第22話モフモフ子犬の命名 家族誕生

 ダンジョン22階層で突如として現れたモフモフの茶色の子犬。


 アリシアが「安心しろ兄者と私で責任を持って世話をしてやるからな!」

「お前はもう俺たちの家族だ! 最高でハッピーなワンダフルライフな一生を送れるよう約束しよう!」

 子犬は尻尾を振りながら、ルーク達の周りを回りながら、

「ワン! ワン! ワン!」と嬉しそうである。


「もちろんこの犬の母親が見つかったらお返しするがな!」とルークがいうと、

「あちらから来たからダンジョン進めば会える可能性があるでござる」と桜が言うと、

「とりあえず母親を探してあげるか!」とルーク

「そうだな、もうすでに家族の一員だが、本当の母親と一緒にいるのが一番だからな」アリシアも同調した。


「よし! まずはこいつの母親探しだ!」

「おー!」

「しかしこの子犬、あの巨大Gの猛スピードから逃げて来たのだから、結構身体能力高いのでは?」とアリシア、


「おいで!」と桜が両手を差し出すと、

「ワン!」大ジャンプをして桜の頭の上にすっぽりとハマった、

「はははは! やはり跳躍力はあるな」とルーク

「モフモフ帽子じゃな! おいで!」アリシアのかけ声に、アリシアの頭に乗っかって来た!


 190センチ以上の身長のルークが

「こい!」今度はルークの肩に飛び乗りバランスをうまく取りながら尻尾をプルプルさせながら、

「ワン!」

「よし敵が来たら、俺の肩に飛び乗れ、守ってやる」ルークが言うと

「ワン! ワン!」プルプル尻尾が振られる。

「では進むぞ!」

「おー!」

「ワン!」


 アリシアが先頭を進み! その後ろにルーク、子犬、桜の順で続く、

「ワン!」子犬が吠えながらルークの肩に飛び乗る、すかさずジャイアントスパイダーが5体襲って来た。

 アリシアが2体を両断、ルークがファイヤーボール、桜が弓でトドメを刺していった。

 桜が感心しながら「野生の察知能力さすがでござるな!」と子犬の頭を撫でてやる。

「ワン! ワン!」と嬉しそうだ、

そしてしばらく大型昆虫系の襲撃をこなしながら進んでいくと、大型蜂の死骸が6体……、その真ん中に大型のウルフの死体が……。


 その死体に子犬が近づいて行き、「クゥーン、クゥーン」と寂しそうな鳴き声をあげる。

「そうか母親は大型蜂の群れからお前を立派に守ったのだな……」とルーク。

「お母さん頑張ったでござる」

「安心しろさっきも言ったように、お前は私達の家族だ! これからはルークがお父さん、私がお母さんだ!」とアリシアが言うと、子犬はうれしそうに尻尾をプルプルプルプル「ワン!」

「えー桜は? 私が抜けてるでござるよ!」

ルークとアリシアがあわてて「桜は姉さんだ!」とハモる。

 桜の周りを回って「ワン!」


「母親の遺体を埋葬してやろう、精霊樹の種と一緒に埋葬すればゾンビウルフにならずに一本の精霊樹になるはずだ、いつか機会を見て、その精霊樹をエルフの里に植林してあげよう」とルークが言うと、尻尾プルプル

「ワン!」


 そして埋葬の儀を済ませ、


「さーてお前に名前をつけるとするか、見たところオスのようだが、アース大陸ではオス犬にはどのような名前をつけるのだ?」とルークの問いに桜が答える


「洋風ならレオとかルーク、マロン、和風ならコテツとかコタロー、ソラとかでござる」

「なにぃ! 俺の名前は犬の名前なのか!」

「安心するでござる、外国人には多い名前でござるよ」

「それは安心した、コタローとか良さそうな響きだな」

アリシアも「コタロー可愛くてなかなか良いぞ!」

「よしお前の名前は今日からコタローでござる」


 よほどうれしかったのか尻尾プルプルプルプル振りながら3人の周りをグルグル回って「ワン! ワン! ワン!」


 桜が「コタローの母親の種族をゲームプラスのモンスター図鑑データで検索してみるとスピードウルフと出たでござる、攻撃力Bー、守備力C、スピードSS、ジャンプ力Sとなっているでござる、飼いならすと人間やゴブリンの騎乗により、ライダーとなれるらしいでござる」

 アリシアが喜びながら、「じゃあ、いつか私や桜を乗せて一緒に戦えるかもな!」

ルークが「俺も乗せてくれよ!」アリシアがすかさず

「ブー! 兄者は身長190センチ以上もあって重いから却下だ、コタローが可哀想だ……、しかしスピードSSなら母親は大型蜂から逃げられただろうに、コタローを最期まで守ったんだな……」

