド喫茶に連れて行ってあげよう! VRセンターシティのアキバ地区にレッツゴー!」


「お! アニメの聖地、秋葉原のことだな! 燃えてきたぞ!」

「楽しみじゃ!」ルーク、アリシアともにノリノリである。


 VRセンターシティアキバ地区……。


 現実の秋葉原をイメージして造られたこの地区は、オタクの聖地でアニメショップ、ゲームショップ、ゲーセン、メイド喫茶などが並び、通りはオタクや世界中からVR訪問してくる外国人で溢れている。


 ルークやアリシアは目立たない様にバンダナを巻いて耳を隠しているので、外国人さんに見えるためここでは騒ぎは起こらないだろう。


 アリシアが「食べ終わったら、同人誌とかいうのを買いたいな!」さすが腐女子予備軍!


 沙羅が「私も初めてなの! あとで一緒に買いに行きましょう!」

「楽しみでござるよ!」

「あらあら! 楽しみですわーほほほほ!」

 桜、葵までノリノリだな……。


 著作権関係の法整備も以前より進んでおり、ここで売られている同人誌などは原作者公認の物のみとなっており、売り上げの一部は原作者に著作権使用料として還元されるしくみとなっている。


 メイド喫茶のドアを開けると、6人のうさ耳、猫耳、犬耳などを付けたメイドさんが一斉に「お帰りなさいご主人様ー! ご主人様のお帰りを心からお待ちしてましたー!」と迎えられた。


「キャハハ! 面白ーい!」

「おほほほ! 本物のメイドとは少し違いますわね」沙羅や葵受けすぎ!

 ルークも「少し照れるな、ははは!」


 みんなでオムライスやらハンバーグ、ナポリタンスパなどの定番メニューを頼んで行く。


 オムライスにはうさ耳のメイドさんがルークやアリシアやコタローの似顔絵をケチャップで描いてくれた!


「上手でござる!」

「ワン!」

 コタローも大喜びだ!


 アリシアがハンバーグを一口食べて「なんて美味いのだ! 肉汁がジュワーと口の中にとろけて来る!」


 ルークも「まじ美味いじゃねーか! オムライスもこの味付けライスと卵のハーモニーがなんとも絶品だ!」


 ハンバーグやオムライスには食べ慣れた晃だが、初めて食べた時は感動したしたもんね……。


 コタローにも少しずつ盛って食べさせてやる


「ワン! ワン!」尻尾が超高速で振られている。


 食後にミックスジュースを頼むと犬耳のメイドさんが「フリフリ、シャカシャカ、萌え萌え、キュンキュン! 美味しくなーれ!」

 と呪文を唱えながらシェイクしてくれた!


「さすがに照れるな……」

「ちょ! キャハハ! 晃君真っ赤になってるわよ!」沙羅に突っ込まれちゃいました!

 ルークが「獣人族はアース大陸にもいるのだな」

 いやいや付け耳だから……。


「獣人族って? ワールド内では見たことないな?」晃の問いに、アリシアが答える。


「ダンジョンの入り口の向こう側に大きな山脈があっただろう? 昔は坑道があって山脈の向こう側に行けて、その先には犬族、猫族などの亜人やドワーフの国やダンジョンの20階層のエリアボスのデスマーリンが言ってたカスティーリャ魔法公国などがあるのだが、災害で坑道が通れなくなって今は閉ざされている」

 

 なるほど未開放エリアなのか! いつかバージョンアップで開放されるのかもな……。


「さあて! お腹は満足したし、次はどこに行く?」晃が問いかけると、ルークとアリシアが

「まずは同人誌! それからカラオケだ!」

 と同時に答えた!


 沙羅が「カラオケ? 私達の国の歌唄えるの?」


 アリシアが「私達エルフはもともと歌が大好きだからな! アニメソング全部覚えて、お前達が学校に行ってる間は野営地でいつも兄者と合唱してたもんだな!」 野営地でアニソン合唱するエルフ兄妹とか、他のパーティーの連中が見たら、かなりシュールな絵に映ったに違いないな……。


「それは楽しみでござるよ! 行くでござる!」

「おー!」

「ワン!」


「いってらっしゃいませ! ご主人様!」


 メイドさん達の見送りを受けながらまずは同人誌ショッピングを楽しんだルーク、アリシアである。


 もちろん男女グループ分かれての行動である。


 原作者公認とは言え、それなりに刺激的な物もある、そういった内容の本に経験値が少なく耐性の低いルークは「おー! すげぇ! マジか!」などと騒がしくて恥ずかしい……。


 女性陣も同様であった……。


 レジで会計の際「この本は18歳以上向けとなっておりますが大丈夫でしょうか?」と聞かれ!


「64歳だ!」「63歳だ!」とドヤ顔で答えるルークとアリシアであった! 葵さんからモデル料も貰っていたらしい!


「さあ! 次はカラオケ行くよー!」

みんなで楽しくアニソン歌いまくった!


 コタローも歌い手と舞台に一緒に上がり周りをグルグル回って楽しんでる!


 次はゲーセンに行って最新のVRリズムゲームやらVRダンスゲームを、みんなではしゃぎながら遊びまくった!


「楽しかったぜ! まだまだ遊び足りないが、あと60分くらいしか残ってないのか!」ルークが残念そうにつぶやく。


「きっとまた運営もこういう褒美用意してくれるよ! その時はカーヤ、マーヤも呼んでみんなでいっぱい遊びましょう! 最後はどこに行こう?」晃の問いにアリシアが、


「そうだなカーヤ、マーヤにも楽しんでもらわないとな、そういえば兄者と私は思いっきり楽しんだが、コタロー中心の遊びがなかったな、犬が楽しめるところはないか?」


「それならいい所があるよ、任せなさい!」


 晃に連れられてついた場所はナイターのVRドッグランであった!


 VRドッグランとは忙しい社会人の飼い犬のストレス発散用に開発された。


 犬は家にいながらサングラス端末を付けて、走りまくっても傷つかない様に空気のゴムボールに入り、外の犬達と交流をしたり、走り回ったりするシステムである。


 100メートル四方の敷地内には多数のペットと飼い主さんがいた。


 柵を開けてコタローを中に入れるとすぐにビーグル、ゴールデンレトリバー、プードル、柴犬などが寄ってきた、異種交流初めてのコタローはびびって逃げようと柵に張り付く!


「コタロー! 頑張るでござるよ!」

「コタロー! 勇気を出すんだ!」

「コタロー! みんなと遊んで来い!」


 姉ちゃん、母ちゃん、父ちゃんの声援を受けたコタローは勇気を振り絞って前に出た!


 みんなお尻の匂いを嗅いで知り合った後は元気に走り回り始めた!


「ワン! ワン! ワン!」


 ぐるぐる他の犬達と走り回るコタローは本当に勇ましくもあり、頼もしくも見えたのは、親バカ目線ではありますな!


「ちょ! かわいい! ドッグランっていいわね! 今度近所の本物のドッグランに遊びにいこうかな!」沙羅が楽しそうである。


 それから時が流れ、興奮冷めやらぬコタローを呼び戻して、野営地のゲートに戻りテントを設営した晃達でありました。


「楽しい経験だった!」

「また連れて行ってくれ!」

「ワン!」


 ルーク、アリシア、コタローのお礼を聞いてから、


「お休みー!」

「お休みでござるー」


 と満足気にログアウトした晃であった……。


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