第17話 アンデッドの魔法王

 ダンジョンの13回層以降19回層までは、牛魔族や動物ゾンビ系、巨大昆虫系が多く現れるエリアであり、また罠などの仕掛けも多く、初心者、中級者パーティではなかなか厳しいエリアといえた。


 しかし、晃の盗賊スキルによる罠感知、危険感知、ランカー並みの強力な助っ人であるアリシアの剣術と魔法、ルーク弓と魔法の力も手伝って、記録的な速さで20回層のフロアボスのところまで、たどり着いた風のドラプリ御一行であった。


 20回層は例のごとく大広間となっており、フロアボスは骸骨型のアンデットであるリッチーが鎮座しながら待ち受けていた。


 高級そうなローブを着たそいつは、かなりの威厳を感じさせる雰囲気を醸し出していた。


 晃達が入って来るのを見た彼は、

「次なる獲物はお前達か? 私の名はデスマーリンである。カスティーリャ魔法公国に貴族の子息として生まれ、その類い稀な魔法の才能を発揮して、魔法学校を首席で卒業した私は、公国の軍の中でも最高の権威を持つ国王直轄魔法軍に配属され、そして魔法軍のエリートとして数多くの戦いで武勲を上げ、将軍として取り上げられ……」


 沙羅が「ちょ! この骸骨さん、自己紹介長すぎなんですけど……」

 葵がすかさず「沙羅ちゃん、人のプレゼンには最後までちゃんと聞き届けるのがビジネスの基本ですわよ」

 沙羅が「それはそうよね! 私ってせっかちなのかな」

 桜がすかさず「でも私達姉妹は告られる度に相手の話に最後まで耳を傾けたためにストーカーを作ってしまった事があったでござるな」

「たしかにそういう場合は早めにごめんなさいした方があきらめがつくかもね、告られた経験も告った経験もないけどねー」と晃が言うと、

 ルークが自慢気に「エルフの中でもモッテモッテの俺はしょっちゅうたくさんの女から愛の告白を受けてるがな、はっはっは!」

「チクショウ! イケメン野郎め!」などとやりとりしてると、


 デスマーリンが「こぉらー! 年寄りの話はちゃんと聞かんかい!」

「すみません!」

「すまんでござる」

「ごめんなさいですわ」敵に怒られちゃいましたね。


「……で将軍職を引退した後も宮廷魔術師として最高顧問に登りつめ、魔法の真理を追求していたのだが、まだ志し半ばで寿命が尽きそうになり、わざとアンデッドに喰われ、自分自身を寿命の尽きぬアンデッド化することで、魔法の真理をさらに追求をし続けることを選んだのじゃ! しかし、アンデッド化した私は公国から討伐の対象とされてしまい、逃げるようにこの地まで逃れて来て、アンデッドの王となったのだ。今ここで更なる魔法の真理を探究しておるのじゃ、そんな私を倒すとは片腹いたいわ、思い知るのじゃ、中位アンデッド作製!」


 やっと長い長い自己紹介が終わったようである。

 ゲーム上の設定ではあるが、彼の記憶には長い年月が刻み込まれているのだるろう。


 彼の闇魔法には使い魔作製能力があるようで彼の周囲にスケルトン10体、ゾンビ10体が現れた。

 アリシアが細身の愛用西洋剣と晃は妖刀を持ち早速切り込むが、アリシアの突きはスケルトンにはほぼノーダメージ、晃がゾンビを切り裂いても、そのまま向かって来る……。


 沙羅はホラー系が苦手なようですっかり葵さんの大楯の後ろで縮こまってるようです。


 そこで晃は「スケルトンには刺突、斬撃は無効です、アリシアさん剣は鞘に収めて鞘ごと打撃して下さい、沙羅も槍で横殴りに打撃よろしく。

葵さんも大楯で突進すると効果ありますよ! ルーク、桜は弓でゾンビのヘッドショットよろしく」

「わかったわ」

「わかったでござる」

「承知いたましたわ」

 全員、散開しながら晃の指示に従い、アリシアと葵は打撃でスケルトンを粉砕していく。


 沙羅もおっかなびっくり葵の後ろから槍を横薙ぎしながら粉砕中。


 ルーク、桜は弓でゾンビの頭を射抜いていた。

 晃も負けじと魔弓を装備、ヘッドショットを次々と決めて行く。


 デスマーリンが「ほほう! 小僧なかなか見事な采配じゃな、アンデッドの弱点を熟知しているようだ! ならばこれはどうじゃ? 上位アンデッド作製!」


 スケルトンやゾンビの死体が光り輝き始め3つの場所に集まり、3体の立派な武装と鎧のゾンビ戦士が現れた。


「ダークナイトに勝てるかな! 貧弱な小僧!」


「こいつら手強いぞ、ルーク、アリシア、僕で一人ずつ相手しよう! 沙羅達は苦戦した時の援護頼む!」

「はい!」

「わかったでござる」


 三体共にゾンビの騎士で盾と剣を持ち剣技を使いながら戦って来た、確かに強い。


 アリシアは剣、ルークは足技格闘技、晃は妖刀で相対し打ち合いを繰り広げる。

疲れを知らないゾンビ相手だけに時間はかけられない、ウインドウォールをまとい、最速スピードからの妖刀イザナギ改の必殺スキルで倒した。


「やるな晃! 俺も負けてられんな!」とルークがカポネイラの後ろ回し蹴りを決め相手がよろけたところに土魔法の岩の弾丸を発射して仕留めた!


 アリシアもダンスを踊る様な剣技で圧倒して行き、風魔法のウインドカッターで切り裂いた。


デスマーリンが「やるではないか、魔法も少しかじっているようだな、お主達は我に挑戦する権利を認めようではないか、圧倒的な我が魔力の前にひれ伏すが良い!」


 デスマーリンを前に晃はもし一人で戦っていたら勝てなかっただろうなと思わずにはいられなかった。


 斬撃や矢や毒が効かぬスケルトンタイプでなおかつ回避しづらい広範囲魔法の使い手だとしたら、相性が悪すぎる。


 デスマーリンが「ダークミスト!」と唱えた。


 闇の霧が晃達を覆い始めた……。

 そこで閃光玉を晃が投擲、光魔法の込められているその玉は闇魔法を相殺することに成功する。


「よし行くぞ!」晃の掛け声とともにアリシアとルークがデスマーリンに突っ込んで行く。

 アリシアは鞘に収めた刀で打撃、ルークは上段回し蹴りによる打撃、晃は真っ直ぐドロップキック。

「ふはははは! お前らなめるなよ! 打撃に弱いスケルトン風情とわしを一緒にしないでもらいたい!」と打撃を苦にすることなく、ロッドを一閃! 晃達は吹き飛ばされた……。


 こいつ強いぞ……攻略法研究してから来るべきだったか、でもそれじゃあゲームとして楽しさ半減だしな!

「アリシア、ルーク、魔法の打ち合いは好みかな?」

「私達を誰だと思ってる、魔法はエルフが一番優れているのさ!」

と2人ともニヤリとした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る