 コタローも「クーン……」

「これからは俺達3人が家族だ!ダンジョンを進めよう!」

「おー!」

「ワン!」


 しばらくダンジョンを進めて行く、戦いが始まるとコタローはルークの肩に乗り、歩いて疲れると桜やアリシアの頭に飛び乗り彼女達を喜ばせる、比率が半々なところがコタローの賢さを物語っている。

 それから次々と襲ってくるジャイアントスパイダー、巨大G、大型蜂などをコタローが感知すると吠えて知らせ、アリシアが斬り込み、ルークが自慢のデスマーリンからドロップしたロッドで威力倍増の魔法で蹂躙、トドメを桜の弓やストロングファイアで刺して行く手順で順調にダンジョン攻略を進め、29階層に達した時には夜の9時を超えていた。


「さすがに夕方からだとこの辺りまでがやっとだったか、仕方ないキャンプに戻るか! 桜ワープを頼む!」とルークが残念そうに、コタローを抱いたアリシアとともに桜の肩にタッチした。


「ではワープするでござるよ……あれ! ワープ出来ないでござる、今の時間、晃師匠午前中の授業の合間かも、メールしてみるでござる」


 すぐに晃から電話がコールされて来た、「すまんすまん、桜に教えてなかったかな、ダンジョン内はワープが出来ないんだ、だからフィールドでの冒険みたいに宿屋に戻ってログアウトではなく野営地でキャンプしたりするんだ、幸いだけど29回層まで進んだのだったら、もう少し頑張って30回層のフロアボスの部屋の前まで行けば、ボス攻略待ちのパーティーが休めるように休憩所があるから、そこでなら充分に一夜を過ごせるよ、明日の朝、最速で沙羅と葵を連れて行くから、そこで待っててくれるかな?」


 ルークが「晃大丈夫か? 3人だけでここまで来れるか?」

「誰に向かって喋っている、ランカー疾風のアキラ様が本気を出せば軽い軽い!」と大見得を切った晃、

「じゃあ、待ってるでござる」


 30回層の休憩所にたどり着いたルーク、アリシア、桜、コタローであった。

 岩で出来た10畳くらいのスペースの小屋でドアまでついている、


「ここなら充分一晩は過ごせそうだ……さすがに腹は減ったがな」とルーク、


「キャンプにワープ出来ると思って食材持って来てないでござる、カレーの残りも夕方コタローにあげたから……そうだ、おこげご飯で焼きおにぎりを作るでござるよ、30個は作れるでござる、これで夕食と明日の朝食を凌ぐしかないでござるよ」


 桜が焼きおにぎりを作り、ルークが風属性魔法で温風を出して温める、


「たまにはこういうあっさりとした食事も良いものだ!」アリシアが美味しそうにパクつく。

 しかしコタローがクンクンと匂いを嗅いだだけで食べようとしない。

「肉しか口に合わないでござるか、弱ったでござるよ」

するとアリシアが、

「兄者あれだな、私達の幼少の頃を思い出すなぁ、肉しか食べられない私達兄妹に親父がエルフの野菜料理を食べさせる為に苦労して、肉汁をかけたりしてなんとか食べさせたりしてたな」


「ははは! そんな事もあったな懐かしいぜ」


 それを聞いた桜が「晃師匠の作ったカルビクッパのスープが残っているでござる、アイテムBOXの中では新鮮なままでござる」


 カルビスープをかけてやると、コタローは焼きおにぎりにパクつき始めた。

 尻尾がプルプルプルプル振られて「ワン! ワン! ワン!」おかわり要求だ!


 みんなで美味しく焼きおにぎりを食べながら

「ルークさん、アリシアさんの親父って将軍様でござるよね? 親父さん子煩悩なのでござるな!」

「母親がエルフの里に居なかったからな、仕事の時はおばあちゃん家に預けられたが、基本的に親父が育ててくれた、戦闘訓練は厳しかったがな、はははは」とルーク、

「懐かしいな、よく泣きながら親父に斬りかかったものだ、ははは!」アリシアも懐かしそうにつぶやく、

「それで兄妹そろって強者であるわけでござるな!」


「さて寝るとするか!」とルークが言うと

桜はガチャの外れの大量のくのいち衣装を取り出して床に敷き詰めていく。


「これでベッドと毛布がわりになるでござるよ」

 ルークが「俺はコタロー布団だけで充分だがな!」

「兄者ずるいぞコタロー布団は私のものだ」

「桜も負けないでござるよ」


「ワン!」

 アリシアを真ん中に3人で川の字に寝転がりながらのコタロー争奪戦は夜更け過ぎまで続いて行きました。コタローも尻尾をプルプル振りながら楽しんでいる様子でありました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る