第21話桜とエルフ兄妹と1匹? 新パーティー
8月の夏休みの中旬には龍ヶ崎桜の下半身不随を解消するパワーアシスト装置の民間供与が決まり、この楽しい冒険はあと2ヶ月と知った晃は、改めてVRからの贈り物と言うべきこの状況を精一杯楽しむ決意を抱いたのであった。
龍ヶ崎姉妹カレーを食べて満腹した晃達はテント前でルーク先生の魔法講座を受けていた、
「まずは火を手のひらに出してみよう、君達の頭の中で火が生まれ燃焼していく様を思い浮かべてみよう、そうすれば、火の精霊が集まって来て火を灯す」
手のひらを上に向け、言われたとおりにするとポッと火が灯った……、
「おー!」晃だけが興奮したが、既に体験済みの沙羅達は当たり前の顔をしている。
「さらに大きな円球の炎を思い浮かべると、ファイヤーボールが出来るはずだ、それをドバッと標的にぶつけるイメージでファイヤーボールが投げられるはずだ」
晃達は「ぐぬぬぬぬ!」とさらに気合いをいれて大きな円球の炎を思い浮かべる……。
炎が大きくはなったがボールにはならない!
沙羅達も同様である。
「とりゃ」と炎を標的の岩に向かって投げつけた! 岩を炎が温めた!
アナウンスが流れた「火属性魔法ファイアを習得しました、初級魔法のため、詠唱及び魔方陣構築の必要はございません、消費MPは2」
ルーク先生が「そうか、まだ中級魔法のファイヤーボールはお前達にはまだまだ早かったのだな! まあ焦らずおいおい教えていくか」
カメハメハはまだのようである。〔ハワイの初代国王名、国民的アニメの必殺技名とは関係ございません〕
晃が「疲れたー! 新作アニメの分類やろうよ」
「それはいいな、待ってたぞ!」アリシアがうれしそうに駆けつけて来た。
6月中旬にもなると、深夜アニメの1期が終わり、新作アニメが始まり初めており、今期も20作品以上が放映予定で、片っ端から録画していた。
晃とルークはアニメの序盤をチェックしていた、
「これは腐向けだな」晃が言うと
「そうだな題名では判別出来なかったな! なんとかのプリンス様とかだったら見る前に判別がつくのだが……」とルーク。
沙羅が「腐女子向けはこちらに転送してねー!」
アリシアが「楽しみじゃ! イケメン、メガ盛りじゃのう」
VR内での時間は2倍の速さで進行する、晃や沙羅達は学校に通ってる事もあり、ルーク、アリシア兄妹と合流するのは2日に1回となるため、退屈しないように晃のアニメデータを兄妹に大量に渡していた。
すっかりルークもアリシアもアニメオタクとなっていた。
アリシアが腐りかけているのが気になるところだ……。まぁいっか! 趣味は人それぞれだもんな。
ルークが「腐女子向けは女性陣にデータ送るとして、2話目を見るかどうか微妙なものもあるよな! 基本的に俺はバトル系のシリアス物でも学園ラブコメでも、日常ゆるふわ系でも大丈夫だがな」
晃が「いやいや1話切りはクリエイターや声優達に失礼でしょう。ここは3話目ぐらいまでは暖かい目で……」
「ちょ! キャハハ! ルークさん晃君と完全にオタク会話してる!」
「おほほほほ!」
「この新作アニメ、男女で楽しめそうでござるよ、みんなで見るでござる!」
桜の掛け声に「はーい!」と皆で楽しくアニメ鑑賞したのでありました。
「おー! このロボットすごいな! このビーム兵器は光属性魔法なのか? アース大陸の文明は凄く進んでいるのだな!」ルークがビール片手に声がでかくなってる。
「このイケメンパイロット気に入ったぞ、私もアース大陸に連れて行ってくれ!」アリシアもビールで酔っ払ってますな。
「ちょ! ルークさんもアリシアさんも酔っ払いすぎ! キャハハ!」
「おほほほほ!」
「私もハイになって来たような気がするでござるよー」
なぜかエルフ達につられて高校生女子もコーラ片手にハイになっていた。
アニメ新作鑑賞会は夜更けまで続いたのでありました。
「お休みなさい!」
「お休みー」
「お休みですわ!」
テントに戻り、カーテンで隔てられた男性居住場所に入って行き、ログアウトした晃であった。
翌日ルークとアリシアはアニメ鑑賞や模擬戦闘しながら、龍ヶ崎桜の合流を待っていた。
