第18話偉大なる魔導師との死闘の果てに……。


 20階層のエリアボスであるデスマーリン、アンデッドの大魔法使いにして王と自分で紹介するだけあって、かなりの使い手であるのは確かである。

 それに斬撃はおろか、打撃対策もされているようだな、多分だが彼の着る高級そうな漆黒のローブに打撃威力軽減効果があるのだろう。


 アリシアとルークの魔法攻撃を軸に攻め入るか、

「アリシア、ルーク魔法攻撃してみてくれ!」

「わかったわ!」

「任せろ、精霊樹を友とし魔法能力を生まれし時から授かったエルフの魔法力を見せつけてやる!」


「沙羅さん達はとりあえず葵さんの盾の後ろで防御に徹してくれ」

 葵さんの大楯は星7のレジェンダリーシールドで強力な物理攻撃軽減効果を誇るが、ダンジョン突入前にみたところ、見慣れぬ魔方陣の模様が書き込まれていた。


「その魔方陣はなんなの?」と晃の質問に、

「魔法攻撃を軽減する術式が入ってますの、名鍛冶屋の岩田さんに改良してもらったのですわ」

「え! 岩田さんが星7の防具を改良してくれたってすごい! 余程希少なレア素材でも提供しなきゃ無理なはずだが……」

「それは内緒ですわホホホ」

 さてはリアルマネーで取引したな、さすがお嬢様だ、岩田さん小遣い稼げてホクホクだろうな。


「ルーク、アリシア多分奴は闇属性魔法も使って来るだろう、気をつけろよ!」


 アリシアが「そのとうりじゃな、精霊樹の加護のもとに育った私達エルフは火、水、風、土の4属性魔法の使い手ではあるが、闇属性魔法には知識がないのは確かだ」


 得意の大ジャンプでデスマーリンの背後に位置した晃、散開して正面左右に陣取ったルーク、アリシア、一斉に晃は風魔法の中級魔法カマイタチ、アリシアは水魔法の派生上級魔法ライトニング、ルークは土魔法の上級魔法ロックガトリング、

をそれぞれ放った!


 が!……しかし晃のカマイタチは奴を取り巻く魔法のオーラにかき消され届く前に無効化された!

「マジ?」

アリシアのライトニングによる雷攻撃はデスマーリンの土魔法ウォールに阻まれ、ルークの放った岩の砲弾も阻まれ、しかも風魔法で弾き返された砲弾が沙羅達に襲いかかる! 葵がガードしたようだ。


 さすが魔法の真理を探究しているだけあって、晃の中級魔法ではダメージが通らないようであった。しかもエルフでもトップクラスの魔法の使い手ルーク、アリシアの攻撃にも対応してきた。


 デスマーリンがうれしそうに「ここに来てかつてわしを倒した連中はみんな、魔封じ対策と打撃攻撃ばかりであったが、私に対して魔法で挑んで来た者ははじめてじゃ! うれしいぞ、特にエルフの2人、エルフは精霊の加護のもとに育ち、精霊を友として、自然と魔法を覚えると聞いたが本当のようじゃな見事なものだ!」


ルークが「まだまだこんなもんじゃないぜ、エルフの魔法力を叩き込んでやるぜ! 土の精霊よ……メテオ!」


アリシアも「兄者だけにかっこつけさせるか! 火の精霊よ爆炎を以って全てを討ち滅ぼせ、メガフレア!」


 最上級魔法のメテオをルークが解き放ち、隕石群が激しい音響を残しデスマーリンに襲いかかる。

 アリシアから放たれた爆裂魔法も火魔法最強で、デスマーリンの居た位置に大爆発を起こしており、さすがに死体も残ってないかな……。


と! その時「黒龍爆炎咬!」

 青黒い炎の爆発が起こりアリシアを吹っ飛ばし、すかさず「闇に集いし魔の眷属よ!あの者を闇の力にて拘束せよダークパインド!」


「なに! 体が……」アリシアが動けなくなった。


「ふはははは! 実に見事だエルフ達、その若さで最上級魔法まで使えるとはな、しかしお前達エルフは魔法を使えることで慢心したのだ、何千年と魔法を研究し、次世代に伝えてロッドやメイスやワンドといった、魔法をさらに強化する道具を開発する努力をして、魔法のみに特化した人間の魔法使いをなめるなよ……。お前は殺してバンパイヤとして私の眷属に加えてやるとするか、ふはははは!」


