第25話肉弾戦決着! 運営からの素敵なご褒美

 目の前に現れたのは3メートルはあろう巨大なG人間型魔族、その黒光する筋肉ボディは物理特化型ファイターであろう……。


 右手には先の尖った突起が無数に付いた金属性棍棒でオーラも放っている。


 ルークが「晃に見せてもらったアニメにこんな昆虫人間が沢山出てくるやつがあったな?」


「あれよりもデカイよ! 昆虫の能力が身長に比例して反映されたらヤバイ!」


 G……それは2億5000万年前の恐竜時代の前から生息している、生きた化石と呼ばれる生物で、そのスピードは1秒間に身長の50倍移動出来ると云われる。


 人間の身長換算で時速300キロ、ましてコイツはさらにデカイ!


 噛む力も体重の50倍とされていて、もはや考えるのはやめておこう……。


 本来なら筋骨隆々のパワーファイターは晃の得意とする相手である、得意の回避力でヒットアンドアウェイ戦法で時間をかけて倒せるのだが、大型G人間は明らかにスピードもありそうである……。


「崇高なる我が力を存分に味わうが良い!」

 と言うや否や、信じられないスピードで葵に接近、棍棒で打撃を繰り出す!


 防御に特化している葵が大楯で防ぐも、10メートル近く吹き飛ばされた!

「葵さん大丈夫?」

 晃の問いに「大丈夫ですわ、この殿方スピードも破壊力も半端ないですわ。気をつけた方がよろしいですわ!」


 次は晃に向かって一瞬で接近して来た、速い! 棍棒が唸りを上げて襲いかかって、かろうじて妖刀イザナギ改で受け止めるが、葵同様に吹っ飛ばされた。


 吹き飛ばされながらも火炎瓶と癇癪玉をインセクトジェネラルtypeGに浴びせる、炎と爆発に包まれながらも無傷の彼が現れた。


 後ろに回りこんだアリシアと沙羅が剣と槍で突きを入れるが棍棒で弾かれる。

 沙羅が棍棒の直撃を喰らいそうになり、晃が獄炎斬を放ち、軌道を変えさせ避難させる。

「ありがとう! 晃君」


 ルークと桜が魔法の弓を放つ!

 桜から放たれた炎を纏った矢、ルークから放たれた風魔法でスピードも威力も強化された矢もことごとく棍棒に弾かれた!


 アリシアが魔法攻撃すべく「水の精霊よ……」

 詠唱を始めた瞬間に素早く移動してきて棍棒攻撃を喰らう!

 なんとか剣で致命傷は防いだアリシアだが、飛ばされた。


「動きが早すぎる! 棍棒をなんとかせねば……パリィフォーメーション!」

 晃の号令にみんな集合して、葵の大楯を中心に後ろにつける。


 そして葵の背後から弓矢などの遠距離攻撃を仕掛けた。

インセクトジェネラルGが矢を弾きながら葵の大楯に突進してきた。


 奴の棍棒が上段からものすごい勢いで振り下ろされた!

 その時、葵の大楯でスキル技パリィが炸裂!


 大楯による受け流しで相手をよろけさせる技であるが、今回はみんなで葵の背中を支えているので力強いカウンターとなった!


 勢いよく弾かれたため、インセクトジェネラルGの手から棍棒が離れ、後方に弾け飛んで行った!


「さあ! チャンスだ!」


攻め込もうとした瞬間! 奴がファイティングポーズを構えた!

 ルークが「奴から漢を感じる! 格闘技には格闘技で応じないとな!」


 晃も同調して「そうだな! 一対一の正々堂々の勝負だ!」刀を鞘に収め外して下に置いた。



 呆れ顔の女性陣は「男ってややこしい生き物なのだな!」

「理解しづらいでござる」

「あらあら! オホホホ!」

「キャハハ! ルークさんと晃君が戦った時もそうだったわね!」



 ルークが「晃、先に行かせてもらうぜ、アニメで覚えた、ハリケーンフックやら龍砲とかを試したかったからな」

とインセクトジェネラルGに相対する。


 ハリケーンフックとは人気ボクシングアニメの必殺技で超高速で腕を回転させながらフックを放つと桁違いの威力を生む。小学生の頃は晃も自分にも出来るはずと何日間も練習したもんだったな……。


 龍砲とは相手の目の前で右脚と左脚を超高速交差させることにより、カマイタチを起こし……人気格闘技アニメの必殺技だ。


 アニメの必殺技が出来るとか思い込み始めたルークの厨二病患者具合が心配になってきた……。


 ルークとGがファイティングポーズを構えていたので「ファイト!」と声かけすると!


 Gから凄まじいばかりの左右の拳のラッシュが始まった! ひたすらストレートだけの単調な攻撃だが、3メートルの上背と疲れを知らぬボディだ!


 1メートル90センチのルークがかなり小柄に見えてしまう!


防戦一方のルークがサイドキックで相手の連打を止めて、「ハリケーンフック!」

ニヤケながら見ていた晃の顔から笑みが消えた!


 なんと3メートルの巨大G人間が吹っ飛ばされた!