VR内での時間効率が現実の2倍であるため、学校に通っている晃や沙羅達は明日の朝の合流になるが、VR学園に通っている桜は時間軸が同じなので夕方には現れる。前々日は一緒に戦闘訓練をおこなった。
夕方の4時すぎに「ルークさん、アリシアさん待たせたでござるよ!」桜が登場、
「おー! 待ちかねたぞ、学校は楽しかったか?」とルーク、
「ぼちぼち楽しかったでござる、アニメ好きの友達が出来て新作アニメのあれこれ評価したでござるよ!」
アリシアが羨ましそうに「いいなぁ! 私も学校に通いたいなぁ! セーラー服とか来てみたい」
「アリシアさんがセーラー服を着るとコスプレになってカメラ小僧に囲まれるでござるよ、はは」
ルークが「いつもは明日の朝まで晃達の合流を待つのだが、俺達3人でダンジョン攻略進めないか? お前達アース大陸の連中は進んだところまでワープできるのだろう? 俺達だけである程度進めておけば晃達も楽になるだろう、なんなら30階層のフロアボスを倒してもいいぜ」
「それはいいでござるな、晃師匠も喜ぶでござるよ」
かくしてルーク、アリシア、桜の3人パーティーが誕生したのである。
22階層に降りて行くと、5メートル四方のダンジョンとなっていた。しばらく進むとカサカサカサカサ、カサカサカサカサと音が響く、盗賊スキルを極めた晃師匠程探知スキルを持たない桜には数まではわからない。
アリシアが「何か来そうだな!」
と! その時正面からなぜか茶色の子犬が1匹逃げてきて、そのうしろには1メートルはある巨大な昆虫、黒光りした巨大Gを10匹は引き連れていた、Gが襲ってきた。
「きゃあああ」アリシアが悲鳴を上げる、
ルークがすかさず「爆裂魔法撃つなよアリシア!」
「わかっておる兄者!」とファイヤーボールを撃って倒す。
ルークも桜も弓で応戦するが2匹が桜に襲いかかる「ファイヤー!」
桜の手からファイアが巨大Gを炙るが完全に倒しきれず、1匹が桜に噛みつきかけた時、
「ぎゃあああ!」桜の悲鳴と共に火力がアップ巨大Gを見事に焼き上げた。
「ストロングファイアを習得しました」とアナウンスが流れた。
どうやら追い詰められた精神力が生活魔法から攻撃魔法に進化させた様である。
「おー! 今の攻撃は見事だったぞ桜!」他のG退治を済ませた、アリシア、ルークが寄ってきた。
桜の足元では子犬が尻尾をプルプル振りながらすりすりしてくる。
桜が頭を撫でながら
「モフモフ君どこから来たでござるか? お母さんはどこにいるでござるか?」
頭を傾けながら尻尾をプルプルプルプル、
「かわいいー!」
アリシアが撫で回すとさらにプルプルプルプル!
「しかし弱ったな! こいつを連れて行くわけには行かないよなぁ」ルークが頭を抱える、
「確かに捨て犬を拾うという事は、そいつの生涯をちゃんと面倒見れるかどうかの決断が必要とお父さんが言ってたでござる、仕方ない昨日のカレーを与えてその間にそっと立ち去るでござる」と桜が言うと、
「かわいいがやむを得ないな……」とアリシア、
子犬は3人の会話を首を傾けながら尻尾をプルプルプルプル……。
桜がアイテムボックスからカレーを取り出し、子犬に与える。
お腹が減っていたのか、夢中になってカレーを食べ始めた、尻尾がプルプルプルプル。
断腸の思いでそっとその場を離れた3人は30メートル離れたところで猛ダッシュ、後ろは振り向かない、途中に現れた魔物や昆虫はアリシアが剣で両断して行く、1キロは離れただろうか……。
そっと後ろを振り返る……。
息を切らせながら尻尾がプルプルプルプルプルプルプルプル、「ワン!」
3人は涙を流しながら「ごめんよー!」
「こいつは俺とアリシアがちゃんと面倒を見る」
とルーク!
アリシアも「エルフの里全員でお世話をしようではないか!」
3人で代わる代わる耳の後ろを撫でてやるとプルプルプルプル……。
桜とエルフ兄妹と1匹のパーティーが結成されたのでありました。
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