 アリシアのピンチに晃が怒涛のスピードでデスマーリンに近接し、癇癪玉を投げつけ、さらに

「忍術影縫い!」

「何! この技はなんだ、まるでダークパインドの変化版ではないか?」と、デスマーリンが戸惑っている隙をついて、アリシアを救出に成功!


 大ジャンプを繰り返し、沙羅達に合流した。

「アキラかっこよかったぞ」アリシアが晃にお姫様抱っこされながら答える。


葵さんが「晃くん大活躍ですわね、ほほほ」

「お姫様抱っこ、はじめてみたでござるよ」と桜

が言うと、

「ちょ! いつまでアリシアさん抱っこしてるつもり?」と沙羅に言われ、名残惜しそうにアリシアを下ろした、晃であった。


 ルークも合流して来た、少しHPが減っていたので桜がヒーリング魔法をかけてあげている。

「なるほど確かに奴の持つロッドがかなり魔法力を高めてるようだな……」とルーク。

「なになにゲームプラスの情報によると黒龍の魔石を組み込まれたロッドで魔法力を2倍に高めるだって」晃が情報を伝えると、

「それはすごい! あいつを倒すともらえるのだな」とルークが言うとすかさずアリシアが

「兄者ずるいぞ、私がもらい受ける」


「ふはははは! 話し合いは終わったか? 本当の最上級魔法を見せてやる、風の精霊よ、竜巻と共に奴らを滅せよ、メガトルネード!」


「やべ!」

 魔法力が高められたロッドから放たれた風の最上級魔法から生まれた竜巻は晃達を飲み込み天井近くまで持ち上げ地面に叩きつけて行った。


衝撃ですぐに起きられない、

「ふはははは! ダークパインド!」

晃、ルーク、アリシア3人とも闇の緊縛されてしまった、絶体絶命……。


 と! その時「私達を忘れてもらっては困るでござる!」

 師匠譲りの迅速な動きで桜がデスマーリンに接近!

 ジャンプしながらヒーリング魔法を浴びせた!

「ぐぐぐ!」少しではあるが効いている。

 そうかヒーリング治癒魔法は、神聖光魔法の一種でアンデッドに効くのだったな……思い出した。


 沙羅が「私もいくわよ! そーれ」

 デスマーリンの頭上にハイポーション数個を放り投げ、パリンパリンと槍で突いて割っていく、液体が奴に降りかかり、ジュージューと塩酸のような煙が上がった、ポーションも聖水の一種だもんな。


「私達だって、ゲームの攻略法研究してますわ、ゲームプラス有料会員をなめないで欲しいですわ、ほほほほ!」とエクスカリバーの必殺スキルの光魔法がデスマーリンにダメージを与え、晃達が自由に動けるようになった。


デスマーリンが「ふふふ、まさか全くマークしてなかったお嬢様に足元をすくわれるとはな……、褒めてやろう、では最上級魔法の真髄でお前らを屠ってやろうメガフレアと黒龍爆炎の合わせ技だ!」と詠唱を開始しはじめた。


「ここはリヴァイアサンですわね、避難よろしく!」アリシアが叫ぶと、

桜は忍術で素早く壁をよじ登り天井近くに避難、早い……。

 ルークは葵をお姫様抱っこしてジャンプしながら岩場の高台に避難。

「あらあらありがとうですわ、イケメンエルフのお姫様抱っこ素敵ですわよ、ほほほ」と葵さん満足気である。


 それを見た晃が「じゃあ僕も沙羅さんを……」

「いやよ!」と槍を使って棒高跳びの要領でルーク達のところまで……いつの間にあんな技を!


