第24話テイムはレア? 蟲将軍

 ルークや沙羅達は休憩所でコタローとたわむれているところである。

「さあ昼飯できたよー!」晃が声をかける、

「待ってました!」

「ワン!」


 晃が作った昼食は静岡の新鮮なジャガイモ、玉ねぎ、ニンジンを沢山使った、ベーコン入りのクラムチャウダーだ!


「美味しいな! 新鮮な野菜に肉系ブイヨンスープが絶妙だ!」

とアリシアが褒めてくれる。


 コタローも肉系スープが気に入ったのか尻尾をプルプルプルプル振りながら夢中になって食べている。

 晃が感心しながら、桜に質問した。

「しかし、モンスターのテイムに成功した例はかなり少ないレアケースなんなんだよね、過程が知りたいな!」


 桜が「テイムって何でござるか?」

「モンスターを仲間にすることだけど、100万人以上が参加しているこのハンティングワールドオンラインに於いて、たったの100例くらいしか報告されていない希少例らしいよ」


「へえ! そうでござったか?」

 そして桜がコタローとの出会いを詳細に語ってくれた……。


「なるほど! コタローのお母さんや大型蜂の死体が残っていた事でイベントフラグが建ってるね! 本来ならゲーム内のモンスターは死んだ瞬間に光るポリゴンに変わるはずだから……」


「おー! さすがお師匠、言われてみるまで気が付かなかったでござるよ!」


「モンスターテイムを行いたいがために子持ちのモンスターの親を倒しに行った連中はことごとく失敗したらしい! それならと2つのパーティーで協力しながら、片方は親を倒す悪役、片方は子供を救う正義の味方みたいな演技をしても、懐くことは無かったって掲示板にも書かれていた。

 また運良く子供のモンスターを手に入れても、VR世界と僕達の時間の流れが違うために、24時間以上会わないで放置したら、逃亡してしまうから、主婦とかこまめにログイン出来る環境のプレイヤーでないと飼い慣らせないとか……。

 本物のペットだって飼い主が仕事や学校に行ってしまうと、どれだけ寂しい思いをしているか、と同じことらしい。

 

 多分だけど今回はコタローと同じ時間軸を持つルークやアリシアが飼い主として絡んでいるのが、成功の理由だろうね! プレイヤーがテイムしたモンスターをNPCに預けて飼育を手伝ってもらうとか……」

 と骨をくわえて遊びに来たコタローを撫で回してやる。


 コタローの目線に顔を合わせて「お前のお母さん最後までお前を守って戦ったんだってね!」と言ってやると、顔をペロペロなめられた、可愛い!

「ごちそうさまー!」

「美味しかったわ晃君!」

「ワン!」


「よし! 腹ごしらえも出来たし、まずは30階層のフロアボスを倒して、40階層のフロアボスも一気に攻略しよう!」

「おー!」

「ワン!」


 30回層はやはり大広間となっており、岩場になっている。30メートル先にフロアボスらしきモンスターが佇んでいる。

 ルークが「コタローはこの安全な岩場で待っててくれ!」岩に紐で繋いでいる。

「クゥーン……」

「大丈夫でござる、さっさとあんな奴片付けてコタローを迎えにくるでござるよ!」

と頼もしそうな桜に、

「ワン! ワン!」と答えるコタローであった。

 


  30階のフロアボスは蟲使いの魔族であった。

 2メートルの身長を持つ、顔はバッタに近い昆虫の目を持った人型である。

 人造人間か?……。


「お前達! 私の名はインセクトジェネラル! よくも我が同胞である、魔昆虫を倒してくれたな! 彼らの恨みを晴らしてやろう!」

 彼の左腕には金属甲殻虫の集合体の盾が握られ、盾が気持ち悪く蠢いている。

 右手も同じような槍を持っている。


晃が沙羅に「槍だからドロップしたら沙羅さんに進呈しよう!」

「ちょ! いやよ! あんな気持ちの悪い武器……」

「ははは!」


インセクトジェネラルが「余裕ぶってるのも今だけだ! 絶望の淵に叩き込んでやろう」


 まずはルークに向かって尋常じゃないジャンプを繰り出し槍を振るって来た、ルークが体術を駆使し横に飛びかわしたと思われた瞬間!

槍の先が変形して、ルークの肩に傷をつける!


 ルークが後方に避難するのを晃が手裏剣を投げつけ援護をする、奴の盾が動き出し晃の手裏剣を阻む!


「大丈夫かルーク?」

「大丈夫だ、ほんのかすり傷だ! しかし奴の武器も防具も虫の集合体だから動いてくる、気をつけろよ!」

アリシアが「魔法で一気に方をつける! 火の精霊よ……爆炎を以て敵を殲滅させろ! メガフレア!」

 爆裂魔法がインセクトジェネラルを襲う!

 大爆発に包まれている!

 盛大に燃え上がる。


「あっけなかったな!」とルークが言うと、

 燃えながら大量の攻殻甲虫がアリシアに向けて襲いかかって来た!

「兄者、妙なフラグを建てるな!」

 剣で切り刻んでいるが、切っても切っても、攻撃がやまない。


 インセクトジェネラルの目の前から攻殻甲虫が次から次へと湧き上がってくる!

「俺様は無限に蟲を召喚出来る! どんな攻撃も効かん! はははは!」


「なにぃ! 無限だとぅ! 試してやる」

 晃が獄炎斬を放つ! 炎が大きな刃となりインセクトジェネラルに襲いかかる!攻殻甲虫が湧き出ては身代わりとなって行く!


 それに追随する形で桜が弓で炎を纏った矢を放つ!

 沙羅が「桜ちゃん新しい技?」

「魔法忍者の技スキルで新しく覚えた技でござるよ!」

「私も新技やるわ! 雷の槍よ! ライトニングスピア」

 沙羅の槍の先から雷が放出される!


 ルークもファイヤーボールを次から次へと放つ。それらの攻撃を受けながら、さらに召喚された攻殻甲虫はガトリングガンのような高速で晃達に襲いかかって来た。

「ファイヤーウォール」アリシアの放った大きな炎の壁が沙羅や晃達を守ってくれた。

「なかなかやるな、お前達、蟲達だけではらちが明かぬようだな、俺様が蟲の本当のパワーを見せてやる!」


 インセクトジェネラルの体が突然大きな光に包まれていった!


 そして現れたのが3メートルはあろう黒光する筋肉に包まれたボディ! 背中には茶羽、額からは長い触覚、無機質な目を持つ巨大G人間であった!


「これは手強いぞ、やばいかも……」

 ゴクリと唾を飲み込む、晃であった。


 背後からは「ワン! ワン!」とコタローの声援が響いていた。


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