さらに畳み掛けるように逆立ちしながら脚を交差させ、


「龍砲!」インセクトジェネラルの触覚が1本切れて飛んでいった……。


沙羅達が「ルークさん! すごい! アニメの必殺技再現してる!」

「カッコいいでござるよ!」

「さすがですわ!」


 晃は黄色い声援が飛ぶのを悔しそうに見つめながら、

「なるほど風魔法を応用しながら技を放っているのか! その手があったか……」


 しかし打撃格闘技同士の戦いでは、やはり階級制があるように、重量差が出始めた、疲れで立ち止まったまま殴り合う2人……ルークがふらつき始めた。



「選手交代! 晃行きまーす!」


「惜しかったぜ、あとは頼んだ!」


 インセクトジェネラルtypeGと睨み合う晃、体重差を考えると柔術やコマンドサンボで戦うべきだが、とりあえず打撃で行けるところまでやってみるか……。


 まずは剣術スキルの明鏡止水を使う、格闘技にも応用できるはずだ!


 ……静かでいて研ぎ澄まされた感覚が晃の精神の中に芽生える。


 相手の大振りなパンチを見切りでかわしながら、的確なカウンターパンチを素早く入れて行く。

 そしてアニメで見た必殺技の右回し蹴り、左回し蹴りの同時叩き込みに成功!

 現実ではどんなに練習しても不可能だったがゲーム内では夢がかなった!


 ただし! 今の攻撃はGの闘志に火をつけたようだ! 怒涛のラッシュが始まる! 晃は防戦一方ピンチだ!


 かわし切れず吹き飛ばされた!


 やはり打撃格闘技では無理があった、奴のパンチに飛びつき右腕を腕ひしぎ逆十字固めに極めた!

 バキっという音が聞こえたが、立ち上がり晃を振り回して岩場に叩きつけて来た! 岩が粉砕され、晃のHPが3割減。


 腕を折られながらも痛みを知らない蟲人間恐るべし……。


 折れてない腕で殴りつけて来たので、腕をとり足を使い三角締めを極めた……完全に極まっている。


 5分は経っただろうか?


  Gバージョンに変身してからは、無口だった彼が突然喋り始めた

「お前なかなか人間にしてはやるな!

 あのエルフもそうだが、初めて俺に対して肉体だけで挑んで来た、楽しかったぜ……俺の相棒をお前達なら任せられそうだ」

 と言い残すと、光るポリゴンとなって消えていった!


 沙羅達が駆け寄って来た! コタローもいる。


「晃君ナイスファイト!」

「ワン! ワン!」

アリシアが「最後なにか言い残してたわよね?」

「相棒がどうとか……」

 その時コタローが気配を察知して

「ワン!」

 皆がコタローの視線の方角を……。

 棍棒が飛んでった方向から銀色に輝く金属甲虫達が200匹は飛来して来た。


沙羅が「あの槍や盾だった虫達よね?」と問いかけるとウンウンとばかりに揺れる。

「キャハ! 言葉わかるんだ! 晃君、エリアボスに相棒を頼むって言われたんでしょう? 面倒見てあげたら?」


「やだよ武器防具屋の岩田さんに売りに行くか……」

 虫達が必死に横に揺れる!


 沙羅の周りを回り始めた。


「沙羅に懐いちゃったみたいだね、なんとかしてあげたら?」


 虫達必死に縦にウンウン……。


「でも虫が何匹も群がってるのは、あまり綺麗な光景ではないのよね! 可愛いい蝶々型の肩当てとかなら採用もありだったかも……」

 すかさず100匹が一つの金属蝶々型に変形、沙羅の左肩にとまり肩当てとして固定化された!


「沙羅さんに忠実な部下が出来たね! ははは!」晃が笑いながら言うと、


「まあ! ここまでされたら、悪い気はしないわね! 問題は残りの100匹よ! ロンギヌスがあるから武器は要らないし……。そうだコタローの首輪になりなさい! コタローのピンチの時は守るのよ!」

 ウンウンと縦に揺れ、残りの虫達はコタローに近づいて、首輪となった!


 最初はビクッとして怖がったコタローであったが! ひんやりとした感触に満足したのか気に入ったみたいだ「ワン! ワン!」


 桜が「エリアボスがドロップしたレアな首輪だから大事にするでござるよ!」と撫でてやると、


「ワン!」


 31階層の野営地で少し休憩を取っただけで、晃達はさらにダンジョン攻略を進めて行った……。


 40階層のエリアボスは4メートルはあろう、巨大なゴーレムが待ち構えていた!


 ゴーレムの圧倒的なパワーと想像を絶するタフな防御力に苦戦しながらも、2時間を超える激闘を制して41階層野営地までたどり着いた晃達であった……。18時過ぎの頃良い時間になっている。


 巨大な野営地に入るとアナウンスが流れて来た!


「おめでとうございます! あなた方は激戦をくぐり抜けて来た、本物の勇者です! ここまでたどり着いたご褒美として、パーティーを一緒に組んでいるAIのNPCやテイムドモンスターを半日限定でVRセンターシティにご招待出来ます」


 野営地の真ん中に光るゲートがあり、何組かのパーティがセンターシティに移動しようと並んでいる。


 アリシアが歓喜の声で「私やルークやコタローがアース大陸に行けるってことか?」


「そうみたいだよ!」晃が答えると、

「マジか、アニメの聖地に行けるのか? やったぜ!」とルークも大喜びだ!

「ワン! ワン!」



運営側の粋な計らいである、みんなで光るゲートを期待でワクワクさせながら通過した晃達御一行でありました。

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