「出でよ、水精霊リヴァイアサン!」アリシアの声が響き渡る


 やべ! 晃も高台にジャンプして避難、同時に詠唱を終えたデスマーリンのロッドからメガフレアと黒龍爆炎がアリシアとトグロを巻いた水精霊リヴァイアサンさんに襲いかかる。


 リヴァイアサンから猛烈な水流が溢れ出し爆炎からアリシアを守り、なおかつ爆炎を押し返しながらデスマーリン含めて津波で覆っていった。


 アリシアは球体に守られているようだが、あたり一面は水とその表面には炎で覆われており、デスマーリンの所在が分からない。


 数分してやっと水が引き始めアリシアとデスマーリンが現れた。


 デスマーリンも少しはHPが減ってはいたが、

「なにぃ! 精霊召喚魔法だと、そんなものが拝めるとはこれだから魔法は楽しい、ふはははは!」


「なんか楽しんでるぞ、よし期待に応えて全員精霊魔法攻撃だ!」

「おー!」

「出でよファイヤーフェニックス!」沙羅が唱えると、

 次々に「ゴーレムさん召喚でござる」

「水精霊シヴァ出てくるのですわ」

「出でよサーヴァントのイフリート!」ルークさん……。

晃も最後に「出でよ風精霊グリフォン!」


と5体の精霊が現れたのを見たデスマーリンは

「なにぃ! お前達全員精霊召喚魔法が使えるのか……素晴らしい! 俺の最大殲滅魔法と勝負だ! 闇の眷属よ彼らを滅ぼしたまえ、ダークネスダウンフォール!」


 黒い球体が彼を中心に広がりはじめた、それを見た晃は

「黒い球体に最大出力で一斉に攻撃だ!」

 一斉にフェニクスは業火の炎を吐き出し、ゴーレムは岩場にあった3メートルはあろう岩を投げつけ、シヴァは無数に浮かべた氷のつららを次々とぶつけていく。

グリフォンは顔の前に魔方陣をつくりサイクロン魔法を、イフリートは燃え盛る巨大な岩を作り出し一斉攻撃を行った!


黒い球体はそれは強い魔法だったのだろうが、全方位からの5体の精霊魔法の一斉攻撃には耐えることが出来ず萎んでいき、デスマーリンは精霊魔法を直接浴びていた。


彼の脳裏には幼い頃の記憶が……、

彼が1才と6ヶ月の頃だった、家政婦さんが

台所で薪木に生活魔法で火をつけるのを見て、

近づいていくと「おぼっちゃま危ないですよ!

台所に来てはダメと旦那様からいつも言われてるでしょ!」

彼が薪木に手をかざし火魔法が炸裂、薪木が一瞬で消し炭になるのを見た家政婦があわてて「旦那様! 旦那様! 奇跡が……」


それから最強の魔導師になり、魔法の探究に明け暮れていた。


強力な精霊魔法を浴びながら彼は笑っていた、

「ふはははは! 貴様らのお陰で魔法の深淵の一部だが垣間見れたぞ! うれしいぞ! お前達には褒美で魔法の術式を操れるようにしてやろう。それではさらばじゃ!」と光るポリゴンに変わって行った。


 ルーク、アリシア、沙羅達とグータッチをしながら、勝利を味わっていた晃達に運営からのメールが、「隠しクエスト大魔導師リッチーを精霊召喚魔法で倒そうがクリアされました。今後は魔法に術式の概念が加わり、固有のユニーク魔法の作成が可能となります。また念ずることで魔法が発現したりと特殊さが増します。魔法使い職業の方はもともとの魔法力の高さや武器による魔法増大効果がそのままなので有利さが更に増します」


「晃くんわかる?」

「さっぱりわかんないや……まあいっか、どうせ魔法使いじゃないしな」

「そうよね! それよりあれよね……」


「このロッドは俺のもんだ! トドメは俺がさしたの、アリシア」

「兄者はリヴァイアサンのお陰でトドメを撃てたの! 私にこそ権利ありなの!」

デスマーリンからドロップしたロッドの取り合いの兄妹争いはいつまで続くのだろうか……。

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